本イベント会場にて、「GATE」を主催した福岡eスポーツ協会の会長・中島賢一さんにインタビューを行いました。

「GATE」をヒルトン福岡シーホークで開催した経緯や、福岡eスポーツ協会のこれまでの取り組み、そして福岡市が4,000万円の予算を計上する夏に開催予定の「福岡eスポーツフェスタ(仮称)」についてお話いただきました。

  • GATE

    福岡eスポーツ協会 会長の中島賢一さん。写真は、ゲーム配信を行う中島さんの席

ラグジュアリーな会場で、年に1回の特別な体験を

――まず最初に、簡単な自己紹介をお願いいたします。

中島賢一さん(以下、中島):福岡eスポーツ協会 会長の中島です。現在は、NTT西日本でソーシャルプロデューサーを務めております。社会課題を「楽しい」で解決するためにゲームを活用するのが仕事で、メインに扱っているのはeスポーツです。

以前は福岡市役所にいて、その前は福岡県庁にいました。さらにその前は、東京のIT業界で働いていたんです。そのころは便利なサービスを作って、とにかくお金を稼ぐことを考えていました。でも、便利なものだけを作っていても社会は良くならないと感じて、福岡県庁に転職したという経緯があります。

私はもともとゲームが大好きなんですよ。今50歳ですが、7歳くらいからずっとゲームをしています。ゲーム歴は、ファミコンよりも前のインベーダーゲームの時代から。PCゲームも含め、あらゆるゲームハードで、ジャンル問わずさまざまなゲームをプレイしてきました。

福岡市役所にいたころ、『ポケモンGO』の第1世代を17日でコンプリートして、街歩きとARゲームの関係性についてセミナーを開いたところ、大きな反響をいただきました。プライベートでは、子ども向けにカードゲーム『デュエル・マスターズ』の大会を16年ほど開いていて、家には85万枚くらいのカードがあります。

――「GATE」の会場が、高級ホテルのヒルトン福岡シーホークだと発表されたときは驚きました。この会場で開催された経緯を教えていただけますか?

中島:まず1つに、こうしたLANパーティーをイベントホールではなく、ラグジュアリーなホテルで行いたいと思っていました。「こんなところでゲームができるんだ」という、年に1回の特別なご褒美としての体験を味わってもらえるような、素敵な会場で開催したいと考えていたんです。

年に1回の特別な体験を実現するために、私たちはただ単に会場を貸してもらうのではなく、一緒にイベントを作り上げる仲間を探していました。そうしたなか、ヒルトンさんが私たちの考えに賛同してくださったことから、今回の開催へとつながりました。

ヒルトンさんは、ラグジュアリーな会場の提供と同時に、イベント入場料と宿泊をセットにした特別プランの販売も行い、ビジネスの機会にもつなげていただいております。

――今回のイベントについて、来場者やブース出展企業からの反応はいかがですか?

中島:今まで福岡でLANパーティーが開催されたことがなかったので、特にBYOC席で参加されている方々からは、「待ってました!」という反応をいただいていますね。

企業の方々からは、昨今イベントの自粛が続いている状況ということもあり、「久々にこうしたオフラインの場があってうれしい」という声が多いです。ゲーム好きな人たちが集まる楽しい空間なので、来場者の皆さんがすごく温かく受け入れてくださるところが良いとおっしゃっていただいています。

――コロナ禍での開催にあたって、判断が難しい部分もあったのではないかと思います。

中島:私たち福岡eスポーツ協会は、eスポーツを通じて人と人とのコミュニケーションをより豊かにすること、そしてeスポーツを新しいスポーツ文化として普及させることを理念として活動しています。

eスポーツは体験を共有するコミュニケーションツールでもありますから、オンラインだけでやっていては、どうしても半端なものになってしまいます。もう2年もコロナ禍が続いている状況で、ただ自粛するだけではなく、工夫してやれることを示したいという思いもありました。

もちろん万全な感染対策は当たり前です。さらに、今回はゲーマーが使い慣れているDiscordを使って、できるだけ近接した距離での会話を減らすようにしました。Discordに来場者サーバーを設けることで、事務局の連絡や来場者の質問などに、テキストチャットでのやり取りを積極的に活用いただくようにしています。

