Amazonは10月19日、音楽ストリーミングサービス「Amazon Music Unlimited」において「空間オーディオ」対応機器を拡大。iPhoneやAndroidスマートフォンなどと既存のヘッドホンの組み合わせでも楽しめるようにした。

空間オーディオでは「リスナーが音楽の中に入り込み、没入感のある多次元的なオーディオ体験」を提供。YOASOBIやアリシア・キーズ、コールドプレイ、イマジン・ドラゴンズなどのアーティストの新曲を「圧倒的な広さ、透明感、深みを音楽に与えるフォーマットで聴ける」としている。

Amazon Music Unlimitedの空間オーディオを楽しむのにアプリや加入プランなどのアップグレードの必要はなく、追加料金もかからない。個人プランの月額料金は、プライム会員が月780円、非プライム会員が月980円。

Amazon Musicでは2019年末から、Dolby Atmosや360 Reality Audioの技術を用いた楽曲を「3Dオーディオ」と名付けて配信している。これまではスマートスピーカー「Echo Studio」やソニーの立体音響対応スピーカー「SRS-RA3000/RA5000」など一部のオーディオ機器で楽しめたが、今回から新たに、既存のスマートフォン/タブレットやヘッドホンなどにも対応機器を拡大。Amazon MusicアプリのAlexa Castに対応した一部のデバイスでもストリーミング再生できるようにした。

Alexa Castで360 Reality Audioをサポートするデバイスは、ソニーのワイヤレススピーカー「SRS-RA3000」、「SRS-RA5000」、ホームシアターシステム「HT-A9」、サウンドバー「HT-A7000」、「HT-A5000」(日本未発売)などがある。

さらに2021年後半には、Sonosのサウンドバー「Sonos Arc」、「Sonos Beam(Gen 2)」において、SonosアプリからAmazon Musicをストリーミングするときに、Dolby Atmosでミキシングされた音楽を聴けるようになる予定だ。

Amazon Musicバイスプレジデントのスティーブ・ブーム氏は、「私たちは、常に可能な限りの高音質なオーディオがストリーミング音楽の標準であるべきと考えてきた。本日、特別なデバイスを必要とせず、アップグレードの必要もなく、空間オーディオをユーザーに提供開始した」とコメントしている。

今回の取り組みに関して、イマジン・ドラゴンズは「ニューアルバム『Mercury - Act I』をリック・ルービンと一緒にマリブのシャングリラ・スタジオでレコーディングしましたが、この新しいDolby Atmosミックスを通じて、その部屋の空間と深さを体験してもらえるのは素晴らしいことです。Amazon Musicと一緒にレコーディングした、これらの曲のいくつかを収録した初のアコースティック・ライブEPを共有できることに興奮しています」と語っている。

また、アリシア・キーズは、「この一年、音楽エンジニアとともに360 Reality Audioのアルバム制作に情熱を傾けてきました。これまでも音楽には愛情を注いできましたが、今回の制作で、改めて音楽性を徹底的に追求しました。曲を特徴づける要素ながら、ミックスの際に隠れてしまう細部にまでこだわり抜いた今回の制作過程は、私たちにとって忘れられない時間となっています。非常にすばらしいコンテンツになったと自負しています。Amazon Musicから配信されるので、ぜひ聴いていただき、私の楽曲を愛していただければと思います」と語った。

実際に聴いてみた

筆者はAmazon Music Unlimitedを契約しているので、さっそく手持ちのiPhone 12 miniとソニーのh.earシリーズのBluetoothヘッドホン「WH-H810」で確かめてみた。

Amazon Musicでは、楽曲を再生するとプレーヤー画面に楽曲のオーディオ品質やフォーマットを表す「HD」や「ULTRA HD」という黄色いバッジが表示される。

  • 赤枠の所に楽曲のオーディオ品質やフォーマットが表示される

ここにDolby Atmosや360 Reality Audioと表示されている場合は何も操作せず、そのまま空間オーディオを楽しめるが、HDやULTRA HDとなっている場合はここをタップしよう。オーディオフォーマットをステレオもしくはDolby Atmos/360 Reality Audioから選ぶ画面が現れるので、左右にスワイプして好みで切り替えられる。

  • Dolby Atmos楽曲の場合

  • 画面スワイプでステレオ音質に戻せる。ちなみに、楽曲や再生機器のサンプリング周波数と量子化ビット数が表示され、今どの音質で聴けているのかが分かりやすい(kHzの“Z”の大文字表記は後日修正してほしいが……)

  • 360 Reality Audio楽曲の場合

  • こちらもステレオ音質にも戻せる

通常のステレオ音源では頭の中で音楽が鳴るような感覚があって、これはこれで悪くない。しかし空間オーディオに切り替えるとサウンドが一変。まるでスピーカーで音楽を聞いたり、ライブ会場でアーティストのいる舞台を目の前にしているかのように、“音が自分の正面から聞こえてくる”。ボーカルが自分の目の前にいるような感覚が味わえ、曲によっては今までとはまったく違った広がりのあるサウンドを楽しむこともできる。

楽曲のジャンルや組み立て方によってもこのあたりの効果のほどは変わるが、個人的には、一度聴いてみると通常のステレオ再生ではもう物足りない……となってしまう楽曲が少なくない。なじみのある曲や聞き慣れた楽曲でも、空間オーディオ対応でどんなサウンドに変わるのか、手持ちのスマホとヘッドホンで改めて聴き直していくのも楽しそうだ。