公共図書館での本の無料貸出が、近隣の書店での同じ本の売り上げに、どの程度影響するのかを調査した論文が、ネットで話題となっている。

話題となった論文は、香港科技大学の川口康平氏と東京大学の金澤匡剛氏の共著論文「Displacement effects of public libraries」だ。

研究手法としては、日本の公共図書館のデータと、書店の販売データを統合した新しいデータセットを作成し、公共図書館の本の無料貸出が、近隣の書店に与える影響を定量化した。

  • 図書館に置いた本、書店での売り上げは減る? 増える?

    結果はベストセラー本で1カ月あたり0.52冊、売り上げ減の影響があるそうだ

研究に用いられた本は、2017年2月時点で入手可能な全書籍の中からランダムに選出した300タイトルのほか、日本最大の書店チェーン・紀伊國屋書店のベストセラーランキングを基に、2014年、2015年、2016年のベストセラー各50タイトルからなる150タイトルだそう。

結果としては、公共図書館で無料貸出を行った本は、近隣の書店での同じ本の売り上げを減少させることがわかった。具体的には、人気のある本ほど減少するようで、研究で用いた本のうち、人気上位の1/6の本は、1カ月あたり0.24冊、ベストセラーのタイトルでは1カ月あたり0.52冊ほど近隣の書店での売り上げを減少させるのだという。ただ、図書館で身に付いた読書習慣が、後の購買にもつながっていくとの予測もある。

ネット上では「そんなに減らないなら図書館自体に問題はないな」「思ったより減ってない。ベストセラー本だから?」「思ったより影響が少ないですが、減ることは減るんですね」「減るったってわずかなもんだが、図書館はベストセラー本なんて買わず、貴重な資料収集に努めて欲しい」と、案外、影響していないことに驚きと、ベストセラー本ばかり買い集めるような図書館への苦言が入り混じった声寄せられた。