産学官民の幅広い人々が関わる、福岡eスポーツ協会

――今回のイベントを主催した、福岡eスポーツ協会について教えてください。

中島:私が福岡市役所にいた2018年に、福岡eスポーツ協会を立ち上げました。バラバラに活動していたゲーマーたちを取りまとめるような形で、先ほどお話ししたような理念を掲げて活動をスタートしています。

福岡eスポーツ協会の理事には福岡市も参画していて、イベント初日には高島市長からのメッセージをいただきました。福岡eスポーツ協会のメンバーには、九州電力グループや西日本新聞社などの福岡を代表する企業をはじめ、大学や高校、専門学校も参加しています。

このように福岡eスポーツ協会は、産学官民の幅広い人々が携わっている団体です。決してゲームでイベントをやって儲けようという団体ではなく、社会の役に立つ組織でなければならないと考えています。

――福岡eスポーツ協会では、これまでにどのような取り組みをされていますか?

中島:2021年は、モバイルゲームの『ブロスタ』で、九州ナンバーワンを決める地域密着型の大会「Q1スーパートーナメント」を開催しました。

チーム代表者が九州にゆかりがあればエントリー可能というルールで、100チーム300人ものプレイヤーが出場してくださいました。各自治体にもお声掛けさせていただいて、地元企業や市役所、学校などから、普段あまりゲームをしない方もたくさん参加されて、ものすごく盛り上がったんです。

コロナの影響で試合はオンラインで実施したのですが、福岡県福津市にある宮地嶽神社をシンボリックプレイスとして、大会冒頭では協賛メーカーさんのスマホを奉納する約20分の神事を配信しました。そのほかにも、福津市の食べ物や地元の協賛企業の商品をPRして、視聴者向けの割引クーポン紹介などをしています。

この配信は、3,500人に視聴されました。規模は小さく感じるかもしれませんが、オフラインで開催することを考えれば、そもそも地方の神社に3,500人も入れません。オフラインとオンラインのハイブリットで、場合によっては何万人もの人が集まる空間を作れるという意味で、eスポーツ×地方の可能性を感じています。

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    「Q1スーパートーナメント」の冒頭に放送された、宮地嶽神社での神事

「Q1スーパートーナメント」決勝トーナメント 配信アーカイブ

予算4,000万「福岡eスポーツフェスタ(仮称)」開催へ

――福岡はeスポーツに関して積極的に取り組まれているイメージがありますが、これにはどういった背景があるのでしょうか?

中島:福岡は2006年に「ゲーム都市宣言」をしています。『妖怪ウォッチ』シリーズなどで知られるレベルファイブを筆頭に、ゲームのデベロッパーやパブリッシャーが、福岡にはたくさん集まっているんですね。当初は10社ほどだったのですが、ゲーム産業への厚い支援によって、今では関連企業を合わせて50社以上が集まっています。

そういった背景から、福岡ではゲームが大事な産業であるという考えが根付いていて、同様にeスポーツも受け入れられているんです。3年前には、格闘ゲームの祭典「EVO Japan 2019」を福岡で開催しました。当時は、私が福岡市役所にいましたので、誘致に携わっていた経緯があります。

――次回のイベントや、今後予定されている取り組みがあれば教えてください。

中島:今回のイベントより、さらに大規模なイベントを夏に開催します。先日、福岡市が令和4年度の予算を発表しましたが、夏に開催予定の「福岡eスポーツフェスタ(仮称)」には、4,000万円の巨大な予算が計上されています。

これは今回のイベントとは違い、福岡市が地域経済や産業振興のために開催するものですので、農業や水産業などにも波及するような、新しいスタイルのeスポーツ×産業振興のイベントになります。

ただ楽しいゲームイベントをやるのではなく、地域経済の活性化にあたって可能性を示唆できるイベントにしたいと考えています。もし福岡市の取り組みが良いものになれば、ぜひほかの地域にも、どんどん真似していただきたいですね。

――夏のイベントも楽しみにしています。中島さん、本日はありがとうございました!