+Styleが販売を開始したおしゃれなデザインの「Punkt. MP02 New Generation」は、スマホ全盛期に登場した「電話とSMSくらいしか使えないケータイ」です。スマホライフにどっぷりに浸かっている筆者はこのケータイとどう向き合うべきか、数日使って考えてみました。
Punkt. MP02ってなに?
Punkt.(プンクト)は、スイスに本拠を置く新興家電メーカーです。世界的なデザイナーのジャスパー・モリソン氏が手がけており、時計や固定電話など、シンプルで機能的な製品を投入してきました。
そのPunkt.が2019年に発売した携帯電話「Punkt. MP02」は、いわゆるフィーチャーフォンです。使える機能は通話とSMSなど最低限で、便利なアプリもまどろっこしい通知もありません。
2022年3月、リニューアル版の「Punkt. MP02 New Generation」が発売されました。新モデルですが、外観の変化はなし。使っているチップセットなども変更がありません。税込み4万円台というちょっと攻めた価格も変わらず。カラーは定番のBlackに加えて、Blueが追加されました。
電話とSMS、それにテザリングで4万円台
Punkt. MP02で使えるのは、電話、SMS・MMS(メッセージ)という「携帯電話」としての基本機能と、モバイルWi-Fiルーター代わりに使う「テザリング」。時計、カレンダーやメモといった細々したツールはありますが、いずれもシンプルな作りになっています。ケータイなら必須のカメラすら備えていません。フィーチャーフォンという言葉の通りの「通話・SMSに特化した携帯電話」と言えるでしょう。
電話の待ち受けをしたいだけなら、低価格な携帯電話の選択肢は多く存在します。例えば、ソフトバンクのプリペイド携帯「Simply」なら、わずか6,578円で購入できます。
それに対して、Punkt. MP02 New Generationの価格は、新色のBlueが47,380円、前世代モデルとまったく同じデザインのBlackは44,480円。機能と価格だけで比較すると、とても割高なように感じるかもしれません。
Punkt. MP02シリーズが他の携帯と一線を画しているのは、デザインに対するこだわりです。
例えば外観は、表から見ると「ザ・携帯」なテンキー配置ですが、裏返すと台形と三角形を組み合わせた立体形状になっていることが分かります。重さ100gの小さなボディーは、ジャケットの内ポケットにもスマートに収まるコンパクトさながら、手で握ってもしっかりとフィット。机に置いた時の佇まいも良さも魅力です。
“脱スマホ依存”に有用
スマホとPunkt.を2台持ちして、通話用携帯にするのが王道の使い方ですが、“スマホとの付き合い方を見直す”ために、Punkt.を使うのもおすすめです。筆者は、スマホのSIMをPunkt.に差し替えて一日過ごしてみることにしました。
現代人の多くと同じように、筆者の日常はスマホとともにあります。朝起きたらスマホのアラームを止めて、SmartNewsで新しいニュースをだらだらチェック。寝起きの歯磨きや朝食はNHKプラスの動画とともに。LINEやGmailの新着通知をチェックするついでにTwitterを流し見。夜はYouTubeやNetFlix、Amazon プライムビデオを観ながらまったり夕食。スマホのKindleで読書しながら寝落ち……。
「最近はちょっとスマホに振り回されすぎかな?」と思うこともしばしば。特に、TwitterやSmartNewsはだらだらと見つづけて、気づいたら数時間経ってしまうというくらい依存気味でした。スマートフォンで使用時間制限を設定しても、意思の弱い筆者は「制限を無視」のボタンを無意識に押すようになってしまい、スマホ依存は深まるばかり。
そこで、Punkt. MP02 New GenerationにメインのSIMを差し替えて、あえてスマホは置いて1日過ごしてみることにしました。連絡は電話かSMSのみ。メールやメッセージの確認は、パソコンを開いてテザリングを使います。一眼レフカメラとSuica、財布を忘れずに。
