5月10日、AMDはRadeon RX 6000シリーズに新しくRadeon RX 6650 XT/6750 XT/6950 XTの3製品を追加する。このうち今回Radeon RX 6650 XT/6750 XTの2製品を試す機会に恵まれたので、簡単に性能をご紹介したい。

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今回発表になったのは以下の3製品(Photo01)。スペックをまとめたのが表1であるが、基本的にはNavi 21/22/23の最大構成ということで、CU数とかROP数などはそれぞれRadeon RX 6600 XT/6700 XT/6900 XTと変わらない。変更があったのは動作周波数とメモリ速度で、Radeon RX 6650 XTはGDDR6 17.5Gbps、6750 XT/6950 XTはGDDR6 18Gbps品がそれぞれ採用されている(*1)。価格はRadeon RX 6600 XT/6700 XT/6900 XTより若干引き上げられている(Photo02)が、競合製品と比較すると割安である(Photo03)としている。

  • ■表1

  • Photo01: 6800 XTシリーズのUpdateが無いのがちょっと残念。6950 XTはGeForce RTX 3090 Tiへの対抗馬という位置づけだろう。

  • Photo02: ちなみに発表時のRadeon RX 6600 XT/6700 XT/6900 XTの価格はそれぞれ$379、$479、$999だった。

  • Photo03: 問題は性能としてどうか? というあたり。

気になる性能だが、今回はRadeon RX 6950 XTが入手できていないので、こちらに関するスライドは割愛。Radeon RX 6750 XTはGeForce RTX 3070対抗という位置づけであり、同等以上の性能でありながら安価(Photo04)。加えてRSR(Radeon Super Resolution)を使うと更に性能が伸びるとしている(Photo05)。一方Radeon RX 6650 XTはGeForce RTX 3060比で十分高速であり、かつ主要なゲームで60fpsをキープできるとし(Photo06)、RSRを使う事で更に性能の上乗せが期待できる(Photo07)とする。いずれの製品も米国時間の5月10日に発売という話だが、現時点で日本での発売予定とか価格などは明確になっていない(Photo08)。まぁこれは追々、情報が入ると思われる。

またこの3製品に合わせてリリースされるRadeon Software Adrenalin Edition 22.10では、いくつかのゲームで結構な性能向上が実現される、としている(Photo09)。

  • Photo04: GeForce RTX 3070が8GB Memory、大してRadeon RX 6750 XTは12GB Memoryでありながら安価、というのもアピールポイントの一つとされる。

  • Photo05: Super Scaling同士で比較しても十分競合できる、とする。

  • Photo06: 言うまでもなくこれは2Kでの話。解像度を上げると当然厳しくなる。

  • Photo07: とはいえ、元々の性能がそう高くないから、RSRでも大きな伸びは期待できない。

  • Photo08: 問題は現時点でRadeon RX 6950 XTの評価機材の話すら来ていないのに、本当にRadeon RX 6950 XTが発売できるのか? というあたりだろうか。

  • Photo09: ただこの21.50でそもそもRadeon RX 6950 XTが動作するのか? という話が。ちなみに評価時点での最新版は22.4.2で、ここから22.10でどの程度性能が向上しているのかは不明である。

(*1) 実はまだRadeon RX 6950 XTのみ、GDDR6 18Gbpsかどうかの確認が取れていない。現物がなく、AMDの資料はInfinity Cacheと併せての帯域が示されているので、ここから算出できないためだ。とはいえ、GDDR6 19Gbps品は量産出荷できるレベルでは無かったと記憶しているので、多分GDDR6 18Gbpsだと思う。

評価機材

今回はAMDのReference Boardではなく、ASRockの製品を利用しての評価となる。まずRadeon RX 6650 XTの方はChallenger Radeon RX 6650 XT(Photo10~16)。GPU-Zでの認識も特に問題はなし(Photo17,18)。一方Radeon RX 6750 XTの方はPhantom Gaming Radeon RX 6750 XT(Photo19~27)。同じくGPU-Zでの認識も問題はなかった(Photo28,29)。

  • Photo10: パッケージは小柄で、かなり軽い。

  • Photo11: 2ファン構成。大口径ファンを搭載する関係で、背はやや高い。寸法は265mm×120mm×41mm、重量640.8g(いずれも実測値)。

  • Photo12: 背面はバックプレートが入っている。基板そのものはかなり小さいのが判る。

  • Photo13: 厚みは背面のバックプレートの分、厚みはあるがファン側はブラケットからはみ出さない程度。出力ポートはDisplayPort×3+HDMI×1。

  • Photo14: このアングルで、後端がかなり薄いのがお分かりいただけるかと思う。

  • Photo15: 補助電源は8pin×1。ファンのお蔭でちょっと奥まった位置になっている関係で、補助電源の着脱がやややり難い(まぁ普通は煩雑にするものでもないから実害は少ないが)。

