実験参加者は別室でアンドロイドの対話を観察しながら、その身体の一部を操作する条件の群と、ただ見ているだけの非操作条件(watch条件)の群にランダムに分かれて実施された。これは、非操作条件の参加者に比べて、操作条件の参加者が、アンドロイドの選好が示された絵画をより好きになるかどうかを調べることで、仮説を検証するという内容だという。
さらに操作条件に関しては、操作部位によって結果に違いが出るのかも調べるため、アンドロイドの笑顔動作を操作するsmile条件と、手の何気ない微かな開閉動作を操作するhand条件の2つが用意された。
参加者の具体的な手順は以下の通りで、実験には各条件15人ずつが参加したという。
- 10枚の絵画を順位付ける
- 6位になった絵画を対話相手に勧めるアンドロイドの身体の一部を操作(smile,hand条件)/操作せず観察(watch条件)
- 改めて同じ10枚の絵画を順位付ける
この実験では、順位付けの結果を3条件で比較し、最初に6位だった絵画(=アンドロイドの選好が示された絵画)の順位が、watch条件に比べてsmileおよびhand条件において上昇していれば、仮説は支持されたことになるという。
絵画の順位がどれだけ変化したかについて、条件間でStudent's t-test法(Bonferroni補正)を用いた比較が行われた結果、種類を問わず、アンドロイドを操作する条件の方が、観察のみの場合よりも絵画の順位が有意に上昇したことが確認されたという。これは、操作条件の方が非操作条件に比べて、ロボットの選好が示された絵画を好むように参加者の態度が変容したということであり、仮説が支持されたことを示すと研究チームでは説明する。なお、操作部位による有意な違いは確認されず、部位に関わらず操作することで態度変容が起こる可能性も示唆されたとしている。
研究チームは今回の成果を受け、将来の半自律型ロボットの応用に向けて、より効果的なヒトとロボットの共働システムのデザインに対する貢献が期待できるとしており、例として、ロボットが対話相手から無礼な態度を取られてしまい、それを操作者が目の当たりにした際、ロボットが自律的に前向きな態度を表出するようにしておくことで、操作を通じて操作者の気分を前向きに維持することができ、操作者の精神的負担を軽減できる可能性があるといったことを挙げている。
また半自律型ロボットを運用する際には、操作者の態度がロボットが自律的に示す態度に無意識に近づいてしまうリスクがあり得ることを、操作者に事前に伝えておくべきなど、これまで考慮されていなかった倫理的観点からの議論につながることも期待できるとする一方で、今回の実験結果は、実験で用いた状況や使用したロボット、実験参加者の属性などに依存している点も強調しており、今回の研究知見をより確かなものとするには、よりさまざまな状況においても同様の結果が得られるかどうか、また実際に知見を応用することでどの程度の効果が実際に得られるかなどについて、さらなる検証が必要だとしている。