高騰していたビデオカードの価格が改善している。ASUSTeK Computerの共同CEOであるS.Y.Hsu氏によると、価格高騰の要因の1つだった暗号資産のマイニング(採掘)の需要が大きく減少。PCゲーマーからの需要を中心としたビデオカード本来の市場に戻りつつある。同社の2022年第1四半期決算発表のQ&Aセッションで明らかにした。

米国が実施した景気刺激策などによって2020年末からビットコインやイーサリアムといった仮想通貨の価格が上昇し、それに伴ってマイニング用途でビデオカードの需要が急増。新型コロナ感染拡大の影響によるサプライチェーンの混乱もあって、ビデオカードが深刻な品不足に陥り、実売価格が希望小売価格を大幅に上回る状態が続いている。しかし、今年に入って在庫が改善し始め、価格も下がり続けている。

米国の利上げで3月末から仮想通貨の下落が続いているが、今のマイニング用途の需要の減速は、PoS(Proof of Stake)を採用する暗号資産のトレンドによるものだとHsu氏は指摘した。ビットコインなどが採用するPoW(Proof of Work)というコンセンサスアルゴリズムではマイナーが膨大な量の単純計算を行うことで報酬を得る。その環境負荷の大きさが問題視されるようなり、コインの保有量・年数で報酬が決まるPoSの採用が広がり始めた。今年後半にはイーサリアムがPoSに移行する予定で、電力を消費するマイニングのニーズは今後減少していく見通しだ。ビデオカードの価格が下がったところで再び投資するマイナーが現れる可能性はあるものの、計算力でマイニングを競うフェーズは終わろうとしている。

「グラフィックカードの需要はゲーム用途に回帰していくでしょう。現時点で見えているのは、マイニングによる需要がなくなってきているということです。そのため、グラフィックカードの価格は正常に戻りつつあります」(Hsu氏)

ただし、ゲーミング用途のビデオカード需要も強い。巣ごもり需要の反動で昨年後半からPC市場は成長を鈍化させており、ASUSも第2四半期についてPCの売り上げが前期から10%減、ビデオカードやマザーボードなどPCパーツが10〜15%減と予測している。だが、ゲーミング市場は引き続き成長すると考えており、マイニング需要が収束してもビデオカードは2022年にプラス成長すると予想している。