現在開発が進められているiPhone用の次期OS「iOS 15.4」で、マスクを装着したままFace IDでのロック解除がいよいよ可能になります。現在も、Apple Watchがあればマスク装着時もFace IDでロック解除できますが、ついに“Apple Watch縛り”がなくなります。対象機種がiPhone 12シリーズとiPhone 13シリーズに限られるのが残念ですが、多くの人にとってロック解除のストレスが大幅に軽減される魅力的なアップデートとなりそうです。

  • iPhone用の次期OS「iOS 15.4」で、Face IDでのロック解除がマスクを装着したままできるように! Apple Watchを装着していなくてもよく、iPhoneユーザー待望のアップデートとなりそうだ。今回は、正式リリース前のパブリックベータ版を用いて試用した

iOS 15.4の正式リリースはまだ先になりますが、今回はパブリックベータ版を用いてFace IDの進化や実用性をひと足早くチェックしてみました。今回の記事は、取材に基づく特別な許可を得たうえで、iOS 15.4をインストールしたiPhoneの画面を掲載しています。今後リリースされる正式版とは画面や内容が異なる可能性もあります。

目や目の周辺の特徴を利用し、マスク装着時も個人を認証

Face IDは、iPhone前面のTrue Depthカメラで顔の形や目、鼻、口などのパーツの特徴を立体的にスキャンし、ユーザーを認証してロック解除をしています。しかし、マスクで鼻や口が隠れてしまうことで情報が欠け、マスク装着時はFace IDでのロック解除が難しくなっていたわけです。

この課題を解消すべく、iPhoneとペアリングしたApple Watchをすぐ近くで検出した場合、「Face IDでロック解除しようとしたのが本人だ」と判断し、iPhoneのロックを解除する仕組みを2021年4月公開のiOS 14.5で搭載。マスクを装着したままでもロック解除できるようになりました。しかし、Apple Watchが必須となるため、持っていない人には恩恵がもたらされませんでした。

現在開発中のiOS 15.4では、マスクを装着している時でも露出している目や目の周辺の特徴を細かくチェックし、その情報を利用して認証を行う仕組みに改良。Apple Watchがなくても、マスクをしたままでFace IDによるロック解除ができるようになりました。

  • iOS 14.5では、設定アプリの「Face IDとパスコード」の項目に「マスク着用時にFace IDを使用」の項目が追加される

  • 「マスク着用時にFace IDを使用」の項目を有効にすると、説明と確認の画面が登場。目のまわりの領域を認証に利用する、と明記されている

この変更を受け、Face ID用の顔登録の作業が変わっています。これまでは、マスクを外した状態で顔をぐるぐる回して2回続けて顔を登録すれば完了しましたが、iOS 15.4ではメガネをかけている人は「メガネを外した状態」を追加した計3パターンの登録が求められるようになりました。マスク装着時に失われる鼻や口の情報を補うべく、目の周辺の情報をより細かく集めるようになったことがうかがえます。ちなみに、マスクを装着している状態の顔は登録する必要がありません。

  • 顔登録の作業は最大3回実行する。まずは通常の顔登録(左)で、2回目の顔登録も実行(右)。メガネをかけている場合は、メガネを外した状態で3回目の登録も済ませる必要がある

ロック解除はわずかに時間がかかる傾向も

iOS 15.4のパブリックベータ版をiPhone 13に導入し、新しいFace IDの設定を済ませてマスクを着けた状態でのロック解除を試してみました。Apple Watchは外しています。

マスクは、一般的な白い不織布のマスク、グレーの不織布マスク、布マスクなど、どれでも問題なくロック解除できました。ただ、マスク装着時はロック解除されるまで最大1秒ほど待たされる場合がありました。鼻や口の情報が得られない分、目の周辺の情報をより厳密にチェックしているためとみられます。目を薄目にするなどほとんど閉じた状態にしたり、斜め方向を向いた場合はロックが解除されず、目の特徴をしっかり見ていることがうかがえました。5回連続で認証に失敗した場合は、パスコードの入力が求められます。

興味深かったのが、Apple Watchを併用した場合、よりスムーズにロック解除ができること。メガネが汚れていたりしてFace IDの認証がうまくいかなかった場合、これまで通りの「Apple Watchが至近距離にある場合はiPhoneをロック解除する」の機能が働き、Apple Watchがカチャッと鳴ってiPhoneのロックが解除されます。Apple Watchを持っている人のアドバンテージは健在といえます。

  • Apple Watchを装着していれば、Face IDの認証がうまくいかなかった場合でもApple Watch経由でスマートにロック解除できる

カメラやチップの性能が求められるので、iPhone 11以前の機種は非対応

注意したいのが、マスクを装着した状態のロック解除機能はiPhone 12シリーズとiPhone 13シリーズでしか利用できないこと。目の情報をもとに個人を正確に認証してセキュリティを確保するためには、True Depthカメラやチップ(A14 Bionic、A15 Bionic)の性能が求められるようで、iPhone 11シリーズ以前の機種は対象外になったとしています。

「マスクではFace IDが使えなくて不便だから」と、Touch IDを搭載するiPhone SE(第2世代)や中古のiPhone 8を求める人は少なくありませんが、iOS 15.4の登場でその流れに変化が見られるのは間違いなさそうです。Face IDは、アプリの購入やApple Payなどロック解除以外でも使われるので、iPhoneライフが格段に便利になります。iOS 15.4の正式リリースの時期は明らかにされていませんが、ちょうど日本の新生活準備のタイミングと重なる可能性が高そう。新生活のタイミングでiPhone 13シリーズに買い替える動きが活発になるかもしれません。

  • マスクを装着した状態のロック解除に対応するのは、iPhone 13シリーズ(左)とiPhone 12シリーズ(右)だけ。新OSのリリースで、これらの機種への買い替え機運が高まりそうだ