【編集部より】記事の内容に事実と異なる箇所がありました。お詫びいたします。大変申し訳ありません。修正版に差し替える準備をしていますので、内容反映まで今しばらくお待ちください。(6月30日23時00分追記)
キヤノンから、APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載する「EOS R7」と「EOS R10」が発表されました。発売を前に、同時に発表された2本のAPS-C専用ズームレンズとともにトライアルする機会が得られましたので、実際に使ってみたことで分かった両モデルのファーストインプレションを記してみたいと思います。
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待望のAPS-Cセンサーを採用するRFマウントのミラーレスカメラ「EOS R7」(左)と「EOS R10」。一度に2モデルの発表は、「EOS R5」と「EOS R6」の発表時と同様、シリーズの構築を急ぐためと思われます。それぞれが装着しているのは同時発表のAPS-C専用レンズで、上の写真ではEOS R7に「RF-S 18-150mm F3.6-6.3 IS STM」を、EOS R10には「RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM」を装着しています。実売価格は、EOS R7ボディが198,000円前後、EOS R10ボディが128,500円前後、RF-S 18-150mm F3.6-6.3 IS STMが42,500円前後、RF-S 18-150mm F3.6-6.3 IS STMが68,500円前後。EOS R7が先行して6月23日に販売を開始します
カメラのAFに対するキヤノンの考え方に変化が感じられた
EOS R7とEOS R10を使ってみてとても強く感じたのは、現在のキヤノンのAFに対する考え方がハッキリと見えてきたことです。
両モデルとも、デフォルト(工場出荷時)の設定では、AFモードは「SERVO」とし、「トラッキング」はONとなりました。これは「EOS R3」と同じで、ピントは常時被写体に合わせ、AFエリアから被写体が外れてしまっても画面内に被写体がある限りトラッキングでピントを合わせ続けることを意味します。従来、デフォルトのAFモードは、合焦するとその時点でAFを停止する「ONE SHOT」に設定され、「トラッキング」はEOS R3より前のEOS Rシリーズでは搭載されていませんでしたので、ある意味真逆と述べてよいAFの設定となります。
EOS R3の場合は、スポーツなど動体撮影を強く意識したカメラゆえと思えるところがありましたが、スナップや風景、ポートレート、家族の記念写真などさまざまな被写体を撮ることになるであろうEOS R7、EOS R10も同じ設定をデフォルトとしていることから、今後はカムコーダーのように常に補足した被写体にピントを合わせ続け、一瞬を切り取る、それがキヤノンのAFに対する新しい思想のように思えてなりません。
エントリー機にも憧れのマルチコントローラーが!
さらに、そのことを象徴しているのが、メーカーがエントリー機と謳うEOS R10にも搭載されたマルチコントローラーの存在でしょう。デジタル一眼レフEOSの場合、エントリーに分類されるEOS四桁機やEOS Kissシリーズには、これまでマルチコントローラーが搭載された経緯はありません。トラッキングで被写体を追い続けるには、ユーザーはシャッターボタンの半押し開始のとき、選択したAFエリアと被写体を必ず重ねる必要があります。そのような際、AFエリアの移動を直感的でたやすくしてくれるのがマルチコントローラーなのです。EOS R10のマルチコントローラーは、同社のAFに対する考え方が新しいフェーズに入ったことを的確に表しているもの断言してよいでしょう。
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EOS R10のマルチコントローラー。カメラ自体は、デジタル一眼レフのEOS 9000DやEOS Kissシリーズに準じるエントリークラスですが、AFをより正確に、そして快適に行うためにこのクラスとして初めて搭載されました
