今回の研究では、2010年7月から2019年3月に食道がんに対して食道切除再建術を施行した3万5501例が解析対象とされた。手術日にコルチコステロイドを使用した症例は2万2620例(63.7%)だったという。また、在院死亡、呼吸不全、重症呼吸不全を924例(2.6%)、5440例(15.3%)、2861例(8.1%)に認めたとする。

年齢や併存疾患などの背景因子を調整した解析(逆確率による重み付け法)が行われた結果、手術日にコルチコステロイドを使用した症例(ステロイドあり)は使用しなかった症例(ステロイドなし)と比較して、統計学的有意に術後の在院死亡、呼吸不全、重症呼吸不全が少なかったことが判明。傾向スコアマッチング、操作変数法、多変量ロジスティック解析など、ほかの統計学的解析方法でも同様の結果であることが確認されたという。胸腔鏡手術に絞った解析でも、コルチコステロイドが有効という結果だったとする。

  • 手術日のステロイド使用の有無と食道がん術後の短期成績の関連(逆確率による重み付け法での解析)

    手術日のステロイド使用の有無と食道がん術後の短期成績の関連(逆確率による重み付け法での解析) (出所:国がんWebサイト)

なお、ステロイドは古くからあり、世界中で利用が可能な薬として知られている。また、近年普及している胸腔鏡を用いた食道がん手術においても有意義であると考えられる結果が得られたことから、今回の研究成果が日本だけではなく、世界の食道がん手術の成績向上につながるものと期待されると研究チームでは説明している。