NTTドコモが2021年10月7日に発表した、新しい料金施策「エコノミーMVNO」。格安なモバイル通信サービスを提供する外部のMVNOを活用し、通信量は少ないけれど一層料金が安い料金プランを求める人に応えるサービスとなるようですが、その具体的な仕組みと、どのような人に適したサービスなのかを確認しましょう。

MVNOの低価格サービスをドコモショップでサポート

ここ最近、携帯各社による3GB以下の小容量・低価格の料金プランに関する競争が激しくなっていますが、この分野で出遅れていた最大手のNTTドコモが、2021年10月7日に打ち出したのが「エコノミーMVNO」というものになります。

これは「MVNO」と名前が付いている通り、携帯大手からネットワークを借りてモバイル通信サービスを提供しているMVNO(仮想移動体通信事業者)と、NTTドコモが連携したサービス。「格安スマホ」などの名称で知られる、低価格に強いMVNOと連携することで、小容量・低価格のサービスを持たないNTTドコモのサービスの穴を埋めようというワケです。

  • 「エコノミーMVNO」は月当たりの通信量が3GB以下の小容量で、1,000円を切るような低価格を求めるユーザーに向けたものとなる

    NTTドコモにおける「エコノミーMVNO」の位置付け。主として月当たりの通信量が3GB以下の小容量で、1,000円を切るような低価格を求めるユーザーに向けたものとなるようだ

エコノミーMVNOが従来のNTTドコモの料金プランと決定的に違っているのは、サービスの提供自体はNTTドコモではなく、MVNOがしていること。それゆえNTTドコモユーザーがエコノミーMVNOのサービスを利用したい場合、MVNOに一度契約を変える必要があります。

例えばNTTドコモの「ギガライト」契約者が、エコノミーMVNOとして連携するNTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」へ移行したい場合、NTTドコモからOCN モバイル ONEに番号ポータビリティ(MNP)で一度転出しなければなりません。同じNTTドコモが提供するオンライン専用プラン「ahamo」に移行する際はMNPでの転出手続きが必要ないので、一見するとエコノミーMVNOはかなり手間がかかる仕組みのように見えます。

ですがそこで大きなポイントとなるのがNTTドコモとの連携です。実はエコノミーMVNOの契約は全国のドコモショップですることが可能で、ショップスタッフと話しながら契約の移行を進められるのです。

またMVNOのサービスを契約してから通信ができるようにするには、一般的にSIMを挿入してAPN(Access Point Name)を設定するなど、スマートフォンに慣れていない人には非常にハードルが高い作業が求められますが、エコノミーMVNOであればそうした初期設定もドコモショップでサポートしてくれるのだそうです。

それに加えてドコモショップでは、エコノミーMVNOのSIMとNTTドコモが販売するiPhoneなどのスマートフォンをセットで購入できますし、その際高額なスマートフォンを購入しやすくする「いつでもカエドキプログラム」を適用することも可能。

さらに言えばスマートフォンの使い方を教える「ドコモスマホ教室」を無料で受けることも可能で、MVNOが提供する低価格サービスを契約しながら、ドコモショップでの手厚いサポートを受けられる点が、エコノミーMVNOの大きな特徴の1つなのです。

  • エコノミーMVNOとして連携するサービスは全国のドコモショップでの契約が可能なほか、初期設定のサポートや端末の販売など、多くのサービスやサポートが受けられる

「dポイント」との連携で通信量の支払いも可能に

そしてもう1つの特徴が「dポイント」との連携です。エコノミーMVNOのサービスはdポイントの加盟店となるため、毎月の通信サービス利用料金に応じてdポイントを獲得できるほか、dポイントを使って毎月の料金を支払うことも可能です。

  • 「dポイント」や「dアカウント」とも連携しており、dポイントの利用が可能なほか、マイページの認証にもdアカウントを用いる形となる

    「dポイント」や「dアカウント」とも連携しており、dポイントの利用が可能なほか、マイページの認証にもdアカウントを用いる形となる

エコノミーMVNOが提供するサービスは、月額料金が1,000円以下と安いものが多いだけに、普段の買い物などでdポイントをたくさん獲得しているという人は、料金のかなりの部分をポイントで支払うことができ、従来以上に通信料金を節約できるようになるのではないでしょうか。

またエコノミーMVNOでは、会員情報を管理する「マイページ」などにログインする際の認証にも、dポイントなどの管理に用いる「dアカウント」を利用する形となります。NTTドコモの契約者であればdアカウントを必ず持っているだけに、NTTドコモの料金プランからエコノミーMVNOに移行した人も、従来と同じ感覚で利用できるのはメリットといえるでしょう。

しかもdアカウントは、通信サービス以外にも「dTV」「dブック」など、NTTドコモが提供するさまざまなサービスで利用が可能です。dアカウント、dポイントを通じてNTTドコモのサービスが利用しやすくなる点も、エコノミーMVNOのメリットといえるでしょう。

エコノミーMVNOとなるMVNOのサービスは?

