NTTドコモが2021-2022冬春のスマートフォン新製品をお披露目した。筆者が注目したのは、シニア向けとして新たにラインナップに加わった、京セラの「あんしんスマホ KY-51B」。6.1インチのディスプレイの下に、ガラケー(フィーチャーフォン)のような3つの物理キーが配置されているのが特徴だ。
ドコモのシニア向けといえば、FCNTの「らくらくスマートフォン」が圧倒的な知名度を誇る。その最新モデル「らくらくスマートフォン F-52B」は、シリーズ初の指紋認証センサーを搭載。また初めて2眼カメラを採用している。ドコモはなぜ今回、シニア向けのラインナップを2機種に増やしたのか。両者の違いとあわせてその理由をチェックした。
他にあって「らくらく」にはなかった機能をキャッチアップ
「らくらくスマートフォン」は来年で発売開始から10年、累計販売台数は700万台を超える。「らくらくホン」時代から数えると約20年続く、ドコモの超ロングセラーシリーズだ。タッチ操作が難しいというシニアの声に応えるため、物理キーのようにボタンをぐっと押し込む、独自のホーム画面「らくらくタッチ」を採用。加えてスマホの操作に慣れてきた人向けに、タッチやフリックといった操作ができる「スマホかんたんモード」も用意する。
IPX5/8の防水、IP6Xの防塵対応はもちろん、泡ハンドソープで洗える、アルコールで拭けるといった安心性能、迷惑電話/迷惑メール対策のような安全機能も充実。趣味のコミュニティや豊富な健康管理メニュー、カメラを使って花の名前が調べられる「花ノート」など、シニアの生活に寄り添う独自機能も多数提供している。
「らくらくスマートフォン F-52B」はこうした従来からの機能を継承しつつ、画面下のホームボタンにシリーズ初となる指紋認証センサーを搭載。ロック解除と同時に、QRコード決済アプリなどを簡単に起動できる。背面にはこちらもシリーズでは初となる、1310万画素(F値1.8)の広角と190万画素(F値2.4)のマクロの2眼カメラを採用。インカメラは約810万画素(F値2.0)で、被写体を認識してベストな設定で撮影できる機能や、複数枚の写真からおすすめの1枚をセレクトしてくれるAI機能も備わっている。撮影した写真や動画は、テレビなどにワイヤレス出力することも可能。
さらにマスクをしていても声が聞き取りやすい工夫や、フィッシング対策協議会と連携し、危険なリンクを警告する機能といった新機能も搭載されている。時世を反映して安心、安全を強化しつつ、生体認証やAIカメラ、さらには5G対応と、他のスマホにあって「らくらくスマートフォン」になかった機能がキャッチアップされたという印象だ。
ディスプレイは約4.7インチだった前モデルよりも少し大きくなり、約5.0インチのフルHD+有機EL(1,980×1,080ドット)に。バッテリーも3,400mAhと前モデル比で約60%アップしている。一方で本体サイズはほぼ変わらず、約高さ143×幅70×厚さ9.3mm、重さ160g未満(暫定値)をキープ。ディスプレイが大きくなった分は、ベゼルを狭めることで吸収されている。
担当者によれば「らくらくスマートフォン」のユーザーは、続けて同じシリーズを指名買いする傾向が強く、使い勝手が従来モデルから大きく変わらないことを望んでいる。そのため「らくらくタッチ」のような操作性はもちろん、サイズや丸みを帯びた形状、画面下のホームボタンといった配置に至るまで、敢えて変えないようにしているのだという。
これはロングセラーならではのジレンマとも言えるが、「らくらくスマートフォン」は慣れている人に使いやすい一方で、大画面を求める人や、よりシンプルな操作性を求める人には合致しない。そこでそうした「らくらくスマートフォン」にはないシニアのニーズに応えるべく、投入されることになったのが「あんしんスマホ」というわけだ。
大きい画面とシンプル操作で「らくらく」以外のニーズに応える
その「あんしんスマホ KY-51B」は京セラ製。ドコモが京セラ製のスマートフォンを取り扱うのは今回が初めてだが、京セラはこれまで他キャリア向けに多くのシニア向けのスマートフォンを提供していて、実績もある。
ディスプレイは約6.1インチフルHD+のTFT液晶を搭載。タイル状のボタンを配したシンプルでタッチ操作がしやすい独自のホーム画面を採用し、画面下には電話、ホーム、メールの3つの機能を備えた物理キーが並ぶ。京セラの調査によれば、ドコモのシニアユーザーの約6割が、ケータイ(フィーチャーフォン)のように電話やメールの物理キーがあるスマートフォンを希望しているという。
側面には好きな機能を割り当てられるワンタッチボタンも装備。前面の物理キーとあわせて、使いたい機能がボタンを押すだけで起動するのは、確かにとてもわかりやすい。背面には約4800万画素(F値1.8)の高精細なカメラを搭載し、インカメラは約800万画素(F値2.0)。バッテリーは4500mAhと大容量で、IPX5/8の防水にIP6Xの防塵対応、そして泡ハンドソープで洗える、アルコールで拭けるというのは「らくらくスマートフォン」と同様だ。
「花ノート」のような独自アプリはないが、カメラで写したものを簡単に検索できる「Google レンズ」が利用可能。このほか「らくらくスマートフォン」のようにヘッドフォン端子がない代わりに、USB Type-Cからヘッドフォンジャックへの変換アダプターが同梱される。
ドコモのシニアスマホはどちらを選んでもサポート充実
シニアユーザーの様々なニーズに応える、なかなか良いライバルになりそうな2機種だが、その両者に共通しているのがサポート機能の充実ぶりだ。「らくらくスマートフォン」ではワンボタンでつながる専用のコールセンター「らくらくホンセンター」を用意しているほか、動画を用いた使い方の解説に加え、有料で訪問サポートも行う「らくらくコンシェルジュ」サービスを提供。また今回新たに、設定をリセットすることで困りごとを解決する、「診断サポート」機能も追加されている。
一方の「あんしんスマホ」にも同様に、診断、リセットを行う「スマホの健康診断」という機能が用意されている。操作手順を教えてもらったときに画面を静止画(スクリーンショット)だけでなく、動画(スクリーンレコード)で残せる「画面メモ」や、通話後に今音声をあとから録音できる「通話後録音」機能も搭載。ほかにホーム画面からフリックで呼び出せるガイド機能「使い方ナビ」も利用できる。
このほか両機種ともに、紙のガイドブックが付属。どちらの機種にも、シニアの困りごとに対応する中で得た知見が活かされているしっかり印象で、特に「診断サポート」や「スマホの健康診断」といった機能は、ユーザーが自身で問題を解決するのに役立ちそうだ。なお、いずれも発売は来年2月以降と少し先で、価格は未定となっている。