スマホを持たずに外に出るとすぐ、自分がいかにスマホに囚われていたのかに気づきました。Twitterで新着の時事ネタをチェックしようとしても、Punkt.だけではWebサイトを開けません。無意識に手の中で携帯を握りしめながら、街の看板や景観を観察する自分に気づきました。
パソコンを開いて仕事をしてみると、いつもより没頭できるように感じました。5分に一回はスマホを手に取って新着通知を確認しつつ、ついでにTwitterを見てしまう悪癖がなくなったからかもしれません。もちろん、パソコン上でSNSを見ることはできますが、テザリングでつなぐという所作を経ることで、脱線を防げているという実感がありました。
急ぎの連絡はPunkt.の電話機能でこなせます。やや困るのはLINEの通話ができないことですが、メッセージを見るだけならPC版のLINEも使えます。ただ、スマホを置いて出かけてみたら、即レスする必要がある連絡は案外多くないことにも気づきました。
Punkt.だけでは、ホットなニュースや友人のつぶやき、かわいい動物の写真を見ることはできません。その分、自分がスマホにいかに頼って生活しているかを実感させられました。単に通話用として使うだけでなく、1週間に1日くらいPunkt.だけを手に取って「スマホなしで過ごす日」を作ると、スマホとの付き合い方を見直すきっかけになりそうです。
気に入った&気になるポイント
ここからは、Punkt. MP02 New Generationの機能をおさらいしつつ、気に入ったポイント&気になるポイントを紹介します。
デザインを重視したケータイだけあって、その質感や取り回しの良さは好印象でした。操作画面はモノトーンで統一されており、動きはなめらか。操作体系はいわゆるガラケーとやや異なり、独特な部分もありますが、各ボタンの動きを一通り把握できればすぐ慣れるでしょう。
テンキーの反応はカチッカチッと心地良く、キーとキーの間の距離も十分確保されているため、押し間違えることはありません。
モバイル通信を使う機能は電話、SMS・MMS、そしてテザリングです。NTTドコモ網、ソフトバンク網をサポートし、auと楽天モバイルは非対応となっている点は注意が必要です。SIM形状はnanoSIMで、大きく扱いやすいSIMピンが付属します。
通話はVoLTE対応。大きめの受話スピーカーを備えており、相手の声がクリアに聞こえます。Bluetoothイヤホンやアダプター経由で3.5mmジャック対応の有線イヤホンも使えます。
テザリングはWi-Fi、Bluetooth経由でPCやスマホに接続可能。2022年発売の“New Generation”モデルで追加された機能として、新たにUSBケーブル経由でのテザリングに対応しました。テザリング時の実効通信速度は、下り数十Mbps程度。スマホやモバイルPCと接続しても、Webブラウジング程度なら遅いと感じることなく利用できました。
Punkt. MP02のOSは、機能をそぎ落とした「アポストロフィー(APHY 1.0)」を搭載。Android(AOSP)をベースとしていますが、ほとんどの機能が削られており、画面表示上にはほとんど面影が残っていません。電源ボタンが「終話キー」ではなく、本体右上の専用ボタンとなっている点は、Android譲りの要素でしょうか。
チップセットはSnapdragon 210で、メモリー(RAM)は2GBとスマートフォンならエントリーモデルのスペックですが、動作は軽快です。
Androidベースではありますが、単体ではWebサイトを表示できません。メールに記載されたURLをクリックしても、「メモに保存」という選択肢しか選べないという潔さです。SNS依存をきっぱり断つには最適な仕様です。
バッテリーの持ちは、連続待受時間が最大180時間、連続通話時間が最大4時間10分とされています。通話だけで使うなら、1日に一度充電すれば十分持つという印象でした。ただし、テザリング使用時は3時間ほどで電池を使い果たしてしまうため、パソコンにつないでずっと作業をするなら、有線テザリングで充電しながら使うと良いでしょう。
シンプルすぎる標準ツール、reCAPTCHAにハマる
ツール群はカレンダー、時計(世界時計、アラーム、タイマー、ストップウォッチ)、メモ、計算機を搭載。スマホでも標準搭載されているようなアプリたちですが、それよりもずっとシンプルです。
