そこで研究チームは今回、21人の大学生と23人の高齢者を対象に、信号の形や色に合わせて手や足で反応する実験を実施することにしたという。

信号の形が○=なら右足・△=なら左足で、信号の色が緑=なら右ペダル・赤=なら左ペダルの条件下でというように、信号の形と色でどちらの足でどちらのペダルを踏むかを判断させる実験を実施(例:緑○=なら右足で・右ペダル、赤○=なら右足で・左ペダル)。高齢者と大学生は、手と足それぞれで、信号の形状と色に合わせて反応する側の足(手)と反応するペダルの位置(左・右)を同時に判断してペダルを踏まなければ(押さなければ)ならなかったが、ここでも高齢者は大学生と同等の成績を示したという。ただし、高齢者は前頭葉全体で多くの神経活動を要したことが今回も確認されたとする。

また、右足で右ペダルを踏むより(直行条件)、右足で左ペダルを踏む斜交条件の方が、どの年齢でも判断時間を要し、脳の左背外側の神経活動が多かったが、手でペダルを押すときには直行条件と斜交条件で神経活動の違いはなかったという。

このことは、高齢者の反応切り替え能力は一見問題がないように見えるが、その背景でより多くの実行機能を担う領域での神経活動を必要とすることが示されていると研究チームでは説明しており、より認知負荷が高い状況(駐車場での車の切り返しなど)では、補償的な神経活動があっても、処理の限界を超えて、事故につながる可能性が考えられるとしている。

  • 近赤外線分光法の測定タイミングを示す図

    (A)実験の手続き。赤色なら左ペダルを、緑色なら右ペダルを、△のときには左足で、○のときには右足で踏む課題(色と形の組み合わせは参加者間で相殺)。(B)近赤外線分光法の測定タイミングを示す図 (出所:名大プレスリリースPDF)

なお、今回の研究成果から、高齢者に対する今回のような行動テストだけでは、潜在的な危険を検出できないことがわかったとも研究チームでは説明しており、高齢者の脳機能も合わせて検査することで、事故予備軍を検出できる可能性があるとしている。