Bluetoothの用途といえば、キーボードやマウスなどの入力デバイス/周辺機器の接続、そして「オーディオ」が思い浮かびます。スマートフォンの場合、オーディオ出力用のイヤホンジャックを廃止した機種も多く、いまやBluetoothがイヤホンなどオーディオ機器を利用するための選択肢です。
そのBluetoothに新しいオーディオ規格「Bluetooth LE Audio」が登場します。従来のオーディオ規格とは互換性がないため、スマートフォンなどの送信側(ソースデバイス)とイヤホン/スピーカーなどのオーディオ機器(シンクデバイス)の両方がLE Audio規格に対応していなければなりません。
さらに、LE Audioではオーディオを圧縮/展開するためのソフトウェア(コーデック)も一新されます。「LC3」という新規開発されたコーデックは、従来のBluetoothオーディオ(Bluetooth Classic Audio)で標準装備されていた「SBC」と比較して圧縮率が高く、より少ないデータレートで同等の音質を実現できます。
LE Audioには他にも低遅延、左右チャンネル独立伝送といった特長があります。これらはBluetooth 5.2で実現された「アイソクロナス転送」(一定時間における最低データ転送量を保証する通信形式)によるもので、接続が途絶しないことを優先してデータ転送を行います。
1台のソースデバイスが複数のシンクデバイスで同時再生する「ブロードキャスト再生」も、Classic Audioにはなかった機能です。自分の音源を周囲の人と共有できる「オーディオシェアリング」も、3Dオーディオのように複数の音声信号を扱える「マルチストリーム」も、LE Audioでは標準装備の機能となりました。
なお、LE AudioにおいてLC3は必須コーデックとされているため、LE Audio対応をうたうすべてのソース/シンクデバイスに装備されなければなりません。つまり、スマートフォンやパソコンのシステムソフトウェアもLE AudioおよびLC3をサポートしなければならず、OSのアップデートも必要ということになります。