Preferred Computational Chemistry(PFCC)は、新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis(マトランティス)」をクラウドサービスとして7月6日から提供開始したことを発表した。

同社はPreferred Networks(PFN)とENEOSの共同出資により2021年6月1日に設立され、材料開発に取り組んできたという。現在、材料開発の分野では「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」というAIを用いて膨大な候補物質から有望材料を見出す技術に世界各国の技術者が取り組んでいる。

今回発表した、Matlantisは従来の物理シミュレータにPFNのスーパーコンピュータを用いた深層学習モデルを組み込むことで、計算スピードを従来の数万倍に高速化するとともに、未知の材料を含む、分子や結晶などの任意の原子の組み合わせにおいてシミュレーションが可能で、現在は55の元素をサポートしており、今後さらに拡大予定だとしている。

  • Matlantisの特徴

    Matlantisの3つ特徴(提供:PFCC)

また、学習済み深層学習モデル・物性計算ライブラリ・計算環境がパッケージ化されて提供されるため、ユーザーはハードウェアの準備や環境構築をすることなく、すぐにブラウザ上でシミュレーションによる材料探索が可能だという。

  • Matlantisの画面

    Matlantisの画面(出所:PFCC)

すでに信州大学の先鋭材料研究所の古山通久教授がMatlantisのβ版を使い、量子力学計算で従来は数カ月かけて行っていた計算を約0.1秒で終了するという結果が得られたとのことだ。

古山教授は今後、同サービスについて、燃料電池の電極触媒の探索などに活用していきたいと期待を寄せた。

なお、PFCCは同サービスを日本のみならず、海外への展開も視野に入れ、大学や材料探索を行う研究所を持つ企業などを中心に展開を図っていくとしている。