まず、カレンダーはスケジュールを追加する機能がありません。それどころか、祝日表示すらありません! 何月何日が何曜日なのかを確認できるだけです。スマホが無くて自分の誕生日が火曜日だったとか、はたまたワーテルローの戦いがあったのは何曜日だったのかを調べるくらいはできそうです(日付を覚えていれば)。
時計アプリも説明不要なシンプルさ。アラーム音と着信音で使えるメロディーは17種類で、Punkt.のモチーフになっている鳩の鳴き声や小鳥のさえずり、ベル音などが収録されています。
メモアプリは、Punkt.の本体上でメモを取って後から確認できるというもので、メモの内容をSMSで送信したり、リマインダーとして通知したりできます。
日本語入力は、ガラケー型のテンキー入力を経験していれば、特に戸惑うことはないでしょう。そもそも、Punkt.で入力するのはSMSで送れる程度の短文くらいなので、文字入力をする機会も限られています。ただし、ガラケーで「改行」を入力していた「#」(シャープ)キーが日本語・英語・数字の切り替えに割り当てられている点はやや独特な仕様といえます。もし、メモアプリで長文のケータイ小説を書こうという人には不便に感じるかもしれません。
このほか、Signalというメッセージアプリにも対応しています。試しに登録してみようとしたところ、reCAPTCHA(ロボットでないことを確認する機能)の画面が表示されて登録できない状況でした……。Signal初期設定時のリキャプチャ認証の問題についてメーカーに確認したところ、「今後のアップデートで改善する予定」との回答が得られました。なお、Signalをどうしても使いたい場合は、Bluetoothマウスなどを接続するとリキャプチャ認証を通過できるとしています。
待ち受けやテザリングを中心に使っていて不便に感じたことはありませんが、連絡先の登録はやや面倒でした。Punkt. MP02はvCard形式(.vcfファイル)の連絡先の取り込みをサポートしており、パソコンと有線接続して本体ストレージにファイルを転送すれば、複数の連絡先をまとめて取り込むことが可能です。iPhoneやAndroidの場合、クラウド経由で複数端末と同期できますが、そういった機能はありません。
また、取り込んだ連絡先も、氏名と電話番号、メールアドレスのみが表示される仕様となっていました。筆者はPunkt. MP02に名刺管理アプリのEightに登録した1,000件超の連絡先をvCard形式で取り込んでみましたが、「会社名」などの情報がごっそり抜けているため、お目当ての連絡先を探すのに苦労しました。連絡先周りの使い勝手は、今後のアップデートで改善してほしいところです。
なお、「New Generation」と銘打ってはいますが、外観や主要部品の構成は従来モデルのPunkt. MP02とほとんど変わりません。新色のBlueはともかく、Blackなら前世代モデルとまったく見分けはつかないでしょう。強化点としては、(1)OS更新による応答性の向上、(2)USB Type-Cケーブルでの有線テザリングへの対応が挙げられます。また、BlackBerry社のセキュリティ機能は新モデルでは非搭載となっています。
それ以外のネックとしては価格の高さが挙げられますが、モノとしての質感の良さや通話専用機としての堅実な性能を踏まえれば、買って損をした気分にはならないでしょう。スマホ依存の現代人が集中力を取り戻すために使うなら、価格以上の実りを得られるはずです。
【「Punkt. MP02 New Generation」の主な仕様】
- 大きさ:117×52.3×14.4mm
- 重さ:100g
- ディスプレイ:2インチ TFT液晶
- 解像度:320×240ドット(QVGA)
- モバイル通信:4G LTE/3G(NTTドコモ網、ソフトバンク網に対応)
- SIM:nanoSIM
- Wi-Fi:IEEE802.11 b/g/n(2.4GHzのみ)
- Bluetooth:Bluetooth 4.2 A2DP
- 外部端子:USB Type-C(USB 2.0)
- バッテリー容量:1280mAh
- 連続待受時間:180時間
- 連続通話時間:4.2時間
- 充電時間:2.5時間
- 耐久性:IP52相当(防じん、防滴)