楽天グループは2月14日、2021年度通期/第4四半期の決算を発表した。モバイルセグメントでは、楽天回線エリアの拡大前倒しなどに伴う先行投資が大きく、営業損失は4,212億円と前年度より拡大。ただし売上収益では前年比31.9%増の2,275億円を記録しており、2022年度第2四半期以降の収益改善を見込んでいる。
売上収益は過去最高だが、先行投資などにより営業損失2,250億円を計上
楽天グループ全体の業績としては、「インターネットサービス(ECなど含む)」「フィンテック」「モバイル」の全セグメントで増収を達成しており、連結売上収益は前年比15.5%増で過去最高の1.68兆円を達成。一方で、Non-GAAP営業損失として、モバイルにおける先行投資などにより2,250億円の損失を計上している。
第4四半期における楽天グループの平均月間アクティブユーザー数は前年同期比12.2%増、2サービス以上利用するユーザーの比率は過去最高の74.7%となっており、楽天モバイルの契約後にはじめて楽天市場を利用する傾向も顕著とのことで、楽天エコシステムの成長に今後も期待できるという。
モバイルセグメントの収支は2022年第2四半期以降改善の見通し
モバイルセグメントでは、1年無料キャンペーンの適用期間が終了したユーザーからの売上貢献、デバイス売上の増加、プラットフォーム事業「楽天シンフォニー」の売上計上などにより、2021年度の売上収益は2,275億円と前年比31.9%増の大幅な増収を達成。2月時点でMNOサービス/MVNOサービスの合計契約回線数が550万回線を突破しており、順調に顧客獲得が進捗しているとする。とくに、利益貢献度合いが高く解約率の低いMNP転入の契約割合が増加していることを明るい材料として挙げている。
楽天回線エリアの4G人口カバー率が当初計画から約4年前倒しで96%に到達し、KDDIとのローミングでサービスを提供していた地域を順次楽天回線でのサービスに切り替える作業が始まっているのも2021年度のトピックだ。
一方で、営業収支面では損失が拡大。第4四半期は営業損失が前年同期比で421億円の増加となっている。これは楽天回線エリアの積極的な拡大に伴う、減価償却費やネットワーク関連費用によるものだ。この設備投資は2022年度も前年と同水準を見込んでおり、設備投資額が定常状態に落ち着くのは2023年度としている。
ただし同社では、前述の課金対象ユーザーの増加や顧客獲得の加速による売上増、KDDIとのローミング順次終了による費用減などにより、2022年第1四半期を収益の底として以降の収支改善を見込んでいる。また、2021年度に数十億ドル規模の契約を獲得している楽天シンフォニーについても、2022年度はグローバル展開へ注力するとしており、モバイルセグメントの収支改善に大きく影響しそうだ。
ローミングの切り替えによるコスト削減効果は「100億円単位ではない」
決算説明会の最後には質疑応答も行われた。
プラチナバンドの獲得についてのスタンスを問われると、「現在のミッドバンドでも知恵と工夫でカバーできていますけれど、経済効率だけでいうとプラチナバンドがあることによって3社との競争で上をいけると思っているので、そういうふうになればいいかなとは思っています」と回答。
4Gの人口カバー率が96%を超えて以降の回線エリア展開については「99%以上のところまでは自社でネットワークを整備し、それ以降の過疎地・遠隔地についてはASTでカバー……というふうに考えています」とし、キャパシティについては5Gへの移行が進むという見通しを示し、「キャパシティが必要な都市部はSub6で、駅や渋谷の交差点、スタジアムのようなところはミリ波でカバーする。その5Gのデプロイメントのコストが他社とくらべて圧倒的に安いのが楽天モバイルの特徴」と、5Gエリアの拡大によって十分なサービスを提供できるという考えを示した。
ローミングからの切り替えによるコスト削減の効果については、具体的な金額は開示しなかったものの、「かなり大きな負担になっているのは事実」といい、ローミングの終了により「(コストは)100億円単位ではない単位で減っていくと思っていただいていい」とした。