カシオ計算機は11月9日、2022年3月期第2四半期の決算発表をライブ配信した。国内では新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置の発出など、さらには海外、特にASEANの感染加速による移動禁止措置などの影響で電子部品やパーツ不足が起こり、価格も高騰するなど、予想以上の影響が出た。

しかし、カシオは主力の時計事業を中心に業績を伸長、前年同期を超える実績となった。時計事業の現況と今後の展開についても紹介する。

  • G-SHOCKの「GM-2100」シリーズと、それを小振りにしたジェンダーレスモデル「GM-S2100」シリーズがキープロダクツのひとつになりそう(写真は2021冬のペアモデル「PRECIOUS HEART SELECTION 2021」から、左がGM-2100CH-1AJF、右がGM-S2100CH-1AJF)

時計事業が堅実に回復・成長

カシオの2022年3月期第2四半期実績は、売上高665億円、営業利益は62億円。利益率は9.3%を確保しており、これらはすべて前年同期を超えている。当期純利益のみ前年比73%に留まったが、これは前年に有価証券売却益48億円が計上されていたためで、そもそもあまり参考にならない。

  • 問題の多かった時期ながら、順調な実績

時計事業は相変わらずカシオの主力だ。第2四半期の売上高では前年同期比108%に対して営業利益が前年同期比102%とやや低いのは、「利益率の高い地域の売上構成比率が低下したため」としている。ASEAN地域のコロナ禍拡大による、部材メーカーの稼働制限に伴う生産への影響(メタル系部品、外装部品)が大きく、おもに中国と北米での販売に影響したという。また、中国では7月の洪水・台風の影響と8月のコロナ再燃が影響した。

  • セグメント別実績。時計事業の収益の大きさがわかる

  • 今期、カシオだけでなく世界中のメーカーを苦しめた問題

時計販売の状況を見ると、G-SHOCKはメタル、樹脂モデルともに横ばい。ただし、G-SHOCK以外(BABY-G、OCEANUS、EDIFICE、PRO TREK、SHEENなど)が伸びているのがわかる。

G-SHOCKはメタルモデルの定番「GMW-B5000」のほか、オクタゴンベゼルの「2100」シリーズ、スポーツモデルのG-SQUADが人気。また、中国では「GA-110」のメタルカバードモデル「GM-110」が大ヒットした。が、「GA-2100」「GM-2100」「GM-110」は、やはりASEANによる生産低下の影響を受けた。

  • メタルスクエアモデル「GMW-B5000」シリーズの最新作「GMW-B5000TVA-1JR

  • 時計事業を取り巻く状況

問題克服のために

ほかにも、日本国内では店舗営業時間の縮小、中国では自然災害の連続や電力不足による停電といった影響に見舞われた。こうした要因によって、人気商品の供給不足が深刻化した。

  • エリア別概況。いち早くコロナを割り切った欧州が復調を見せている

半導体や電子部品、機構部品の不足あるいは不足に伴うコストアップは、カシオが当初想定していた以上に厳しい状況だ。が、カシオはこれら問題への対応力を強化することで解決を図る考えだ。全社構造改革を推進し、さらなる経理経費の効率化を目指してリスクを吸収していくという。

  • カシオのリスク認識。問題に対してさまざまな対策を講じている

カシオはこの状況がしばらく継続すると見ている。そのため、部材メーカーの一部生産工程を他地域へ移管したり、設計変更による代替品確保なども行われている。全社はもちろん、調達関連企業を含めた覚悟と努力で状況打破とさらなる改善にのぞむ。

今後の時計事業戦略

カシオは、今後の時計事業戦略について「Gブランド売上拡大」「自社EC・直営ストア拡大戦略/G-SHOCKロイヤルファン向けサービスの拡充」「成長ポテンシャル大の中国市場へ注力」を掲げる。

  • 時計事業拡大に向けた3つの基本戦略

「Gブランド売上拡大」では、シンプル&スリムの潮流に乗った「GA-2100」などで若者への再訴求による活性化や女性ユーザーの拡大を狙う。また「MR-G」による富裕層の獲得や、「MT-G」などカーボンモデルでの独自性を強く押し出すなど、ブランドのステージを高める計画だ。アシックスとの共創を武器に、スポーツ・健康市場へのアプローチも強めていくという。

  • やはり「GM-2100」「GM-S2100」がキープロダクツとなりそうだ

「自社EC・直営ストア拡大戦略/G-SHOCKロイヤルファン向けサービスの拡充」では、自分だけのG-SHOCKが作れるオーダーサービスとして大きな話題となった「MY G-SHOCK」や、レストアサービス、G-SHOCKストアの店舗スタッフによるオンラインスタイリング提案と自社ECをつなげる仕組み「G-SNAP」を日本に続き台湾で導入するなどを挙げた。

  • MY G-SHOCKはあまりの人気で、サービス開始初期からムーブメントが品切れになった

なお「MY G-SHOCK」については、現時点での受注本数や売り上げ規模、今後の企画(モデル追加など)についてカシオに聞いたところ「回答を差し控えたい」とのことだった。

そして、カシオは「成長ポテンシャル大」と位置付け、引き続き中国市場へ注力。高級モールに出店することでブランドイメージを向上、高所得層に「MR-G」や「MT-G」の魅力をアピールするという。合わせて、ジェンダーレス戦略モデル「GM-S2100」を女性向けに拡販、G-SHOCKブランドの認知度向上を狙う。これらはオフィシャルアンバサダー「王一博」氏を活用した情報拡散、イベントなどによる話題創出とともに展開される予定だ。

  • 中国市場への注力の比重は、今後も増えていきそうだ

  • アシックスとの共創事業も順調に拡大中だ