ソフトバンクは2月3日、2022年3月期 第3四半期 決算説明会を開催しました。それによれば増収減益の決算。同社の宮川潤一社長は、メディアの質問に回答する形で「ワイモバイルが好調な理由」「5G戦略」「PayPay黒字化の目処」「バルミューダフォンは取り扱って良かったのか」「従業員の賃上げについて」説明しました。

  • ソフトバンク決算

    代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏

増収減益の四半期決算、通期業績予想は過去最高益の見込み

2021年度Q3累計の売上高は4兆1,738億円で増収(前年同期比10%増)となりました。宮川社長は「LINEの子会社化などが増収の要因。流通事業をのぞいて、どの事業も増収となりました」と説明します。流通事業については2021年の特需の反動、そして半導体不足の影響を受けたとのことでした。

  • ソフトバンク決算

    売上高は4兆1,738億円で増収

  • ソフトバンク決算

    売上高セグメント別

営業利益は8,212億円で減益(同2%減)でした。法人、ヤフー、LINEで増益となったものの、コンシューマ事業で10%の減益。ただ、四半期別で見てみれば第3四半期は減益幅が縮小してきました。また、純利益は4,208億円で減益(同3%減)でした。

2021年度の通期業績予想の進捗については「営業利益、純利益とも80%以上の進捗で、8合目を超えたところ」としたうえで、「十分に達成できると思っています。過去最高益を達成できる見込みです」とアピールします。

  • ソフトバンク決算

    営業利益は8,212億円で減益

  • ソフトバンク決算

    営業利益セグメント別

  • ソフトバンク決算

    純利益は4,208億円で減益

  • ソフトバンク決算

    2021年度 第3四半期 連結業績

PayPay黒字化の目処は? バルミューダフォンは良かったの? 宮川社長が質問に回答

決算発表後には、宮川社長がメディアからの質問に答えました。以下、その様子をお伝えします。

――ワイモバイルが好調な理由を教えてください。

宮川社長:料金は990円から使えますし、テレビCMも好調で、いま来店者数も増えてきたところです。他社のプランと見比べても見劣りしないから、MNPで他キャリアから移ってくるお客さんも多い。

店舗はソフトバンクショップと併設しており、そこで相談した方が加入されている。ワイモバイルに集中しやすい環境ができています。LINEMOも少しずつ伸びていますが、ワイモバイルは“爆発”している状況です。

LINEMOの契約者数については、毎月、そこまで爆発的には増えていません。胸を張って言える数字ではない。インターネットに触れる人であれば、ワイモバイルもLINEMOも入会手続きにそれほど差はない。今後、もう少し差別化していきます。

  • ソフトバンク決算

    スマートフォン累計契約者数。ワイモバイルが大幅に伸びている

  • ソフトバンク決算

    モバイル契約の純増数

――今期の売上高が増収となった要因のひとつに、端末の販売が好調だったことを挙げていましたが、具体的にどの端末が売れたのでしょうか。

宮川社長:昨対比の表現です。昨年度はコロナの影響でショップも営業時間を制限していました。あまり端末が出なかった。そのぶん、今年は数が動いています。伸びた端末があったか、というとそんな傾向はなかった。特にiPhoneは、もう1つ前のモデルのほうが売れていました。

――5Gではどのように稼いでいくのでしょうか。

宮川社長:現在はIoTデバイス、ARやVRの技術に期待しながら、その後のメタバースなどにつないでいきたい。まだキラーアプリがない時期で、我々もネットワークを拡大中です。ソフトバンクでは今年、5Gのスタンドアローン化をスタートしました。これで、ようやく“5Gらしさ”を出したサービスが作りやすくなる。あと2~3年かければ、サービスも成熟すると思います。

――楽天モバイルの参入によって5Gの競争環境は変化すると思いますか。

宮川社長:ソフトバンクでは、4Gのインフラを人口カバー率99.99%のところまで作りました。5Gエリアの拡大はもう少し、時間がかかる。ただ4Gから5Gに切り替わるタイミングで料金値下げがあったので、5Gを新たなインフラとして整備していくと、キャリア側の負担が大きくなる。つまり今後、キャリアごとのカラー、戦略が出てくるのではないでしょうか。

