こちらでご紹介したように、AMDはDesktop向けにRyzen 5000シリーズとRyzen 4000シリーズを追加する事を発表した。発売日は4月15日とされ、ローエンドのRyzen 3 4100で14,800円、トップエンドのRyzen 7 5700Xで42,800円とされている。秋葉原では既に発売が開始されており、概ねAMDの発表した予想小売価格に近い値付けとなっている。

さてこの追加された製品のうち、Ryzen 5000シリーズ3製品について簡単に性能を確認してみた。

  • Ryzen 7 5700XとRyzen 5 5500/5600を試す - 対Core i5や5800Xで絶妙な性能かも

    今回は写真のRyzen 7 5700Xのほか、より手頃なRyzen 5 5500/5600も一緒に評価する

評価機材

今回評価したのはRyzen 5 5500/5600(Photo01~12)とRyzen 7 5700X(Photo13~17)である。その他の環境は表1の通り。比較対象としては、Ryzen 7 5800XとCore i5-12600Kを持ってきた。Ryzen 7 5800Xについては、Ryzen 7 5700Xとの比較用である。この2つの製品は動作周波数が3.4GHz/4.6GHz vs 3.8GHz/4.7GHzと、Baseはちょっと差があるがBoostはさほどでもなく、その割にTDPは65W(Ryzen 7 5800Xは100W)と手頃であり、コア数を必要とするユーザーにとっても割と良い選択肢になり得る。実はこの2製品、実売価格もかなり接近している。Ryzen 7 5700Xはこちらにもある様に43,000円前後、対してRyzen 7 5800Xはこちらで触れた様に46,000円前後だったのが、この原稿執筆段階ではさらに値下がりして43,383円とかになっている(Photo18)事を考えるとほぼ同等といったところで、性能を取るか消費電力を取るかといった感じなので、その性能差(と消費電力差)はどの程度なのかを見極めてみたい。

  • Photo01: パッケージは当然ながら見た所一緒。

  • Photo02: 上面のシールが唯一の差となる。クーラー内蔵なのでちょっと箱は重い。

  • Photo03: こちらのグレードはCPUクーラー(Wraith Stealth)が付属する。

  • Photo04: CPUパッケージは他と変わらず。下の黒い箱にクーラーが内蔵されている。

  • Photo05: Ryzen 5 5500。製造は2020年となっている。

  • Photo06: Ryzen 5 5600も製造は2020年。

  • Photo07: おなじみWraith Stealth。

  • Photo08: フィン部分は薄めだが、これで65Wまで対応できる。正直、良くできたクーラーだと思う。

  • Photo09: Ryzen 5 5500はCezanneをベースにGPUを無効化したダイとなる(ため、L3も16MB)。

  • Photo10: 勿論Windowsからは問題なく認識される。

  • Photo11: Ryzen 5 5600はVermeerベース。なのでL3は32MB。

  • Photo12: Windowsから見ると、Ryzen 5 5500の高クロック版といった風にしか見えない。

  • Photo13: CPUクーラーは内蔵されないので、パッケージは当然軽め。

  • Photo14: 内蔵されるのはCPUだけ。正直言えばTDPは65Wなのだし、Wraith Stealthを同梱してくれても構わない気がするのだが、OC対応のXモデルだからOCするとWraith Stealthでは厳しいという部分もあるのだろう。

  • Photo15: こちらも2020年製造となっている。

  • Photo16: 当然Vermeer。L3は32MB。

  • Photo17: きちんと8core/16threadで認識される。

  • Photo18: Keepaによる価格推移。4月23日あたりから今の価格まで落ちている。

■表1
CPU ・Ryzen 5 5500
・Ryzen 5 5600
・Ryzen 7 5700X
・Ryzen 7 5800X
・Core i5-12600K
Motherboard ASRock X570 Pro4 ASUS Prime Z690-A
BIOS Version 4.30 BIOS 0703
Memory CFD W4U3200CM-16G×2
DDR4-3200 CL22
Micron CMK32GX5M2A-4800C40×2
DDR5-4800 CL40
Video NVIDIA GeForce RTX 3080 Ti Founder Edition
GeForce Driver 512.15 DCH WHQL
Storage Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 11 Pro 日本語版 21H2 Build 22000.556

一方Ryzen 5は5500が23,500円前後、5600が29,000円前後とされている。対抗馬となるのは、本来だとCore i5-12400あたり(原稿執筆時点のAmazonでの価格は27,980円)になるのだが、機材調達の関係でもう少しグレードが上がるCore i5-12600Kになってしまった。Amazonでは原稿執筆段階では品切れだが、Keepaを見ると直前の価格が38,771円となっている(Photo19)。この辺りを勘案して、Ryzen 5 5500/5600の価格性能比がどの程度か(逆に言えば、Core i5-12600KがRyzen 5 5500/5600より1万円高いのは妥当か)を判断してみたいと思う。

  • Photo19: 割と高め安定というか、4万をちょい切る位で安定している。

ところでテスト環境だが、これは実は先にレポートしたRyzen 7 5800X3Dのテストの際の環境そのままである。というか、テストそのものは一緒に行っており、ただ分析は全部まとめて出すと間に合わない&分析項目が多くなりすぎるという事で分割させていただいた。そんな訳で個々のテスト手順(ゲームにおけるグラフィック品質の設定)は全く同一である。

グラフ中の表記は

  • R5 5500:Ryzen 5 5500
  • R5 5600:Ryzen 5 5600
  • R7 5700X:Ryzen 7 5700X
  • R7 5800X:Ryzen 7 5800X
  • i5-12600K:Core i5-12600K

