楽天モバイルは7月22日、リモート接客でスマートフォンの申込などをサポートする簡易ブース「リモート契約ショップ」を試験オープンした。まずはアリオ西新井(東京都足立区)に設置し、8月1日からはイオンモール八千代緑ヶ丘(千葉県八千代市)、その後3店舗の試験運用を予定している。
ショップ展開のすき間を埋める新形態店舗
楽天モバイルのユーザーはオンライン手続きの利用率が比較的高く、新規契約においてもオンライン手続きが約6割を占める。一方で、ユーザー層を広げてシェアを拡大していくには、オンライン手続きに不安がある人、対面手続きの安心感を求める人への対応も欠かせない。
楽天モバイルの店舗展開の現状としては、キャリアショップの展開や家電量販店の携帯電話コーナーでの取扱に加え、郵便局内に出店することでオンラインとは異なるユーザー層との接点が増える「楽天モバイル 郵便局店」、離島などにもフットワーク軽く展開できる「楽天モバイル キャラバンカー」などの取り組みも行っている。キャリアショップ/家電量販店/郵便局店の合計店舗数は、2022年4月時点で1,125店舗に及ぶ。
今回登場したリモート契約ショップは、まだ通常のショップ展開を行うほどには需要が読めないエリア、あるいは需要はあっても出店場所をなかなか確保できないエリアなどにも、スピーディーに展開できる新形態の店舗となる。
スタッフは常駐せず、在庫も持たない簡易店舗のため、ユーザー自身がオンラインで申し込む際と同様に、SIMカードや端末は自宅に配送される。「スタッフに直接相談しながら決めたい」「オンライン契約に不安がある」といった人に向け、オンラインの申込方法をベースにしながら手続きをアシストするというオンラインと実店舗の中間的な形だ。
Zoomを使って遠隔でオンライン手続きをサポート
今回、運用開始前のリモート契約ショップで実際の申込の流れをイメージしたデモを体験できたので、その様子をお伝えしよう。
リモート契約ショップは2m四方に収まるコンパクトな簡易ブースとなっており、中に入ると椅子やディスプレイが設置されていた。机上に2枚並んでいるディスプレイのうち、左側の大きな画面はWeb会議サービス「Zoom」を通じて遠隔地で待機するオペレーターと会話するためのものだ。右側の小さな画面は申込手続きに利用する。
ブース内の椅子に着席し、画面上のボタンをタップするだけで、すぐオペレーターが画面上に現れて接客が始まった。実はすでに、このようなリモートブース型の無人店舗は「楽天モバイル 郵便局店」の一部でテストされていた。その際は接続までに必要なユーザー操作が現在よりも多く、機器操作に不安があって対面契約を望む層のニーズに応えきれなかったことから、フィードバックを反映した仕様となっている。
担当オペレーターはアフターサービスとの兼任ではなく、リモート契約ショップや電話申込などの遠隔申込チャネル専任のスタッフが待機している。今回は「他社利用中で楽天モバイルへの乗り換えを検討している」という設定で接客を受けたが、使用状況でのヒアリングやプランの説明など、応対品質はリアル店舗と変わりない。
説明を受けて納得すれば、いざ申込となる。この際は、ビデオ通話用ディスプレイの隣に置かれている小型の契約用端末を立ち上げ、先ほどまでのZoom通話に“3人目”として参加させ、画面共有をする必要がある。
一般的なビデオ通話を活用したシステムとなっている都合上やむを得ないが、口頭で指示を受けながら画面を見て準備を進めていくことになる。このような窓口を必要とするユーザーがデジタル機器の操作に不慣れである可能性の高さを考えると、やや不安が残る点ではある。もっとも、まだ試験段階のサービスであり、先に触れた通話開始までの操作のように、ユーザーの反応を見ながら改良されていくと期待したい。
契約画面はWebサイトから各自で申し込む際と同じもので、オペレーターと同じ画面を見て補助してもらいながら進めていけることが主な違いとなる。印象に残った点としては、途中で運転免許証などの本人確認書類を撮影・アップロードする作業があるのだが、ここでは専用のホルダーに本人確認書類を入れて契約用端末の奥に設けられた定位置に戻せば、「全体が映っていない」「光が反射している」などのトラブルを避けてスムーズに撮影できるようになっている。
リモート契約ショップは在庫を持たないため、申込を終えた後は自宅にスマートフォンやSIMカードが届くのを待つことになる。商品到着後の開通作業や初期設定のサポートも受け付けているため、不安であれば商品を持って再来店すると良いだろう。
やや未完成な部分もあるが、新しい窓口の形になるかもしれない
リモート契約ショップのブースにはモバイル回線を利用するWi-Fiルーターが仕込まれており、出店にあたって回線工事の必要はない。約2m四方の小さなスペースと電源さえあればどこにでも速やかにオープンでき、出店期間中の運用コストも低いため、これまで出店に至らなかった場所でも柔軟に展開できる。もちろん、リモート契約ショップを足がかりに、実績を見て本格出店という流れもあり得るだろう。
体験してみた感想としては、操作につまずく来店者が出そうな場面やZoomの接続が不安定になる場面は見られたものの、改良を重ねていけば新しい窓口の形として受け入れられる可能性は十分にあると感じた。まずは5店舗でニーズや運営方法を検証するために試験運用するとのことだが、今後の本格展開にも期待したい。