2022年8月10日にサムスンは折りたたみスマートフォン新機種「Galaxy Z Fold4」と「Galaxy Z Flip4」を発表しました。イベントの中では同社のサステナビリティに対する取り組みも時間をかけて紹介されました。リサイクル素材をパッケージや本体の一部に使うなど、大手企業も環境を考えたモノづくりに着手しています。日本では先日、PCメーカーのエイサーが再生プラスチックを使用したサステナブルな「Veroシリーズ」を発表しています。
この取り組みは業界全体に広がっており、たとえばAppleが率先して始めた電源アダプタなどを取り除いたパッケージの小型化は、輸送時の環境対策にもなっています。サムスンによるとパッケージの小型化で二酸化炭素量を20%も削減できたとのことです。
サステナビリティの動きは世界の中でも、特にヨーロッパで活発です。オランダのスマートフォンメーカー、Fairphoneの最新モデル「Fairphone 4」は、背面カバー(20ユーロ、約2,700円)やバッテリー(30ユーロ、約4,100円)を交換できるのはもちろん、破損してしまったディスプレイやカメラモジュール(どちらも80ユーロ、約1万1,000円)も本体のネジを外して分解して自分で修理できます。Fairphone 4の価格は579ユーロ(約7万9,000円)とやや高めですが、故障個所を自分で直しながら長い期間使い続けることもできるというわけです。
Fairphoneは最近になってワイヤレスイヤホンも発売しましたが、片方をなくしてもそれだけを購入できます。ワイヤレスイヤホンの紛失を経験した方は少なくないでしょうが、片方を無くしてしまうと結局はすべてを買い直しする製品がほとんど。片方だけすぐに買えるので無駄が出費がないことをFairphjoneはアピールしています。
ヨーロッパの家電量販店ではリサイクル素材や天然素材を使ったスマートフォンのケースもよく扱われています。お客さんも結構それらの製品を手に取ってみるなど環境に対する意識も高いようです。参入メーカーも年々増えており、環境に優しいケースを選ぶことも、より容易になりつつあります。
バルセロナの家電店で見かけたフランスのMuvitの製品には2種類のラインナップがありました。「BAMBOOTEK」シリーズは竹の繊維やトウモロコシ粉を使っており、プラスチックは一切使っていません。一方「RECYCLETEK」シリーズはペットボトルなどの廃棄プラスチックを100%使用したリサイクル製品です。しかも古くなったケースはメーカーが回収して、またリサイクルへと回されます。
再生プラスチックのRECYCLETEKケースを実際に見てみましたが、透明感もあり一般的なケースとの差は見られません。価格は20ユーロ(約2,700円)程度とこちらも高くは感じません。そしてこの手の製品はiPhone向けのものばかりなのですが、Muvitはサムスンや他のメーカー用の製品も提供しており種類はかなり豊富でした。
また家電量販店以外の状況を見てみようと、ドイツでは同国最大のキャリア、ドイツテレコムのフランクフルトにある旗艦店を訪れてみました。スマートフォンアクセサリの品ぞろえも豊富ですが、「100% Plasticafrei」と表記のあるケースが目立つ場所に展示されていました。これもプラスチックを使っていない天然素材のケースです。
写真はスウェーデンのagoodの製品です。Muvitの製品と同じくトウモロコシ粉などを主成分としたもの。光沢を抑えたマットな仕上がりは環境にやさしい製品ならではで、手に持ってみると天然素材のため肌触りはいい感じです。文字などのプリントもしっかりされており、一般的なプラスチック素材ケースとの差は感じられません。
ケースの背面には「non GMO」の表記がありますが、これは遺伝子組み換え農産物ではないことを意味します。agoodのケースは素材に対してもこだわりを見せているわけです。なおiPhoneの古いモデルのケースもまだ現行品として売っているなど、agoodスマートフォンをより長く使ってほしいという考えを持って製品を開発・販売しています。
環境への取り組みはスマートフォンメーカーや周辺機器であるケースメーカーにも広がっており、またそれらを扱う通信キャリアや家電量販店でも対応製品の販売を増やしています。特にスマートフォンのケースは破損や本体買い替えなどで、1年程度で破棄・交換されるものが大半です。世界のスマートフォンの2021年の年間出荷台数は13億台を超えています。極端な話、年間13億個以上のスマートフォンケースが作られ、交換され、破棄されているわけです。
Fairphoneのように自分で修理しながら長く使い続けられるスマートフォンや、ケースが汚れたり破損したり本体交換で不要になったときにメーカーが回収し、それをリサイクルに回すといったエコシステムの構築はこれからより求められるようになるでしょう。手始めにスマートフォンメーカーがリサイクル素材のケースを無料で本体につける、そんな動きを始めても良いのではないでしょうか。
以前、同様に天然素材から出来たケースを紹介しましたが、モバイルバッテリーや充電用のUSBケーブルなども含め、日ごろからついつい使い捨ててしまうスマートフォンのアクセサリ類も、これからは環境に配慮した製品が増えてくることでしょう。