となっている。また本文中の解像度表記は、いつものように

  • 2K :1920×1080pixel
  • 2.5K:2560×1440pixel
  • 3K :3200×1800pixel
  • 4K :3840×2160pixel

とさせていただいた。

◆PCMark 10 v2.1.2535(グラフ1~6)

PCMark 10 v2.1.2535
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10

  • グラフ1

  • グラフ2

  • グラフ3

  • グラフ4

  • グラフ5

  • グラフ6

ではまずPCMarkから。Overall(グラフ1)を見ると、全体的にちょっと不思議な傾向である。まずCore i5-12600Kが妙に高いスコアなのだが、PCMark 10 Applicationsではそれほどでもないところを見ると、スコアの差はCPU性能そのものではない気がする。あと面白いのは、Ryzenの中ではRyzen 5 5600Xが最高速な事だ。この傾向はTest Group(グラフ2)でも共通である。

Essential(グラフ3)ではApp Startupのみ飛びぬけてCore i5-12600Kが高速。一方Ryzen 5 5600も良いスコアであり、逆にRyzen 7 57000XはRyzen 7 5800Xと大差なし。この傾向はProductivity(グラフ4)も似ており、今度はSpreadsheetsでのみCore i5-12600Kが飛びぬけている。Contents Creation(グラフ5)ではRendering And Visualizationのみ、突出してCore i5-12600Kの性能が高い。このDigital Contents CreationではまたRyzen 7 5800XよりもRyzen 7 5700XやRyzen 5 5600Xの方がスコアが高いという珍事も発生している。そしてApplications(グラフ6)では、やはりCore i5-12600KがExcelのみスコアが極端に高い、と言う結果になっている。

実はこの傾向は、Ryzen 7 5800X3Dに結構似ている。あちらはメモリアクセスが多くなるアプリケーションで、大容量L3の効果で高速化(Excelとかが良い例)だったが、こちらはCore i5-12600KのみDDR5の効果でこうした処理が高速化されているように見える。

一方でRyzen 5 5600は、TDPこそ65WながらBase 3.7GHzとやや周波数が高めで、しかも6コアということでBoostを掛けやすい(全コアBoostにしても、8コア製品より消費電力が低めに抑えられる)あたりが好成績に繋がった様に思われる。Ryzen 7 5700Xはこれに比べるとややスコア低めであるが、Ryzen 7 5800Xから大きく性能を落としているという風でもない。

◆Procyon v2.0.399(グラフ7~10)

Procyon v2.0.399
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon

  • グラフ7

  • グラフ8

  • グラフ9

  • グラフ10

引き続きProcyon。こちらでもやはりCore i5-12600Kのスコアがトップで、Ryzen 5はともかくRyzen 7 5700X/5800Xの存在価値が問われかねないが、DDR5を利用しているという時点でシステムコスト的にはCore i5-12600Kの方が高価という事を考えると、まぁ性能/価格比では同等と考えてよい様にも思われる。

それはともかくとして、Ryzenの方を見てみると、全体にRyzen 5 5500はそれなりに性能差があるが、Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700X/5800Xの性能差がそれほど無い、というのは象徴的である。唯一ここで明白に差が出ているのはVideo Editing。やはりコア数×動作周波数、がそのままストレートに効いてくる感じであり、ここではRyzen 5 5500/5600はおろかRyzen 7 5700XもRyzen 7 5800Xには敵わないといったところだろうか。

◆CineBench R23(グラフ11)
◆POV-Ray V3.7.1 Beta9(グラフ12)
◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.19.21(グラフ13)

CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench
POV-Ray V3.7.1 Beta9
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.19.21
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

  • グラフ11

  • グラフ12

  • グラフ13

コア数×動作周波数がそのまま反映される、というのがこうしたレンダリング系やエンコード系であり、こうしたシーンではRyzen 7 5700XはRyzen 7 5800Xに敵わないし、Ryzen 5 5500/5600は結構大きな性能差となることが結果からも明白である。ただ逆に言えば、こうしたレンダリング/エンコード系の処理を激しくやりたい、という訳で無ければそれほど性能差が無い(これはPCMark 10の結果からも明らか)訳で、どんな用途を求めているか次第ということになる。とりあえずレンダリングやエンコードでは、安いCPUの性能はそれなり、という当然の結論になる。

◆3DMark v2.22.7336(グラフ14~17)

3DMark v2.22.7336
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark

  • グラフ14

  • グラフ15

  • グラフ16

  • グラフ17

では3Dでは? ということでまずは定番の3DMarkを。Overall(グラフ14)を見ると、まぁGPUがGeForce RTX 3080 Tiと比較的高性能な部類のものを使っている事もあるが、予想以上に性能差が少ない。大きくばらけるのはNightRaid程度である。この傾向はGraphics Test(グラフ15)も同じで、特にFireStrike以降ではもうCPUによるスコア差が皆無としていいほどに拮抗した性能になっている。勿論Physics/CPU Test(グラフ16)では性能差が見られるが、問題はこれが実際のゲームでどこまで関係してくるか? というあたりではないかと思う。Combined Test(グラフ17)では、負荷の低いFireStrikeでは差が大きい(何故Core i5-12600Kが一番スコアが悪いのかが良く判らない)が、FireStrike Extreme/UltraとGPU側の負荷が上がるにつれて差が殆ど無くなるあたり、CPU性能差が出るのは解像度が低い時だけ、という当たり前といえば当たり前の結果になったが、逆にGPUの足を引っ張るほど深刻な性能不足ということはまぁ無さそう、と判断される。