日本科学未来館(東京都江東区)にて12月4日、小惑星探査機「はやぶさ2」の帰還カプセルと小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプルが公開される。カプセルとサンプルの同時公開はこれが初めて。サンプルの大きさは2mmほどで、2粒を見ることができる。

前日の12月3日には報道向けの内覧会が開催され、関係者が見どころなどを紹介した。

  • サンプルは密閉容器の中にある。肉眼でも見えるサイズだが、拡大鏡が用意されていた

    サンプルは密閉容器の中にある。肉眼でも見えるサイズだが、拡大鏡が用意されていた

はやぶさ2の地球帰還からまもなく1年。オーストラリアで帰還カプセルが見つかったときの興奮はまだ記憶に新しいが、その中に入っていた貴重なサンプルが今回、東日本で初めて一般向けに公開される。展示されるのは、A室とC室のサンプルが1粒ずつ。それぞれ、直径は2.2mmと2.1mmで、色はどちらも真っ黒だ。

  • 今回公開されるサンプル。2回のタッチダウンのサンプルが同時に見られる

    今回公開されるサンプル。2回のタッチダウンのサンプルが同時に見られる

リュウグウのサンプルは、フェーズ2キュレーションが行われている岡山県と高知県で公開されたことがあるそうだが、A室/C室サンプルの同時公開はこれが初めてだという。また、カプセルとサンプルの同時公開も初となる。

日本科学未来館の高木啓伸副館長は、「日本科学未来館は、世界で一番アクセシブルなミュージアムを目指しており、今回はその一環として、触れる模型も用意した。視覚に障害を持っている方もぜひご来館いただきたい」と挨拶。

「今回の展示で、はやぶさ2の偉業とスケールを肌で感じてもらえれば」と期待した。

  • 日本科学未来館の高木啓伸副館長。手に持っているのは、3Dプリンタで作成した模型だ

    日本科学未来館の高木啓伸副館長。手に持っているのは、3Dプリンタで作成した模型だ

JAXA宇宙科学研究所の藤本正樹副所長は、「ほんの3年前までは小惑星の表面にあったものが、今ここにある。そのストーリーを感じて欲しい」とコメント。「これは普通の小石にしか見えないが、地球の水や有機物や生命の起源に関する情報がぎっしりと詰まった小石。ぜひじっくり見て欲しい」とアピールした。

  • JAXA宇宙科学研究所の藤本正樹副所長

    JAXA宇宙科学研究所の藤本正樹副所長

展示会場は、(1)プロローグ、(2)はやぶさ2のミッション、(3)帰還カプセル、(4)リュウグウサンプル分析、(5)エピローグという5エリアで構成。はやぶさ2について詳しくない人でも、ミッションの目的、科学的な成果、工学的な難しさ、現在進行中のキュレーションなど、一通り分かるようになっている。

今回の展示のために、同館は新たにオリジナルのパネルを12枚作成。科学コミュニケーターの松島聡子氏は、「技術的な解説もあるが、その裏側の葛藤や、どんな工夫で困難を乗り越えたのかというエピソードも伝えたかった」と説明。「詳しい人でも何かしら新しい気づきが得られることを目指したので、ぜひ多くの人に見て欲しい」とした。

  • 日本科学未来館 科学コミュニケーターの松島聡子氏

    日本科学未来館 科学コミュニケーターの松島聡子氏

はやぶさ2は2回のタッチダウンを行っており、2回目は人工クレーターを作り、そのそばからサンプルを採取した。今回展示された粒が、もともと表面にあったものなのか、それとも地下から飛び出したものなのかは、まだ分からないという。ただ、地下から出てきたサンプルかもしれないという可能性も感じながら見ると面白いだろう。

  • リュウグウサンプルの展示コーナー

    リュウグウサンプルの展示コーナー

  • 左がA室(TD1)、右がC室(TD2)のサンプル

    左がA室(TD1)、右がC室(TD2)のサンプル

  • これがA室(TD1)のサンプルだ

    これがA室(TD1)のサンプルだ

  • こちらはC室(TD2)のサンプル

    こちらはC室(TD2)のサンプル

ところで展示用のサンプルはどんな基準で決めたのか気になったので藤本氏に確認したところ、「最も普通なもの」なのだという。

科学的に特徴のあるサンプルは、最優先で分析に回される。普通でたくさんあるものなら展示用に使えるというわけだが、リュウグウで典型的な石を見られると考えれば、それはそれで興味深い。

展示の期間は12月13日(月)まで。なお土曜日と日曜日については、混雑を緩和するため、入場整理券を配布する予定とのこと。短期間の展示ではあるが、この機会にぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

特別企画『帰還一周年 「はやぶさ2」カプセル&リュウグウの"かけら" 大公開』

会期: 2021年12月4日(土)~12月13日(月) ※12月7日(火)は休館日
会場: 日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン
入場料: 常設展入館料のみ(大人630円、18歳以下210円、未就学児無料)

  • 会場は1階の企画展示ゾーン。ここから入場する

    会場は1階の企画展示ゾーン。ここから入場する

  • 最初に動画が流れている。油断するとここで泣きそうになる

    最初に動画が流れている。油断するとここで泣きそうになる

  • はやぶさ2の実物大模型も。かなり精巧に作られている

    はやぶさ2の実物大模型も。かなり精巧に作られている

  • カプセルの展示。前面ヒートシールド以外は実物だ

    カプセルの展示。前面ヒートシールド以外は実物だ

  • 個人的には、ハイパースペクトルカメラのデモが面白かった

    個人的には、ハイパースペクトルカメラのデモが面白かった

  • 肉眼では同じように見える木炭と竹炭も、簡単に識別できる

    肉眼では同じように見える木炭と竹炭も、簡単に識別できる!