シャープは、技術関連の総合展示会「CEATEC 2021 ONLINE」(会期:10月19~22日)に先がけ、出展する製品やソリューションが一堂に会するメディア向け内覧会を開催しました。ここでは、開発中のmini LED 次世代ディスプレイや静電ホバータッチディスプレイといった、同社の最新技術を中心にレポートします。

  • ミニLED次世代ディスプレイのデモ展示。製品化も近そうだ

CEATEC 2021 ONLINEのメインイベントは10月19日~22日までで、入場には事前の無料登録が必要です。

シャープでは、オンラインで開催されるCEATECにおいて「NewNormalを加速する、シャープのソリューション」をテーマに、「ニューノーマルソリューションズ」、「ニューノーマル社会を支える要素技術・デバイス」、「ニューノーマル時代のデジタルまちづくり」の3カテゴリーにおける取り組みを紹介。CEATECの展示チャンネルで紹介されない一部アイテムについては、同社サイト内で紹介することになっています。

mini LED 次世代ディスプレイ

会場では、同社が6月に開発発表した「mini LED 次世代ディスプレイ」の試作機を披露。バックライトに小型LEDを採用し、高密度に敷き詰めて制御することで、ディスプレイの輝度やコントラストなどの表示性能を強化。大画面テレビのさらなる高画質化を目指すとしています。

  • mini LED 次世代ディスプレイ(左)と、従来ディスプレイ(右)の比較デモ。左の方が明部の表現力が高く、鮮烈なコントラスト感だった

  • 黒い画面の沈み込み具合は、まるで有機ELパネルのよう

試作機の画面サイズは65V型。既存のスタンダード4K液晶テレビ「4T-C65CH1」(2020年発売)と比べて約1/10サイズとなる小型LEDを8,000個以上バックライトとして配置し、1,000以上のエリアに細かく分割して駆動しています。

  • mini LED 次世代ディスプレイは全体的に映像がクッキリ明るく見える

  • 写真の明るさが上とやや異なるが、従来ディスプレイを目で見た印象はこんな感じ。精細感などは悪くないのだが、次世代ディスプレイと比べてしまうとネムい映像にみえる

同社の説明員によると、置かれていた試作機は6月の株主総会で展示したものからブラッシュアップし、「(実際に販売する)製品に近づけたもの」とのこと。“有機ELパネルと液晶パネルのいいとこ取りをしたディスプレイ”ということで、見てみると比較対象のAQUOSがかすんでしまうくらい暗部や明部の表現力が高く、鮮烈なコントラスト感でした。

なお、次世代ディスプレイの製品化の折にはAQUOSブランドを冠することを検討しているそうで、試作機の左下隅をよく見ると小さくAQUOSロゴが付いているのがわかります。

静電ホバータッチディスプレイ

10月4日にシャープが発表した、ディスプレイに直接触れなくても、指をかざすだけで操作できる「静電ホバータッチディスプレイ」もありました。

  • 43型の静電ホバータッチディスプレイ

  • ぱっと見は普通のタッチパネルだが、実は画面にはまったく触っていない

新開発の高感度タッチコントローラーにより、ディスプレイの表面から最大約5cm浮かせた指を高精度に検知。画面に直接触れなくても操作できるほか、手袋をした指でも操作できるのが特徴です。

会場に置かれていたのは43型で、横向きに設置されていましたが縦向きの設置も可能。サイズは15型〜55型程度まで幅広く展開する予定で、2022年春頃の市場投入を目指しており、さまざまな非接触ニーズに応えるとのこと。

具体的には、飲食店のセルフオーダー端末や、公共・商業施設の受付端末、案内用サイネージといった一般の人々の目につきやすいところから、高水準の衛生管理が求められる食品・薬品工場や、手に油や汚れが付着しやすい生産現場まで、さまざまな場所への導入を見込んでいるそうです。

ディスプレイを非接触で操作するには、既存の画面の周囲にフレームを組み込み、赤外線方式の検知用カメラを追加する方法もありますが、静電方式は一体型でスッキリとシンプルに作り込め、指を検出する感度も高めたことでスムーズに使えるようにしたとのこと。既存の画面に追加して非接触化するやり方には向きませんが、画面ごとリプレースしてしまえるのであれば、静電ホバータッチディスプレイに利がありそうです。

透明ディスプレイパーティションが商品化

2020年のCEATECで披露された、高い透過性能(透過率約60%)をもつ透明ディスプレイパーティションは、タテイシ広美社とシャープディスプレイテクノロジー(SDTC)によって共同商品化が決定。「SURŪ(スルー)」という名前で、2022年4月1日から順次グローバル販売を開始します。価格はオープンプライス。

  • タテイシ広美社とシャープディスプレイテクノロジーが共同商品化した「SURŪ(スルー)」。ちなみに、後方のマネキンヘッドが口にかけているのはシャープ製マスクだった