5G基地局は、いま85%の人口カバー率です。およそ2万3,000局あります。春には90%まで立ち上げていきます。ある程度のボリューム感で5Gエリアを仕上げていけば、4Gと5Gの間を行ったりきたりしてつながりにくくなってしまう問題も解決できる。今年度と来年度で、まずはしっかりやっていきます。

最近はWi-Fi 6が登場し、Wi-Fi 7の話も出てきましたが、この数年間は、インドアの莫大なトラフィックをWi-Fi、5G、どちらに寄せるべきか、また自分たちが本当にやりたいネットワークサービスが何なのか、議論しています。10年後の通信を考えて、いまどんな都市計画をすべきか、収益性も加味しながら戦略を立てているところです。

――2022年度の設備投資の規模感を教えてください。

宮川社長:今年度と、さほど変わらない程度を見込みたい。5Gの基礎をつくる基地局数は、日本全国で最低でも5万局は必要。5Gのトラフィック増加にあわせて、トラフィックを分散させるために基地局をつくることもある。ただバランスを見極めながら、収益が崩れないように進めていきます。

――2021年10月から手数料を有料化し、売上が改善したPayPayの黒字化の目処について教えてください。

宮川社長:PayPayはソフトバンクとは別会社なので、我々が理解している範囲内での回答になりますが、手数料収入で10月から収益性が高まりました。(ユーザー数を増やすための)お祭りを続けるのか、という趣旨もご質問に含まれていると理解しましたが、まだPayPayは伸び盛り。4,500万ユーザーでとどまるサービスではないと考えています。伸ばせると感じているうちは、獲得費を投入しながら、もうちょっと成長を楽しみたい。もうひと暴れさせてほしいと思っています。

いつかコスト効率が悪くなるときがくる。どこで獲得費をしぼって黒字化するか。それが6,000万ユーザーに到達したときなのか、7,000万なのか分かりませんが、そこで初めて違う展開がはじまります。

現在は、私たちが満足できる状態。やれるところまでやりたい。国内には、現金しか使わないユーザーがいることも理解しています。ただ日本国内のQRコード決済の割合を見てみると(諸外国と比較して)まだ伸ばせる余地が大いにある。それを見極めながら、我々の最終ゴールを見定めたい。日本のマーケットのなかで、QRコードをいかに使ってもらえるか。いかに魅力を伝えてユーザー数を増やしていけるか、見ていきます。

また、PayPayはスーパーアプリとして、あらゆる事業体のコア事業に育てたい。さまざまな金融事業がPayPayを中心としたプランニングのなかに入っており、その相乗効果で急加速した成長を期待しています。

  • ソフトバンク決算

    PayPay登録ユーザー数は4,500万人超に到達

  • ソフトバンク決算

    決済取扱高(Q3累計)は3.9兆円となった

――バルミューダフォンを取り扱った理由を教えてください。

宮川社長:これまで家電を見てきて、非常にユニークなメーカーさんだと好意的に感じていました。新たなデザインのスマートフォンで勝負してみたい、というお話を聞いたときは、おもしろいんじゃないかと思った。iPhoneも独占販売することでソフトバンクの形ができました。今回も、独占販売がうまく講じればいいと思っていた。日本のメーカーから「スマホ業界でチャレンジしたい」と言われれば、是非ともご支援したい。

取り扱って良かったと思います。質問の趣旨も理解しますが、こういうことは、始めなければ次につながらない。良かった、という答えにさせてください。

――従業員の賃上げについて教えてください。

宮川社長:いま、これまで本業にしてきた通信事業の売上が縮小し、ほかの事業で売上を出しています。会社の大半を占める通信部門ですが、ここの賃上げをどうするか。社内ではいま、従業員を新たに立ち上げた新規産業にシフトする動きもあります。PayPayにも、たくさんのソフトバンクの社員が異動しました。第2、第3のPayPayのような事業もどんどん立ち上げていく。当然、企業の成長のなかではインセンティブの考え方もあり、社員の報酬、給料については重視しています。

いま役員はボーナスを株でもらっていますが、ある程度の社員層のところまで給料の代わりに株でお渡しすることも、これからトライしていきたい。新株を発行するのではなく、市場から株を買って社員に渡します。そんなところですが、賃上げについては前向きにやっていきたい。トータルで見ると賃上げになっている、ということです。ただ支払い方法については、模索していきたい。