ソニーが新しい左右独立型の完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds S」を発売します。ノイズキャンセリング(NC)機能と外音取り込み機能を載せ、LDACによるハイレゾワイヤレス再生にも対応しているのが特徴です。6月3日に発売を迎える新製品のファーストインプレッションをお届けします。

  • ソニーの新しい完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds S」

LinkBuds Sに「穴がない」のはなぜ?

ソニーは、リング型のダイナミック型ドライバーを載せた開放型の完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds」を2022年2月に発売しています。“穴の空いたデザイン”を採用し、耳に装着して音楽などのコンテンツやハンズフリー通話の音声を聴きながら、周囲の環境音にも注意を向けられる“ながら聴き”スタイルに最適なイヤホンとして、発売以来注目を集めています。

  • 開放型イヤホンの「LinkBuds」。リング型の本体部分に12mm径の大型ドライバーを搭載している

一方、LinkBuds Sは穴の空いていない密閉型ハウジングとしたうえ、外音を遮断するNC機能も搭載しています。

LinkBudsシリーズとして2つの新製品が一気にそろった格好ですが、型番に「S」が付くモデルはなぜ本体に穴を設けず、密閉型のイヤホンとしたのでしょうか。その理由について、ソニーの担当者は「LinkBudsシリーズはセンシング機能を活かした多くのユニークな機能とサービスが楽しめるイヤホン。初代のモデルは好評だが、騒音に囲まれる場所でも使いやすいNC機能付きのLinkBudsも欲しいという声があった。そのため高い遮音性能を備えるLinkBuds Sを企画した」と語っています。

  • 密閉構造のLinkBuds S。シリコンイヤーピースも使うので高い遮音性能が得られる

筆者は仕事柄、コンテンツや使用シーンに応じて多種多様なイヤホンを使い分けることがあります。でも一般に多くの人は、お気に入りのイヤホンを選んで長く使い倒しているものです。開放型のLinkBudsの特徴であり、弱点でもあった「環境音が自然に聞こえてくる」使い勝手を方向転換して、より多くの場面で快適に使えるオールラウンダーの「S」をシリーズに加えたというわけです。

オンラインのソニーストアではLinkBudsが23,100円、LinkBuds Sが26,400円で販売されています。

穴あきLinkBudsやWF-1000XM4とは何が違う?

ソニーのNC搭載完全ワイヤレスイヤホンといえば、フラグシップの「WF-1000XM4」という人気機種があります。26,400円のLinkBuds Sと比べると、WF-1000XM4は33,000円と高価なイヤホンですが、ふたつの製品にはどのような違いがあるのでしょうか。

  • ソニーの完全ワイヤレスイヤホン最上位機「WF-1000XM4」

LinkBuds Sは「ながら聴き」が快適に楽しめるよう、片側の本体を約4.8gと軽くコンパクトにしています。装着したときに耳から飛び出て見えないデザインも好印象です。

  • LinkBuds Sを装着したところ。耳から飛び出て見えない、コンパクトでスリムなスタイルも魅力

  • こちらはWF-1000XM4を装着したところ。LinkBuds Sよりも大きく、耳穴をしっかり埋めているのがひと目で分かる

イヤホンに内蔵するモーションセンサーにより、ユーザーの顔の向きに対して音が聞こえてくる方向を連動させるダイナミックヘッドトラッキング機能に対応していることもLinkBudsシリーズ共通の特徴です。ソニーのLocatone(ロケトーン)アプリが収録する様々なSound ARコンテンツを再生したときにいっそうの没入感が楽しめます。

LinkBudsシリーズのヘッドトラッキング機能に対応するアプリとコンテンツは、これから続々と増えそうです。そのひとつがAndroid版からリリースが始まった「Auto Play」です。LinkBuds Sを装着したユーザーの行動をイヤホンが検知して、歩き出したり、音声通話を終了したときにリラックスできる音楽を再生する、といった使い方ができます。

  • Android版の「Auto Play」アプリ。ユーザーの行動に合わせてイヤホンによる音楽再生などがスタートする

ほかにもLinkBuds SはAIによる機械学習のデータを活用し、ハンズフリー通話の際にマイクが集めた音から人の話し声と環境騒音を分離して、人の声だけをクリアに通話相手に届けるマイク用NC機能を搭載しています。

対するWF-1000XM4は、NC機能においてはソニーの現行の完全ワイヤレスイヤホンの中で最高の消音性能を誇っています。付属するイヤーピースのパッシブな消音効果が高いことも同機の特徴です。

NC機能をオンのまま使ったときに、連続して音楽再生やハンズフリー通話に使える時間も、LinkBuds SよりもWF-1000XM4のほうが長く、スタミナ性能で優れています。専用ケースがワイヤレス充電に対応しているところもWF-1000XM4の特徴です。

両方に共通する特徴は、最大96kHz/24bit対応のハイレゾワイヤレス再生を実現するソニー独自のオーディオコーデック「LDAC」に対応したこと。LinkBuds Sはさらに、圧縮されたオーディオ信号にAIによる補完をかけながらハイレゾ相当の音質にアップスケーリングする、最新の「DSEE Ultimate」が搭載されました。WF-1000XM4に採用されているDSEE Extremeよりも、AIによる音質補間のアルゴリズムが新しい最新鋭のテクノロジーです。

外音取り込み機能に関わるものでは、LinkBuds SにもNC機能がオンのときに、左側のタッチセンサーを長押ししている間に外音を取り込む「クイックアテンション」や、イヤホンを装着しているユーザーが発話した瞬間に外音取り込み機能を立ち上げる「スピーク・トゥ・チャット」機能がWF-1000XM4と同様に搭載されています。