ほぼすべてのベンチマークで10GB版RTX 3080超えを確認

さて、ここからはベンチマークに移ろう。比較対象として、10GB版の「GeForce RTX 3080 Founders Edition」を用意した。Resizable BARはすべて有効にした状態でテストを行なっている。テスト環境は以下のとおりだ。

【検証環境】
CPU Intel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボード MSI MPG Z690 CARBON WIFI(Intel Z690)
メモリ Corsair DOMINATOR PLATINUM RGB DDR5 CMT32GX5M2B5200C38(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2)※DDR5-4800で動作
システムSSD Western Digital WD_BLACK SN850 WDS200T1X0E(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラー Corsair iCUE H115i RGB PRO XT(簡易水冷、28cmクラス)
電源 Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OS Windows 11 Pro

まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。このテストに関しては、VBIOSをP MODEにし、GPU TweakIIアプリでOC mode、Gaming mode、Silent modeの各設定で実行している。これ以外のテストはデフォルト状態であるVBIOSをP MODE、GPU TweakIIアプリの設定をGaming modeにして実行した。

  • グラフ1: 3DMark

OC modeで10GB版RTX 3080に対してFire Strikeは約3.1%スコアアップ、Gaming modeで約2.3%のスコアアップとなった。Silent modeはブーストクロックが低くなることもあった、スコアの上昇はわずかに留まっている。

続いて実ゲームでの性能をチェックしていこう。まずは、軽めのFPSとして「レインボーシックス シージ」から。ゲーム内のベンチマーク機能を利用している。

  • グラフ2: レインボーシックス シージ

すべての解像度で10GB版RTX 3080を上回るとスペック差を考えると順当な結果と言える。ちなみに、4K解像度でもVRAMの使用料は約8.1GB。12GBのVRAMは活かし切れていない。CUDAコア数やブーストクロックなどの差がスコアに出ていると見てよいだろう。

続いて中量級のゲームとして「レインボーシックス エクストラクション」と「Apex Legends」を試す。レインボーシックス エクストラクションは解像度品質を固定100%にした上で、ゲーム内のベンチマーク機能を実行。Apex Legendsは「+fps_max unlimited」コマンドでfps上限を解除した上で、トレーニングモードで一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定した。

  • グラフ3: レインボーシックス エクストラクション

  • グラフ4: Apex Legends

どちらも順当な結果と言える。Apex LegendsのフルHD解像度のフレームレートが10GB版RTX 3080と変わらないのは、fps上限を解除しても最大300fpsまでしか出ない仕様であるため。どちらのビデオカードでもフルHD解像度ならば最高画質でもフレームレートの上限まで出せるだけの性能があるということだ。レインボーシックス エクストラクションは、レインボーシックス シージに比べるとかなり描画負荷は高くなっているが、それでも4Kかつ最高画質でも平均100fps以上を出せている。

ここからは、レイトレーシングに対応する重めのゲームを試していこう。「Forza Horizon 5」、「サイバーパンク2077」、「ファークライ6」、「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」を用意した。Forza Horizon 5はゲーム内のベンチマーク機能を利用。サイバーパンク2077はマップの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定。ファークライ6はゲーム内のベンチマーク機能を利用。ダイイングライト2 ステイ ヒューマンはバザール周辺の一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定している。

  • グラフ5: Forza Horizon 5

  • グラフ6: サイバーパンク2077

  • グラフ7: ファークライ6

  • グラフ8: ダイイングライト2 ステイ ヒューマン

どのゲームも順当に12GB版RTX 3080のほうがフレームレートが上回っている。注目はファークライ6の4K解像度だろう。高解像度テクスチャを使用した場合、10GB版RTX 3080ではVRAM不足警告が表示され、平均フレームレートは快適なプレイの目安である60fpsを下回ってしまう。その一方で12GB版RTX 3080はVRAM不足は発生せず、平均68fpsとほかの解像度に比べて大きな差が出た。ダイイングライト2 ステイ ヒューマンも4K解像度ではVRAM使用量は約10.8GBと10GBを超えた。フレームレートの差はそれほどないが、重量級ゲームの高解像度設定では、VRAMが10GBで足りないことがあるということだ。今後はもっと12GB版RTX 3080が有利になるゲームが登場するかもしれない。

高OC動作でもしっかり冷える強力クーラー

ゲームプレイ時のGPUクロックと温度の推移をチェックしていこう。サダイイングライト2 ステイ ヒューマンを10分間プレイしたときのGPUクロックと温度をモニタリングアプリの「HWiNFO64」で測定した。VBIOSと動作モードはベンチマークと同じく、「P MODE」と「Gaming mode」だ。

  • グラフ9: GPUクロックと温度の推移

さすが2.9スロット厚の大型クーラーと言える結果だ。GPU温度が上がるとクロックは若干下がるが、それでもおおむね1,845MHz~1,860MHzで動作とGaming modeのブーストクロックどおりの挙動を見せた。それでいてGPU温度はほぼ68℃前後で安定。これなら長時間のゲームプレイでもまったく不安のない温度と言える。

最後に消費電力をチェックする。ラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用してシステム全体の消費電力を測定。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spyデモモード実行時の最大値を3DMark時とした。

  • グラフ10: 消費電力

補助電源8ピン×3という仕様の高OCモデルだけあり、3DMark時で10GB版のGeForce RTX 3080 Founders Editionを3DMark時は44Wも上回った。余裕を見るなら、850W以上の電源ユニットと組み合わせて使いたいところだ。

ハイエンドGPUの新たな選択肢だが問題も

4K&高画質設定でVRAMが10GBでは足りなくなるゲームが登場している以上、VRAMを12GB搭載するRTX 3080の登場は喜ばしいことだ。ただ、GPUは半導体不足などさまざまな要因で、2021年からずっと価格が高いまま。この状況が変わる見込みがない以上、受け入れるしかないが、ROG Strix GeForce RTX 3080 OC Edition 12GBの実売価格は195,000円前後となかなかの高さだ。12GB版RTX 3080は多くが20万円前後なので、これが特別高いわけではないが、問題はRTX 3080 Tiと価格差がほとんどないこと。

GPUのグレードごとにもう少し価格差がはっきりしてくれないと、ユーザー側は選択に困ってしまうだろう。12GB版RTX 3080は性能面では文句なしに魅力的だが、脚光を浴びるにはもう少しGPUの価格が落ち着く必要があるのではないだろうか。