大阪大学(阪大)と京都大学(京大)は6月14日、中性子星の表面近くで現れると予測されている、原子核の特殊な状態である「アルファ凝縮状態」の候補をネオン20原子核にて発見したと発表した。

同成果は、阪大大学院 理学研究科の足立智特任研究員、同・川畑貴裕教授、同・古野達也助教、京大大学院 理学研究科の藤川祐輝大学院生を中心とした、阪大核物理研究センター、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター、甲南大学、宮崎大学、理化学研究所の研究者が参加した20名からなる共同研究チームによるもの。詳細は、素粒子物理学や原子核物理学、宇宙論などを扱うオープンアクセスジャーナル「Physics Letters B」に掲載された。

すべての原子の中心には原子核があり、その原子核は陽子と中性子から構成されている。原子核を記述する理論として大きな成功を収めている「殻模型」では、原子核内においては陽子と中性子が個々に軌道運動をしているとされる。

しかし殻模型では説明が難しい原子核として陽子6個・中性子6個からなる炭素の安定同位体である12C原子核の「ホイル状態」が知られている。ホイル状態をうまく説明できる理論とされるのが、陽子2個と中性子2個で構成されるアルファ粒子(4He原子核)を基本的な構成単位として、原子核の構造を記述する「アルファ・クラスター模型」で、12Cのホイル状態の場合は、6個ずつの陽子と中性子が一塊になっているのではなく、アルファ粒子3個が集まっている状態と考えられている。

アルファ・クラスター模型では、ホイル状態は通常の原子核に比べて密度が低く、3つの4He原子核が「ボース・アインシュタイン凝縮」している状態と類似していると予想されており、この状態は「アルファ凝縮状態」と呼ばれ、アルファ・クラスター模型によれば酸素16、ネオン20(20Ne)など、12Cよりも重い原子核においても存在すると予想されている。しかし、これらの原子核でアルファ凝縮状態はこれまでのところ実際には確認されていなかったという。

  • アルファ凝縮状態

    アルファ凝縮状態の概念図。赤と青の球体は陽子と中性子を表し、陽子2個と中性子2個のものが4He原子核(アルファ粒子)。炭素12のホイル状態、ネオン20のアルファ凝縮状態は、原子核にすべての陽子と中性子が一塊になっているのではなく、アルファ粒子が複数凝縮している状態である (出所:京大プレスリリースPDF)

そこで研究チームは今回、大阪大学核物理研究センターのリングサイクロトロン加速器施設において、20Ne原子核からの4He原子核の散乱と、20Ne原子核の励起状態におけるアルファ崩壊の精密同時測定を実施したという。

その結果、得られた実験データから、統計崩壊モデルでは説明できない高確率でアルファ崩壊する20Ne原子核の励起状態が発見され、その状態こそがアルファ凝縮状態の候補であるという指摘がなされたという。

  • アルファ凝縮状態

    ネオン20原子核が、ある特定のアルファ崩壊を起こす頻度についての実験データと理論計算との比較。統計崩壊模型では説明できない3つのピークが観測されたとしている (出所:京大プレスリリースPDF)

なお、研究チームでは、今回発見された20Ne原子核のアルファ凝縮状態の候補をさらに詳細に調べることで、中性子星表面なども記述できるような低密度な原子核物質の状態方程式への情報を得ることが可能となるとしているほか、原子核物理学における究極の目的の1つである原子核の状態方程式を解明するための進展が期待できるとしている。