続いては「IoTにおけるLPWAとLTEの関係」と題して、IoTビジネス事業部アグリビジネス推進室室長の花屋誠氏が登壇した。花屋氏はIIJが展開しているスマート農業ビジネスを担当しており、「現場を知る」精神の元、積極的に田んぼでの作業にも従事。実証研究のために自宅のそばに田んぼを借りてしまうほどの熱意を持った方だ。

  • 自ら田んぼに入って現場の知見を吸い上げる花屋氏

IIJのスマート農業では、水田の水量センサーと自動/遠隔水量調整弁が主力製品なのだが、これらのIoT機器の接続には「LPWA」と呼ばれる無線技術が使われている。IoTで広く使われているこの「LPWA」とはなにか、というのが、今セッションのキモだ。

LPWAとは「Low Power Wide Area」の頭文字を取ったもので、日本語に訳せば「省電力広域ネットワーク」にあたる技術の総称だ。さまざまな技術がこのジャンルに含められるが、基本的には通信速度は数十~数百bps(キロが付かない)~1Mbps程度と遅いが、数km飛ばすことができ、端末は乾電池などで数カ月以上動作する、というのが共通する。こうした技術の中には無線基地局免許が必要なものから、自分で基地局を設置できる免許不要な帯域を使ったものまでさまざまなものがある。IIJが扱っているのはこのうち、920MHzを使用する「LoRAWAN」だ。

  • 代表的なLPWAだけでもこんなに種類がある。中にはNB-IoTのように一度商業サービス化されたが終了したものもあるなど、競争の厳しい市場となっている

IIJがLoRAWANを採用した理由は、世界中で使われており、仕様に互換性があって各社からさまざまなセンサーデバイスが登場していて、オープンなエコシステムが成立していることと、クラウドへの接続を基地局に集約すれば通信コストを削減できることを挙げていた(LoRAWANは基本的に巨大なWi-Fiのように利用できる)。

LTEにもLTE-Mのようにキャリアが主導で展開しているLPWAがあるが、端末ごとに通信コストがかかるため、トータルコストが高くなること、キャリアのエリア外である山間部などでは利用できないのが弱点となる。対してLoRAWANは基地局を太陽光発電パネルとバッテリーで賄うなど、電気や電波のないところでも運用可能であり、通信も基地局だけが行えばいいので、低コストに抑えられる。一方で、LoRAWANで喧伝されている部分については過剰な表現も多く、現場に出てみると実際とは大きく異なること、LoRAWANの強みを活かした展開が必要だとした。

  • 太陽光パネルと基地局のセットが10万円程度で設置できる。基地局は最大で十数キロ以上をカバーできるため、コストパフォーマンスは非常に高い

  • LoRAWANによる通信基盤は地域の情報化インフラとして農業以外にも活用が期待される

セッションではIIJがこれまでLoRAWAN製品を導入した事例が紹介され、農業だけでなく災害対策などにも広がっていることが明らかにされた。こうした展開に興味がある方は、IIJに問い合わせてみてはいかがだろうか。

  • これまでの実証実験で栽培された「IoT米」が過去にノベルティとして配布されたことも(筆者も持っています)