パナソニック ライフソリューションズは5月19日、等身大の立体投影装置「汐留サイバードーム」のリニューアルした姿をメディアに公開しました。同社では都市計画や建築設計の検討用として活用してきたこのVR技術を、今後は観光やエンタメ分野にも展開していく考えです。

  • 汐留サイバードームにてVR技術を体験

汐留サイバードームとは?

パナソニック東京汐留ビルの汐留サイバードームは、2003年にオープンした施設。VR投影装置によって、幅8.5m・高さ7.5mという半球状の大型スクリーンに3次元の立体映像を投影し、臨場感のあるコンテンツを楽しめます(現在のところ一般公開はしていません)。

  • 利用イメージ。建物の内観、レイアウトを疑似体験するのにぴったり

VRというと、ヘッドマウントディスプレイを装着して個人で楽しむ様子を想像しがちですが、汐留サイバードームでは軽量の専用メガネ(3Dグラス)を装着した複数人で同じ映像を視聴できるのが特徴です。

  • 最大20名まで同時閲覧が可能。バーチャルな映像だけでなく、高解像度で撮影された映像を楽しめます

オープンから18年というタイミングでリニューアルした理由について、担当者は「国土交通省のプロジェクト『PLATEAU』における3D都市モデルの施設計画、町づくりに活用できる3Dデータが一般化・詳細化してきたことなどを踏まえ、より高精細な映像体験を提供するために実施しました」と話します。

今回のリニューアルでは、従来型のランプ光源プロジェクター×18台を、レーザー光源のプロジェクター×9台へと交換。スクリーンも、投影面の均一性が高いものへ変更したことで、従来比1.5倍の解像度と輝度を実現しています。さらにVRコンテンツだけでなく、4K、8Kの高解像度な2D映像、3Dの360°映像、パノラマ静止画像も投影できるようになりました。

  • プロジェクターはレーザー光源のタイプにリニューアルされた

これまでパナソニック ライフソリューションズでは、汐留サイバードームのVRを活用して2000年以降に1,700件以上の町づくり・建築計画を支援してきたとのこと。担当者は「建築計画や都市インフラ整備、市街地の再開発事業などにおいて、行政や設計者、コンサルタント、地域住民の合意形成を促す手法としてVRを活用してきました」とアピールします。

  • ダイナミックに映像が動くので、手すりにつかまっていても思わずのけぞってしまうほどの迫力

筆者も実際に体験してきました。まず目にしたのは「路面電車とクルマが走るオフィス街」のバーチャル映像。現在、もし東京の丸の内から大手町にかけて路面電車が走ったら、こんな景観になるんだろうな~と想像が膨らみます。

次に映し出されたのは「駅前の歩道にはどんな屋根が相応しいか」「イベント会場にはどんな装飾を選んだら良いか」といった町づくりに関わるシチュエーション。工事の前に、こうして完成後の世界を疑似体験できるのは有用ですね。スクリーンを指差して「あの部分を、もっとこう……」などと提案できるのも、複数人で視聴できる汐留サイバードームならではのメリットでしょう。

  • ひと足お先に、近未来の町を闊歩できる醍醐味

バスケットボール試合会場のシーンもありました。満員の観客が見つめるコートに降り立った瞬間、選手でもないのに緊張感ですこし汗ばんだ手のひら。見上げれば照明が自分たちを照らしています。天井の高さ、客席までの距離、コートの広さを実感……。選手の目線レベルでリアルな映像を目の当たりにして、アスリートならイメージトレーニングで活用できるのではないか、とも思いました。

  • スポーツの分野でも活用できる?

今後の展開について、担当者は「観光やエンタメ分野での活用も視野に入れながら、オフィスやスポーツ、商業施設の空間設計コンサルティグ、運営状況の可視化、運用時の課題解決、改修計画検討といった、運営コンサルティングへの活用で幅広いビジネス展開を目指していきます」と展開を見据えています。