NTTおよびNTTドコモは11月10日、2021年度第2四半期決算を発表しました。それによれば、NTTは対前年同期比で増収増益となり、当期利益は過去最高を更新。NTTドコモは数字上では増収減益となったものの「想定より良い決算」と振り返っています。

  • 井伊基之氏

    決算概況を説明するNTTドコモ代表取締役社長の井伊基之氏(中央)

増収増益のNTT

はじめにNTTの連結決算状況から。営業収益は5兆8,876億円(前年同期比1,763億円増)、営業利益は1兆93億円(同7億円増)、当期利益は6,758億円(同1,343億円増)でした。NTTの澤田社長は「収益、利益ともに想定よりも好調に推移しています。年間の増収増益の達成に向けて順調な進捗です」と評価しました。

  • 澤田純氏

    NTT代表取締役社長 社長執行役員の澤田純氏(中央)

  • 連結決算の状況

    NTTの連結決算の状況

取材陣からの「当期利益が過去最高になった背景にはドコモの子会社化があるのか」という質問に澤田社長は「(前年同期比で)1,343億円増となったうち、1,200億円ほどはドコモの取り込みによるものです」と回答。再編後の新しいドコモグループに対しては「基本に戻ってキッチリやることが大事になる。お客様ファーストを徹底してほしい」とコメントしています。

ドコモも順調さをアピール

続いてNTTドコモが決算を発表。営業収益は2兆3,162億円(前年同期比337億円増)、営業利益は4,963億円(同673億円減)でした。増収減益となりましたが、井伊社長は「これは戦略的な取り組みの結果で、想定より良い決算になりました」と説明しました。なお会計制度の特殊要因を除けば、上期の減益幅は約400億円にとどまるとのことです。

  • NTTドコモの上期決算概況

    NTTドコモの上期決算概況。井伊社長は「年間の増益に向けて順調」と説明した

増収要因としては、(昨年度はコロナ禍で制限されていた)営業活動に積極的に取り組めたために機器販売が伸びたこと、ahamoなどの料金プランが好評で端末も好調に売れたこと、金融・決済分野において収益が伸びていること――などを挙げました。

下期に向けては「しっかり増益にもっていきます。5Gのネットワーク展開は前年下期から続けてきたので、今年度下期に減益要因とはなりません。販売関連コストについても上期のようなコスト増はなくなる。DX化による販売チャネルのコストも削減できます」と井伊社長。社内計画を上回って推移しており当初の計画を上回る努力をしていきたい、と意欲的に話します。

セグメント別に見てみると、通信事業は営業収益が1兆7,980億円(前年同期比355億円増)、営業利益は3,729億円(同607億円減)。スマートライフ領域は、営業収益が5,386億円(同9億円減)、営業利益は1,234億円(同66億円減)という結果。ただ会計制度の特殊要因を除けば、スマートライフ領域は120億円の増益になるという説明です。井伊社長は「金融・決済事業を中心にして、増益の基調に転換できた。今後もこれが原動力になります」と評価しました。

  • セグメント別の実績

    セグメント別の実績

5G契約数は700万件を超えており、年間目標の1,000万件にむけて順調に推移中。しかし解約率は0.56%で、前年同期が0.46%だったことを考えると微増の状況です。これについては「私たちも(ahamo導入により)解約率はもっと下がると思っていました。実態はご覧の通りの数字。これは他社との競争が激化している、ということに尽きると思います」と説明しています。このほか、金融・決済の取り扱い高は4兆円を超えており、対前年比で大幅増を記録しました。

  • dポイント/通信関連の主なオペレーション指標。上期としては5G契約数が700万件弱となっているが、11月10日時点では700万件を超えているという。携帯電話の契約数は8,345万契約となっている

  • 金融・決済関連の主なオペレーション指標。金融・決済の取り扱い高が4兆円を超えた

顧客基盤の拡大については「多様な料金プランを導入したほか、エコノミーMVNOも開始しました。MVNOの料金サービスとdポイントを連携し、ドコモショップでも受け付けています。MVNOに関心のなかったお客様にも、新たな選択肢としてもご好評です」としました。

  • 顧客基盤の拡大

    顧客基盤の拡大

ドコモのゼロ円プランは――「ゼロ円競争に参画するつもりはありません」

このあと質疑応答に、引き続き井伊社長が対応しました。

モバイル通信サービスの収入減はahamo導入の影響なのかを聞かれると「MVNOに対する音声料金の値下げが主です」と回答。ユーザーがahamoに移行すればARPUは下がりますが、加入数の増加にもつながるのでネガティブな影響は限定的という説明でした。なお現在、ahamoはすでに200万契約を超えており「順調に増加している状況です」としています。

エコノミーMVNOについては「OCNモバイルONEをドコモショップでも取り扱うようになりました。特に60歳以上の7割以上はショップの店頭で契約しており、足元は好調です」と井伊社長。連携はまだフリービット(トーンモバイル)とNTTコミュニケーションズ(OCNモバイルONE)の2社にとどまっていますが、「ドコモが回線を提供しているMVNOのほぼ全てに声をかけている」と井伊社長。先行した2社が参加の呼び水になれば、と期待を寄せました。

競合他社がゼロ円でスタートできる料金プランに取り組んでいることについては「データ/通話ともあまり使わない方にとって、魅力的なサービスなのだろうと思います。そうした方が、楽天モバイルに転出している事例もあると認識しています」としたうえで「当社はゼロ円プランをやるつもりはありません。MVNO様との座組(エコノミーMVNO)が、そうした方にヒットするとの考え方です」と回答。ゼロ円の競争に参画するつもりはありません、と繰り返していました。