エコノミーMVNOとしてNTTドコモとの連携を明らかにしているMVNOは2社。そのうち同じNTTグループのNTTコミュニケーションズは、先に触れた「OCN モバイル ONE」を2021年10月21日から連携開始しています。

  • エコノミーMVNOとして連携を発表している2社。先にサービス連携を開始するのはNTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」になる

OCN モバイル ONEには月当たりの通信量に応じて1GBから10GBまで4つのコースが設けられており、1GBコースは月額770円、3GBコースで月額990円。小容量であれば1,000円を切る料金での利用が可能なほか、いずれのコースも国内音声通話が30秒11円と、通常の半額となっています。

それに加えて同社はエコノミーMVNOとして連携するのに合わせて、新たに月当たりの通信量が500MBとより少なく、月額料金も550円と一層安いコースも追加するとしています。通信の利用は最小限で、音声通話の利用が主という人向けのプランといえますが、料金が非常に安いことからNTTドコモ回線が使えるセカンド回線として契約するのも悪くないかもしれません。

  • OCN モバイル ONEは2021年10月21日より通信量500MBのコースを開始。通信量は非常に少ないが、税抜きであれば月額500円とワンコインで利用できる安さが特徴だ

そしてもう1つ、エコノミーMVNOとして連携を表明しているのがインターネットサービスプロバイダー大手のフリービットです。フリービットは傘下企業がMVNOとして「トーンモバイル」というサービスを運営しているのですが、こちらは子供向けの見守りサービスに力を入れたり、シニア向けの使いやすさに力を入れたりするなど、独自性が非常に強いMVNOとして知られています。

そうしたことからフリービットはエコノミーMVNOとして「トーンモバイル for docomo(仮称)」の提供を予定しており、トーンモバイルで提供している子供向けの見守り機能「TONEファミリー」を搭載したティーン向けのSIMを、エコノミーMVNOとして2021年12月を目途に提供するとしています。ティーンにはiPhoneの人気が非常に高いことから、その親がトーンモバイルのSIMとiPhoneをセットで購入することなどが想定されます。

  • フリービットは傘下企業が展開する「トーンモバイル」をベースにしたサービスを提供予定。iPhoneの利用が多いティーンを対象に、見守りサービスを充実させたサービスを提供するとしている

通信は少量でOK、でも安さとサポートが欲しい人に

このように、従来のMVNOにはない大きなメリットがあるエコノミーMVNOですが、サービス内容を見るとその位置付けとしては、KDDIの「UQ mobile」やソフトバンクの「ワイモバイル」など、いわゆるサブブランドに対応するものといえます。

それゆえスマートフォンに詳しい人向けのahamoとは異なり、スマートフォンに詳しくなく、ショップでのサポートが必要だという人が主なターゲットとなりそうです。

ですが“NTTドコモのサービス”という視点で見た場合、やはりNTTドコモとは契約が別になってしまうことが弱点でもあります。

KDDIが「au」「UQ mobile」「povo」、ソフトバンクが「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO」といったブランド間の移動を、手数料やMNPが不要で簡単にできるようになったことを考えると、どうしてもMNPによる転出手続きが発生してしまう点は、NTTドコモの他のプランに変えたいという場合に手間がかかり、不便だと言えます。

ただ一方で、従来のdポイントやdアカウントを維持したままより安価なサービスを利用したいという人には便利な仕組みであることは確か。NTTドコモのネットワークを継続的に利用したいけれど、ギガライトではコストパフォーマンスが悪い、ahamo以上に料金を引き下げたい、でもショップでのサポートは欲しい……と考えている人に適したサービスといえるのではないでしょうか。

【お詫びと訂正】初出時、OCN モバイル ONEの国内音声通話を30分11円としていましたが、30秒11円の誤りでした。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。(2021年10月24日 11:15)