米Microsoftは現地時間2021年9月22日に、Surfaceデバイスに関するデジタルイベント「Microsoft Fall 2021 Event」を開催した。おおかたの予想どおり「Surface Pro 8」「Surface Go 3」「Surface Duo 2」などを発表したが、各モデルの概要は別記事に譲り、ここではMicrosoftの姿勢に注目してみたい。
前回(Windows 11発表会)と異なり、ネットワーク遅延などは発生せずスムーズに始まった今回のオンラインイベント。目に付いたのはターゲット層の変更だ。Surface Pro 8はコラボレーション&クリエイティブ、Surface Go 3は子ども向けの利便性を強調した。
前者は新製品のSurface Slim Pen 2による操作性の向上、後者は子どもたちが自由にデジタル体験を享受できる優秀なデバイスであること、およびWindows 11のファミリーセーフティー機能をアピールした。コロナ禍以前はいずれも携帯性を強調するデバイスだったが、リモートワークが拡大したいま、オフィス出社開始日を延期したMicrosoftとしてはデバイスの役割を大きく転化するのは必然といえるだろう。
Surface Duo 2に関しては、そもそも国内で前モデルのSurface Duoが発売されておらず、使い勝手の是非を判断することは難しい。ただ、プロモーションビデオを見る限り、ヒンジを閉じた状態でもステータスを確認できる機能を目にすると、Windows Vista時代のWindows SideShow(ノートPCのサブディスプレイやUSB接続のデジタルピクチャーフレームなどにメール着信といった情報を表示する機能)を連想させる。
発表を見ていて驚いたのは、Surface Book 4ではなく、Surface Laptop Studioの存在だ。野心的なデスクトップPCだったSurface Studioの可変ディスプレイを備えながら、デスクトップPC級の性能を備えるPCである。
ディスプレイと本体のスタイルは、一般的なノートPCと同じ「ラップトップモード」、本体のキーボードを隠した状態で外部ディスプレイ連携やPCゲームを堪能できる「ステージモード」、タッチパッドまで閉じて2in1 PCのキーボードレス状態のように使うステージモード」の3種類だ。
タッチパッドの操作性も、新開発の「Precision Haptic touchpad(触覚トラックパッド)」で改善したという。コロナ禍でリモートワークを強いられながらも、デスクトップPCを設置することが難しい日本の住宅事情を踏まえると、興味深い製品ラインナップだ。ただ、モデルラインナップの中で、メモリ容量が16GB・32GBという2種類なのは少々心もとない。開発環境にも使えるとアピールするのであれば、より大容量メモリを搭載した上位モデルを用意してもよかったと思う。
また、サステナビリティの観点から障がい者へ注力してきたのはMicrosoftを評価できる要素の1つだが、今回新たにSurface Adaptive Kit、およびMicrosoft Ocean Plastic Mouseを発表している。前者はSurfaceデバイスのキートップやケーブルなどを認識しやすいように貼るシールだ。後者は海などから回収したプラスチックによる再生素材を20%まで使用したマウスである。
Surface Adaptive Kitに関して、Microsoftに勤める身体障がい者のDace Dame氏は、「(障がい者が社会から)阻害されていると思われないソリューション」と評した。今のところ筆者は視覚能力を保てているため、Surface Adaptive Kitの有用性を肌身に感じることは難しいが、誰もが公平にデジタルデバイスを使える機会や環境を提供するというMicrosoftの姿勢は素直に評価すべきだろう。
さて、一連のデバイスはWindows 11のリリースと同じく、現地時間2021年10月5日から提供を開始する。デバイスによって異なるが、日本市場も同様のようだ(Surface Go 3、Surface Duo 2を除く)。ここでは割愛したが、Surface Pro Xも若干の構成変更を加えたモデルを用意する。個人的に本命だと感じたSurface Laptop Studioは、Microsoft Storeで2022年前半の発売予定だ。いずれのデバイスも順当に強化され、2世代以前のSurfaceデバイスユーザーなら乗り換える価値はありそうだ。