TrendForceによると、5G、家庭用電化製品、産業分野でのエネルギー効率化、および新エネルギー車(NEV)の継続的な開発により、2021年、通信基地局、コンバータ、および充電ステーションの需要が伸び、GaNならびにSiCパワー半導体の需要を急増させているという。その結果、2021年のGaNパワー半導体市場は前年比73%増の8300万ドルになると同社では予測している。

GaNの最大アプリはスマホ用急速充電器

TrendForceによると、主に家庭用電化製品での使用が増加しているGaNパワー半導体市場は、年平均成長率(CAGR)78%で成長し、2025年には8億5000万ドル規模に達するという。適用アプリケーションに関しては、「家電」、「NEV」、「テレコム/データセンター」の順で大きく、それらの市場割合はそれぞれ60%、20%、15%としている。

  • GaNパワー半導体

    2020年および2025年のGaNパワー半導体市場(単位:百万ドル) (出所:TrendForce、2021年9月)

SiCの最大アプリはNEV

一方のSiCパワー半導体市場はCAGR38%で成長し、2025年には33億9000万ドルに達すると予想されている。その適用アプリとしては、「NEV」、「太陽光発電/ストレージ」、「充電ステーション」が上位を占め、市場割合としては、それぞれ61%、13%、9%としている。特にNEVでは、パワートレインインバーター、OBC(オンボード充電器)、およびDC-DCコンバーターなど広く活用されている。

  • SiCパワー半導体

    2020年および2025年のSiCパワー半導体市場 (出所:TrendForce、2021年9月)

第3世代半導体とも呼ばれるSiCのウェハは、エピタキシャル成長が比較的困難であるため、大口径化が難しく、ようやくその主流が6インチから8インチへと移行しようとしている。そのため、12インチが主流であるSiとくらべ、その製造コストは5~20倍高いとされている。

SiCウェハは、Cree、II-VI、ローム、STMicroelectronicsなどが存在感を示しているが、そうした状況の打破に向け、SICCやTankeblueなどの中国サプライヤが中国政府の掲げる14次5か年計画の支援を受けて、市場参入を進めており、こうした動きが中国政府の掲げる半導体の自給自足政策を加速させる可能性が高いとTrendForceでは見ている。

また、台湾のサプライヤも一定の競争上の優位性を持っているとも考えを示している。それは、台湾企業はSi開発における豊富な経験を持っているだけでなく、包括的な上流/下流のシリコンサプライチェーンの本拠地でもあり、かつ政策として台湾内の材料供給、設計、および技術開発の促進・支援が進められているためだという。そのため、台湾は、基板技術とエピタキシー成長技術の成熟への取り組みに、チップ設計におけるミッドエンドとバックエンド(パッケージング)という強みを加えていくことで、高度な半導体製造の中心地になる可能性があるとしている。

すでにHermes-Epitek(子会社EPIおよびEPISIL)とSAS(子会社GW、AWSC、CWT、およびATC)が主導する2つの主要な戦略的提携により、台湾で不足しているウェハ技術の加速が進めているほか、KENMECとTAINERGYが共同で資金を提供しているTAISICは、4インチのSiCウェハの顧客認定を進めつつ、6インチのSiCウェハの研究開発への積極的な投資を行っている状態だという。