Samsung Electronicsの半導体部門が、2021年上半期末の段階で、正社員を過去1年間で5644人増員したことが、同社の発行した上半期事業報告書から判明したと、韓国の毎日経済新聞が報じている。

現在、同部門の正社員数は6万人まで増加しているという。一方、同じ期間に家電事業部門やモバイル事業部門は数百名規模で人員が減少しているとのことで、同社の半導体への注力ぶりがうかがえる。

こうした人員増の背景には、同社が積極的に新工場の建設を進めていることがあると考えられる。現在は韓国・平澤事業所の第2工場(P2)と、中国・西安第2工場への追加投資がほとんど終わった状態で、数兆円規模の巨大な平澤第3工場(P3)の建設作業も、早ければ2022年下半期に完了すると予想されている。また、170億ドルを投じて米国に新規ファウンドリ工場を建設する計画も進行中であり、これらの国内外工場を稼働させるために多数の技術者や現場作業者が必要になってくるためだと見られる。

Samsungは8月24日にも、今後3年間に23兆円規模の投資を行うことで4万人を直接雇用を生み出すと発表しており、投資先の内訳は不明ながら、半導体事業とバイオメディカル事業が2大投資先とされている。2022年春の新入社員の選考は今秋に行うとしているが、中途採用も随時実施しており、多数の日本人技術者も応募している模様である。

半導体メーカーのほか、ファブレスや装置メーカーも増員を実施

韓国ではSamsung以外にも、例えばSK Hynixが設計、研究開発(R&D)、量産技術、量産管理など20分野で、3桁規模の人材募集を行っているほか、ファブレスのLX Semicon(LGグループから独立し、LXグループの一員となり、旧社名Silicon Worksから改名)も今年度は300名の人員募集を行っているという。

韓国内企業のみならず、EUV露光装置の製造・販売を手掛けるASMLの現地法人であるASML Koreaも今年下半期に100名規模のエンジニアを採用する計画だという。もっともTSMCのEUV露光装置郡の保守サービス増強を目的としてASML Taiwan(2020年末時点で台湾での社員数2800名)の2021年の採用人員は600名と多い点に注意が必要である。ちなみにTSMCは、2021年に9000名の増員を実施中で、日本のデザインセンタおよび3D IC研究開発センタでも設計エンジニアや研究者を募集している。

日本では半導体技術者のリストラが継続

なお日本では、半導体メーカーのリストラが現在進行形で進められている。中心となっているのは、世界で一番多いとされる150mmウェハのレガシーファブに対する取り組みである。現在は、世界的な半導体不足でこれらのレガシーファブも稼働が継続しているが、世界中で300mmファブの建設が進んでおり、これらが稼働を始めれば、レガシーファブは不採算拠点として位置付けられることになる。こうした動きを逆手に、韓国勢のみならず、海外の複数の半導体企業が深刻な人材不足から、即戦力である人材を求めて日本に狙いを定め、求人しているところも少なくない。日本企業の賃金水準は、日本経済のデフレが続いたこともあり、低下傾向が続いており、外資系の給与水準との格差が広がっているともいわれており、今後、ますます技術者の海外企業への転職が進むものとみられる。