広島に本拠を構え、屋内外看板やサイン、デジタルサイネージやLEDビジョンを手がけるタテイシ広美社が、SDTCの開発・製造による透明ディスプレイを採用。木目と曲線を活かしたフレームデザインに組み込んだことで、従来のパーティション然とした見た目からグッと柔らかい雰囲気に変わりました。

  • 透過させない状態だとこんな感じ

  • 従来デザインの透明ディスプレイパーティション

本体側面にはHDMI入力とDVI端子、アナログRGB(ミニD-Sub 15ピン)、ビデオ入力端子を装備。通常の液晶ディスプレイのようにPCと接続できますが、表示するコンテンツはユーザー側で用意する必要があるため、会場のデモ展示はあくまでイメージとなります。なお、特にコンテンツを用意せずにPCをつないだ場合、WindowsなどのUIがそのまま表示されるとのこと。

  • 本体側面のインタフェースは、通常のPCディスプレイと大きくは変わらない

非接触・対面コミュニケーションに役立つソリューション

首掛けスピーカー「AQUOSサウンドパートナー」などで採用しているオーディオ技術を応用した、「窓口業務用マイク搭載スピーカーシステム」を参考出展。

  • 窓口業務用マイク搭載スピーカーシステム

マスクを着け、さらにパーティション越しでも相手とクリアな音声で会話できるようにするシステムです。2つのマイク搭載スピーカーをつないで使い、しゃべっている声がおたがいに聞こえやすいよう、個別に音量調整もできます。

  • 利用イメージ

会場では、上記の静電ホバータッチディスプレイと、透明ディスプレイパーティション、マイク搭載スピーカーシステムの3点を組み合わせたデモ展示も行い、非接触・対面コミュニケーションに役立つソリューションとして提案していました。

  • 静電ホバータッチディスプレイと、透明ディスプレイパーティション、マイク搭載スピーカーシステムの3点を組み合わせたデモ展示

メディカルリスニングプラグ

シャープの直販サイト「COCORO STORE」や家電量販店などで9月中旬から発売している、ワイヤレスイヤホンスタイルの耳穴型補聴器「メディカルリスニングプラグ」(99,800円、非課税)も展示。軽度・中等度の難聴者向けとなっています。

  • メディカルリスニングプラグ

  • 装着したところ

一般的な補聴器の両耳(2台)分の平均価格は30万円程度とされていますが、メディカルリスニングプラグでは10万円を切るリーズナブルな価格を実現。管理医療機器の認証も取得しました(医療機器認証番号:303AFBZX00058000)。

さらに、一般的な補聴器ではフィッティングのために販売店に複数回通う必要がありますが、シャープは昨今の対面サービスへの不安を払拭するソリューションとして、認定補聴器技能者による聴力チェックやフィッティングサポートをリモートで提供。会場では、メディカルリスニングプラグの聞こえ具合の調整を行うスタッフ向けのPC画面を見ることができました。

メディカルリスニングプラグはスマートフォンとBluetoothで接続し、専用アプリによって各種設定・操作が可能。フィッティングや聴力チェック、ビデオカウンセリングまで、ほとんどの操作がアプリ内で完結します。通常の完全ワイヤレスイヤホンとして音楽を楽しんだり、ハンズフリー通話で使ったりすることも可能です。

  • メディカルリスニングプラグ専用アプリの画面。中央下のボタンを押すとビデオカウンセリング画面を呼び出せる

  • 聞こえ具合の調整を行うスタッフ向けのPC画面

このほか、業務用途向けのソリューションを出展。各種インフラ検査・補修やメンテナンスのために、8Kカメラを搭載したドローンなどで取得した8K映像を画像処理する技術や、dynabookが販売する現場作業向けの小型PC「dynaEdge DE200」(Windows 10搭載)とメガネ型ウェアラブルデバイス「AR100」のセットなどを展示していました。

  • シャープの8Kカメラを搭載したドローン

  • カメラはシャープ製以外に、アストロデザイン製のものを載せることもできるようだ

  • 送電線の検査に使うイメージ

  • 撮影した検査用画像。解像度の違いがハッキリわかる

  • 下水管路の異常検査ソリューション

  • 管内に送り込む遠隔撮影装置のイメージ。取得したカメラ映像から自己位置を推定する技術も採用している

  • dynabookが販売する現場作業向けの小型PC「dynaEdge DE200」(右)。左はメガネ型ウェアラブルデバイス「AR100」。価格はトータルで30万円ほどになるという(PCの構成によって変わる)

  • ウェアラブルデバイスを装着したところ

  • dynaEdge DE200本体のカーソルボタンで、マウスなどの操作デバイスを使わずに簡易操作ができる。Microsoft Teamsで現場作業者とやりとりをしながら補修作業を進めたり、その場で図面を開くといったさまざまな用途に対応する

  • シャープの太陽電池モジュール「BLACKSOLAR ZERO」など、住宅用太陽光発電システムの展示もあった。モジュール部品を黒くカラーリングし、つなぎ目が目立ちにくい。戸建て住宅の屋根の形状にあわせ、効率よく設置できるよう複数タイプの形状を展開する