SEMI主催でIEEE(米国電気電子技術者協会)が後援する「Advanced Semiconductor manufacturing Conference 2021(ASMC 2021:先進半導体製造国際会議)」がバーチャルオンライン会議形式で開催された。

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世界のファブの数は過去10年で日米が減少も中国が激増

ASMC 2021ではSEMI米国本部のシニアプリンシパルアナリストであるChristian G. Dieseldorff氏が「世界半導体製造業界の最新動向」についての基調講演を行った。 同氏によると、2021年第1四半期末時点の半導体産業の現状として、以下の3点を挙げた。

  1. 世界40か国に576社が運営する1347の半導体工場(ファブ)がある
  2. 世界中で27の量産工場が建設地位である。開発・試作ライン入れればもっと多くなる
  3. 今後、100ほどのファブ建設やライン増設の計画がある

また、2007年に実稼働していた(つまり遊休状態のファブを除いた)量産ファブ数(実績地)と2022年の量産ファブ数(予測値)を国・地域ごとに比較したところ、2007年時点で日本には世界最多の246ファブがあったが、2022年には中国および米国に抜かれて183まで減る見込みであるという。その中国は、94から235へと2.5倍増で、台湾は97から135へと4割増、韓国は47から51へとわずかながら増加するとしている。韓国は、Samsung ElectronicsとSK Hynixの2強状態であり、両社がファブの増設を進めている中での微増ということは、中小メーカーが淘汰されていったということであろう。この15年間でファブの数が減少するのは日本と米国だけである点が注意すべき点であろう。

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    図1 2007年および2022年(予測)の国・地域別半導体量産ファブ数比較 (出所:SEMI)

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    表1 世界中のウェハ口径別ファブ数 (*2019年末および2022年末の比較) (出所:SEMI)

また、ウェハ口径別のファブ数は小口径になるほど圧倒的に多いが、生産能力(2021年第1四半期時点)では、ファブ数とは逆に300mmファブが55%、200mmファブが25%、200mm未満(5インチ~2インチ)が20%となっており、設備投資額(ファブ建設費を含む)では、それがさらに顕著にとなり、300mmファブが93%、200mmファブが5%、200mm未満ファブが2%となり、投資のほとんどが300mmファブに向けられているのが現状となっている。

2021年の設備投資額は前年比31%増の1400億ドル

2021年のファブの建設ならびにライン増強にかかる半導体設備投資額についてSEMIでは、前年比31%増の1400億ドルと予想している。すでにSamsungとTSMCが3兆円台、IntelとSK Hynixが2兆円強の設備投資を行うことを明らかにしているほか、Micron Technologyも1兆円近い投資を行う予定としているほか、中国のSMICも、米国のエンティティリストに追加された影響で、投資額がやや減るものの5000億円近い投資をする予定だとしている。

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    表2 世界主要メーカーの半導体設備投資額 (2020年および2021年) (出所:SEMI)

半導体市場は2000年に2000億ドルを突破した後、シリコンサイクルの浮き沈みはあったものの2013年に3000億ドルに到達、その4年後の2017年に4000億ドルに達した。それから4年後の2021年には5000億ドルに達する見込みとしている。また、デバイスメーカー各社の設備投資額の合算は、2000年のITバブルにピークを迎えた後、2016年まで横ばいか下回る規模が続いたが、2017年のメモリバブル以降急成長に転じ、2018年に1000億ドルを越え、2021年には1400億ドルに達する見込みだとしている。

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    図2 半導体売上高推移と半導体設備投資額の推移(2021年は予測) (出所:SEMI)

予測不可能な状態に陥った2020年の半導体市場

ちなみに2020年は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な感染拡大に伴い、半導体産業の成長率予測が二転三転した。2019年末/2020年初時点での市場調査各社による2020年の成長予測平均は前年比8%増であったが、第2四半期の終わりまでにすべての調査会社が下方修正を行い、その多くがプラス成長から一転してマイナス成長に変更している。

いつコロナ禍から解放されるか誰にもわからず、その後、いわゆるコロナ特需が来ようとは誰も予測できなかったということだ。しかし、2020年末から2021年年初にかけてすべての調査会社はプラス成長に上方修正し、平均8%増と新型コロナの感染拡大初期時点での予測に戻ったことになる。

2021年については、すべての調査会社が10%台の成長予測を示している。

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  • 図3 市場調査各社による2020年、2021年、および2022年半導体市場成長率予測 (出所:SEMI)

SEMIは、5G、HPC、AI、IoT、自動運転/EVなどの急成長アプリケーションがけん引して、今後とも半導体産業および装置材料産業は成長を継続すると見ている。

ムーアの法則は今後も続く - Intel

このほか、ASMC 2021では、Intelのコーポレートバイスプレジデント(設計担当、前の勤務先はIBMおよびGLOBALFOUNDRIES)であるGary Patton氏も基調講演を行い、「ムーアの法則は(終焉せず今後も)継続する」と主張した。

ムーアの法則は、Intelの共同創業者であるGordon Moore氏が、前職のFairchild Semiconductor時代の1965年に提唱した「集積回路に搭載される(部品あたりのコストを最小にする)部品点数は毎年2倍となる(のちに2年ごとにと修正)」という経験則だが、Intelは過去50年以上にわたりこの法則にしたがって集積度を指数関数的に増加させてきた。近年「ムーアの法則は終焉した」と繰り返し指摘されてきたが、Patton氏は、さまざまな技術革新により、今後とも、ムーアの法則は継続できることを強調した。

そのための技術革新としては、構造と材料の変化があげられる。トランジスタ構造は伝統的なプレーナー構造からFinFET(Intel用語ではTri-Gate)へ、そして将来はGate-All-Around(GAA)へと変わろうとしており、使用する材料も次々と変わり、2D材料の研究も進んでいる。

リソグラフィ分野でも、EUVが実用化し、高NA EUVも開発されている。一方で回路と微細化技術の同時最適化、さらにはシステムと微細化技術の同時最適化が進み、 さらには2次元の微細化に替えて縦方向に異種の回路を積層していく3次元ヘテロジニアス集積の方向で技術が進化していく。これらの技術革新により、今後もムーアの法則は継続するとPatton氏は結論付けた。