  • Photo16: このアングルだとヒートパイプの配置が良く判る。

  • Photo17: 微妙にBase/Boost ClockがOC動作になっているが、さして大きな差ではない。

  • Photo18: Power Limit Adjustment Rangeは最大+10%なので、最大198W程度での動作になる計算。

  • Photo19: パッケージはChallenger Radeon RX 6650 XTより一回り大きく、重さも結構異なる。

  • Photo20: 3ファン構成。ちなみに中央のファンのみLEDで点灯する。何気にかなり大きめ。寸法は305mm×120mm×55mm、重量は1197.3g(いずれも実測値)。

  • Photo21: バックプレートはかなり大きめで、基板をはみ出してその先のヒートシンク部までカバーする構成。上に突き出している部分もかなりごつい。

  • Photo22: 出力ポートはDisplayPort×3+HDMI×1。ほぼ3スロット厚。

  • Photo23: 後方のヒートシンクもかなり大きめなのが判る。このアングルだと補助電源コネクタが見えない。

  • Photo24: その補助電源コネクタは8pin×2。

  • Photo25: 底面から。ヒートシンクがかなり分厚いのが判る。

  • Photo26: ブラケット部から。高さ、厚みともにかなりのものであるのが判る。Challenger Radeon RX 6650 XTもそうだが、小型のケースだと蓋が閉まらなそうである。

  • Photo27: 稼働時はこんな感じに点灯する。3ファン全部これだとかなり五月蠅い感じがするので、この程度で良かったという気も。ちなみにLEDスイッチ(Photo21で中央上側にある)をOffにすると完全に消える。

  • Photo28: こちらも動作周波数が若干上がっている(2495/2600MHz→2554/2623MHz)程度。

  • Photo29: Power Limitは最大+15%まで行けるので、287.5Wあたりまで上がる可能性がある。もうほぼほぼ、Radeon RX 6800 XTと変わらない感じ。

その他のテスト環境は表2の通り。今回は比較対象としてGeForce RTX 3060 Ti/3070、それとRadeon RX 6700 XTを用意した。ちょっと時間の関係もあり、GeForce RTX 3060 12GB版は用意できなかったが、概ねGeForce RTX 3060 Tiとの対比で考えれば評価できるだろう、と判断でのことである。

  • ■表2

グラフ中の表記は

3060 Ti: NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founder Edition
3070 :NVIDIA GeForce RTX 3070 Founder Edition
6650 XT: ASRock Challenger Radeon RX 6650 XT
6700 XT: AMD Radeon RX 6700 XT Reference
6750 XT: ASRock Phantom Gaming Radeon RX 6750 XT

としている。また本文中の解像度表記は、いつものように

2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel

とさせていただいた。

◆3DMark v2.22.7336(グラフ1~3)

3DMark v2.22.7336
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark

  • グラフ1

  • グラフ2

  • グラフ3

まずは3DMarkのOverall(グラフ1)を見てみたい。テストによって多少差はあるが概ね

Radeon RX 6650 XT < GeForce RTX 3060 Ti < Radeon RX 6700 XT ≦ GeForce RTX 3070 ≦ Radeon RX 6750 XT

という感じだろうか? スコアを見ると、Radeon RX 6700 XTとGeForce RTX 3070が同程度な場合と、GeForce RTX 3070とRadeon RX 6750 XTが同程度な場合が混在しているという感じであるが、Overallに関してはCPU性能も含まれており、今回の環境で言えば差が出にくくなっている(CPU自体は共通のため)。そこでGraphics Testの結果(グラフ2)を見ると、もう少し差が明確である。とはいっても先ほどの傾向そのものは変わらず、多少性能差が広まった程度でしかないのだが。あと上で言い忘れたが、WildLife~TimeSpyまでの範囲では上の傾向が通用するが、TimeSpy ExtremeとPortRoyalに関してはRadeon系がGeForce系に明らかに劣っている。なんせRadeon RX 6750 XTのPortRoyalのスコアはGeForce RTX 3060 Tiより低いのだから、これはもう明確である。このRay Tracing周りの性能差は、Navi 2世代では如何ともし難いのかもしれない。

Physics/CPU Testは差が無い(実際差が無かった)ので割愛し、Combined Testの結果(グラフ3)を見てみても、まぁCPU性能は同じなので結果は大きく変わらない。Radeon RX 6950 XTとGeForce RTX 3070の2つの性能は解像度によって上下が変わるが、どのケースでも大きな性能差とは言えないあたりは、概ね同等レベルと考えて良いかと思う。逆にRadeon RX 6650 XTは確実にGeForce RTX 3060 Tiには劣るが、スコア差を考えると確かにGeForce RTX 3060には競合できる性能だろうと理解できる。