(著者・インテル株式会社 執行役員 経営戦略室 室長 大野誠)

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)がいまだ世界各国で猛威を振るい、日本でも緊急事態宣言の発令が続き、人々の生活に甚大な影響を及ぼしただけではなく、今もなお、医療、教育、経済といった社会基盤に大きな爪痕を残しています。テクノロジー産業も大きなインパクトを受け、余儀なく対応に追われましたが、同時にテクノロジーが社会や人々の生活を豊かにするために果たすべく役割について見つめ直すきっかけにもなりました。

インテルは、これまでCOVID-19の感染拡大防止に向けて様々な取り組みを実施してまいりました。パンデミックによって浮き彫りになった社会課題に着目し、ニューノーマルに適応するソリューションの開発や導入を促し、また革新的テクノロジーに投資してきました。これらの取り組みは、インテルが昨年5月に一新したCSR(企業の社会的責任)「RISE」戦略を基にしています。

インテル「RISE」戦略とは何か

RISEは、Responsible(社会的責任)、Inclusive(受容性)、Sustainable(持続可能性)、Enabled(実現能力)の頭文字を繋げた言葉で、、従来の企業としての社会的責任を果たすだけではなく、広範なステークホルダーと協働しながら地球規模で共通する社会課題の解決を目指す戦略です。

  • インテルのRISE戦略 ~パンデミックを切り拓く革新的テクノロジーによって医療、教育、経済の課題解決を目指す~

インテルは、このRISE戦略に沿って、とりわけダイバーシティ&インクルージョン、アクセシビリティー、気候変動への意識を高めながら、医療、教育、経済に関連するプロジェクトを中心にさまざまな活動を展開しています。

パンデミック発生に備えた診断、治療、予防対策

医療の分野では、今後再び発生しうるパンデミックに備えて、診断、治療、予防対策に向けた万全な準備を、広範なポートフォリオを活用して支援を行っています。海外事例として、COVID-19感染者の早期診断とトリアージの実施に向けて、医療用画像処理を専門とするパートナー企業を支援することによって、CTスキャンやX線検査装置の活用を促しました。また治療の面では、パートナー企業との協業を通じて、インテル(R) NUC Mini PC を利用して遠隔診療ソフトウェアを稼働させすることによって、室内ディスプレイの拡張を可能にしました。また、予防対策においても、COVID-19の調査研究や現在のパンデミックの先を見据えた研究プロジェクトへのハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)のリソースを提供しています。

日本におけるRISE戦略と今後期待される効果

インテルは日本でも積極的にRISE戦略を推進しています。例えば、教育分野においては、埼玉県戸田市教育委員会との間で、先端テクノロジーを活用する高度技術人材育成に向けたSTEAM* 教育環境を構築するために、覚書を締結しました。施設一体型で小中一貫教育を行っている戸田東小学校・中学校に、インテルの技術を生かした高性能コンピュータなどを備えた「STEAM LAB」を設け、STEAM教育の事例創出に取り組みます。また、インテルがこれまで20年間の及び実施してきた教員向け研修プログラム「Intel Teach Program」に基づいて教員研修も行います。

*STEAM教育 : Science、Technology、Engineering、Mathematics and Arts Education の頭文字。 数学、科学、技術、ものづくりや芸術の領域などを重視し、文理を横断した創造的教育

また、インテルは千葉市動物公園と日本システムウェア株式会社(NSW)との協働で、COVID 19感染症対策を図りながら、来園者数を向上させ、収益を改善するために、エッジとAI分析でデータの可視化に向けて取り組んでいます。園内のカメラとエッジ機器からのデータを収集し、AIを活用して分析することで、来園者データに基づいた運営スキームを改善し、園内滞在者数の把握と制御によるCOVID-19感染防止対策に取り組みます。さらに、レストランの既存メニュー改良によるフードロス削減など、環境負荷にも配慮しています。

その他にも、横須賀市の沿道情報センシングシステムの共同開発に、インテルも協力しています。同システムでは、市販化されている安全運転支援システム(前方接近警告や車線逸脱警告)のセンサーから収集できる道路や歩行者に関する情報をAIで分析し、道路などのインフラ維持管理や交通安全、その他さまざまな分野での活用の可能性について検討します。車載型エッジAIを活用し、道路や歩行者の状況を可視化することで、歩行者や自転車に配慮したより安心・安全な人間中心の環境づくりに貢献します。

RISEの成功を握るカギは、パートナー企業を含むステークホルダーとの連携による実質的な成果をもたらすカスタマイズ・ソリューションの提供にあります。私たちはこれからのRISEを通じて、日本でもニューノーマルやグローバル・インパクトに対する取り組みを積極的に展開していきます。

先進的な企業の取り組みをひろく読者の皆様に紹介するため、寄稿記事を掲載しました。

◆著者・インテル株式会社 執行役員 経営戦略室 室長 大野誠

2000年インテル株式会社入社。営業本部、マーケティングマネージャー、OEM営業部長を経て、2014年より執行役員。IOT&Compute営業本部長、オートモーティブセールスグループ アジアセールスディレクター、新規事業推進本部長を歴任した後、経営戦略室 室長に就任