10月に富士フイルムが発表した「instax Link WIDE」は、従来モデルから大幅に印刷エリアが大きくなった点が特徴のチェキプリンターです。スマートフォンなどとBluetoothで接続してチェキプリントを行えるという製品で、撮影機能を省いて印刷機能に特化し、小型化に成功しているところがポイント。2021年代に楽しむチェキプリントがどういうものか気になったので、製品をお借りして試してみました。
チェキプリンターって何?
そもそもチェキとは、かなりざっくり説明するとプリント機能付きカメラということになるでしょうか。撮影するとカメラに装填した専用印画紙(富士フイルムではinstaxと呼称)に直接露光され、撮影結果が即座に紙で得られる点が大きな特徴です。フィルムカメラとは異なり、ネガやポジが残らず、プリントは撮ったその時だけのワンオフ品。いわゆる「生写真」の原型とも言えるものです。
また、プリント結果で得られる独特な風合いも大きなポイント。薬剤を封入した専用印画紙に露光するという現像プロセスを経ているため、インクジェットやフィルム現像とはひと味違う特徴的な絵になります。印画紙には薬剤封入用に広めの枠があるため、これもまた額縁のようなアクセントになるというわけ。
カメラ業界に訪れた大きなデジタル化の波に飲まれ、一時期は大きく販売が落ち込んだチェキ。しかしインターネットやSNSが発展するにつれ、逆に“一期一会”なチェキが再び脚光を浴びるようになりました。個性あふれる独特な風合いを備える点も強みになり、なんとグローバル累計販売台数は5,000万台を超えたとか(IR情報より)。富士フイルムのカメラと言えばミラーレス一眼を想像しがちですが、実はイメージング領域における売上のうちかなりの大部分を占めています。
この旺盛な需要に対し、富士フイルムではチェキの製品ラインナップを大幅に拡充して対応しています。今は印刷面のサイズごとにinstax mini シリーズ、instax SQUARE シリーズ、instax WIDE シリーズの3つを展開中。「鬼滅の刃コラボモデル」や、プロモーションに広瀬すずさんを起用するなど新規ファンの取り込みにも攻勢をかけています。
そこで今回紹介するのが、さらにコンパクトで軽量なボディを実現するべく、カメラ機能を大胆に省略したプリント専業モデルです。昨今のスマートフォンには充実した撮影機能が備わっていることが多いので、カメラはスマートフォンに分業。印刷専用機としてはベーシックなサイズの「instax mini Link」と、大きくなった「instax WIDE Link」をラインナップしており、今回取り上げるのは大きい方の後者となっています。
本体は操作部がほぼないシンプルなデザイン
前置きが長くなってしまいましたが、外観から見ていきましょう。デザインはとてもシンプル。ボディ中央に電源ボタンがあり、背面には印画紙装填用の開口部を備えます。バッテリーを内蔵していますが、開封したらまず満充電しましょう。給電は底部のUSB microB端子から行うようになっており、満充電までは80~100分前後。お決まりなので注文をつけておきますが、ぜひここはUSB Type-Cにしておいてほしかったところです。
印画紙「instax WIDE」の装填はとてもかんたん。背面をぱかりと開き、黄色い線と合うように入れるだけ。ふたを閉めると、自動で1枚目を引き出してプリントできるように待ち受けてくれます。なお、背面の開口部は使い切る前に開けてしまわないように気をつけましょう。一度感光してしまうとまともに使えなくなってしまいます。
また、同梱のスタンドで縦置きも可能です。デスクや引き出しの上など、ちょっとしたスペースに立てておくようなスタイルを想定しているとのこと。単純に置き場所が減るので便利だと思いました。
プリントは専用アプリ「Link WIDE」から
印刷には専用アプリ「Link WIDE」を使います。製品パッケージ外装にあったQRコードをスマートフォンで読み取り、App Store / Google Playからインストールしましょう。今回はiOS 15.1のiPhone 12を用いました。Bluetoothの接続を含む初期設定はすべてアプリから行えるので、何も複雑な操作は必要ありません。Bluetoothでペアリングを完了できたら、ストレージへのアクセス権限などを許可するだけでした。
アプリの操作性もとてもシンプルで、ぱっと見てわかりやすく直感的。画像の編集やコラージュの設定もかんたんに行えます。あれこれ触ってみてオススメだと感じたのは、画像編集の際に「自動」を押すことで、チェキプリントに向く適切なコントラストに調整してくれるところ。ほぼ必ず毎回使いました。
作例として、横浜に出かけていた日の写真をいくつかプリントしてみました。発色はかなりリッチで、特徴的なチェキの風合いも相まってかなり印象的。チェキといえばコンパクトなプリントが特徴ですが、「WIDE」サイズなら横向きの写真も十分見栄えがするように思います。
1つだけ気になった点を上げるとすれば、プリント中の動作音が若干大きく感じた点でしょうか。プリント中は低めの振動音がそれなりの音量で発生するので、静かなカフェなどで使うのは少し難しそう。あまり聞き慣れない動作音がするので、周囲に「何の音だろう」と思わせてしまうのも要注意です。
番外編 ゲームのワンシーンをチェキプリントしてみたい!
上述の通り、当初はカメラと不可分な存在として登場したチェキ。しかしプリンターだけを独立させたことで、写真ではないさまざまな画像データを取り扱う「プリンター」としての側面も大きく引き立つことになりました。これに目をつけたユーザーによって、インターネット上ではゲームのスクリーンショットなどをチェキプリントする楽しみ方も大きく広がることに。
富士フイルムがこれを意識したのかは不明ですが、小型モデルではNintendo Switchとの大々的なコラボレーションも実施されました。Nintendo Switchで遊んださまざまなシーンをチェキプリントできるというもので、大きくピカチュウがあしらわれたシリコンケース付きモデルが販売されています。
今回筆者がチェキプリントを借りてみたのも、この「ゲーム画面のチェキプリント」をやりたかったからというのが偽らざる本音。ちょうどつい先日サービスが正式に始まった『バトルフィールド 2042』を遊んでいたので、適当な場面でスクリーンショットを撮影。iPhoneに転送し、instax Link WIDEでプリントしてみました。
洗練された戦闘画面のGUIがチェキプリントになった途端、えも言われぬ強烈なギャップが発生。「実在のものが写るチェキ」という先入観と「現実ではないゲーム画面」が衝突することで、独自の新しい表現になっています。今回はやむを得ず手持ちの乱暴なFPSゲームで試しましたが、もしNintendo Switchを持っていれば、穏やかなゲームプレイを楽しめる『あつまれ どうぶつの森』で試してみたかったな…と思いました。
カメラ好きでなくとも欲しいデバイス
チェキが持つ強力な個性を備え、プリント機能だけを独立させて製品化したinstax Link WIDE。スリムな外装と手に取りやすい価格を実現しており、使っていく中でとても魅力的な製品だと感じました。やはり印画紙のランニングコストはそれなりにかかりますが(10枚入りで実売1,600円前後)、1枚あたりの重みを感じるにあたっては許せるレベル。お金がそれなりに掛かるからこそ、プリントしたいカットをしっかり選び、大切に飾る楽しさが生まれるものだと思えました。
今回紹介したinstax Link WIDEは、実売16,000円前後(編集部調べ、記事制作時点)で好評販売中。デジタルカメラしか触ったことがない人なら、きっと写真1枚の価値を再発見する新鮮さを楽しめるはずです。