一段と捕捉性能が高くなった被写体検出機能「EOS iTR AF X」も、EOS R7とEOS R10のAFをサポートするものとして注目できます。人や動物、クルマなど、一度AFが捕捉すれば逃してしまうことはありません。ユーザーは、最初のシャッターボタンの半押し開始のときにAFエリアと被写体を重ねてさえいれば、あとのAFはカメラ任せでシャッターチャンスに集中できるのです。さらに、AFとは直接関係ないですが、ドライブモードのデフォルトが「高速連続撮影」であることも注目点。フィルムカメラと違って、メモリーカードに空きがある限り撮り続けられるデジタルとしてのメリットを活かしたもので、撮影者はそのなかからシャッタータイミングを上手く捉えた最良のカットを抜き出せばよい、とする考えから設定されたように思えます。
そのほかの注目点としては、まずプリ撮影モードがあります。これは、シャッターボタンを全押しした瞬間の約0.5秒前から記録を行うもの。電子シャッターを使用し、RAWフォーマットで記録するRAWバーストモードに搭載されるもので、EOS R7ではクロップなしで、EOS R10ではクロップありで、それぞれ最高30コマ/秒の連続撮影を行います。シャッタータイミングが捉えにくい鳥や昆虫の飛び立つ瞬間など、被写体の予期せぬ瞬間的な動きを確実に記録できます。ミラーレスだからこそ実現できた機能といえます。これまで、同種の機能は深度合成などとともに他のメーカーが強かった部分だけに、キヤノンユーザーは嬉しく思うはず。深度合成についても、ボディ内でできるようになりました。その場、背面液晶で合成の結果が見られるので、マクロ撮影の多いユーザーなど重宝しそうです。
EOS R7はサブ電子ダイヤルの位置を大改革
操作性での注目は、両モデルの電源スイッチとEOS R7のサブ電子ダイヤルの位置となります。
電源スイッチはいずれも右肩上部とし、しかもストラップ取り付け部近くに設置。EOS R7は独立したスイッチで、静止画と動画の切り換えも行えます。EOS R10は、サブ電子ダイヤルと同軸になります。これまでのEOS Rシリーズでは、カメラの背面側から見て左肩上部にあり、電源のON/OFFを行うには右手でグリップを持ち、左手で電源スイッチを操作する必要がありました。新しい2機種では、グリップを握った右手のみで操作でき、とても便利になったように思えます。
EOS R7のサブ電子ダイヤル位置がマルチコントローラーと同軸となったことも忘れてはなりません。従来のSETボタンと同軸としていたものに比べ、右手親指が自然な角度でダイヤルに置け、操作もこれまでよりも小さな動きで済みます。「EOS R5」や「EOS R6」では、サブ電子ダイヤルが小径化してしまい、操作も窮屈な感じがしていました。今後、ボディがさらに小型化されたどうなるものだろうと思っていた矢先にこのアイデア。おみそれいたしました! 今回は撮影する時間が少なかったため、ときどき親指を従来の位置に思わず持っていきそうになることがたびたびありましたが(筆者はEOS R5ユーザー)、EOS R7のユーザーであればさほど時間をかけずに慣れてくるはずです。
写りについては、両モデルとも改めて述べるまでもありません。画素数の違いこそあるものの、階調再現性や高感度特性などどちらも不足を感じることはなく、満足いく結果が得られます。特に高感度特性については、拡張のISO51200相当でも実用として使えそうに思えるなど、APS-Cだからという引け目は一切感じさせません。高速の連続撮影機能やマルチコントローラーの搭載なども含め、両モデルともEOSのコンセプト「快速・快適・高画質」をしっかり継承するものとなっています。なお、作例や具体的な評価については、後日改めて紹介したいと思います。
安っぽく感じてしまうシャッター音(EOS R7、EOS R10とも)にはちょっと興醒めしないでもないですが、EOS Rシリーズのカメラとして写りや機能、操作性、スタイルなど、手を抜いたと感じさせるところはなく、両モデルとも完成度の高いカメラに思えます。
今回、APS-C専用のRF-Sズームレンズも2本発表されました。大口径単焦点のRF-Sレンズなどが今後登場してくれば、よりEOS R7、EOS R10の魅力も増してくるように思えます。ぜひメーカーには検討していただきたいのと、EOS R7のボディにフルサイズセンサーを搭載するモデルや、「EOS M6」のようなソープボックススタイルのモデルの登場にも期待したいところです。
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APS-C専用のRF-Sレンズは、標準ズームレンズ「RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM」と高倍率ズームレンズ「RF-S 18-150mm F3.6-6.3 IS STM」の2本が登場。今後、単焦点レンズなどラインナップの充実を望みたいところです