アップルが、デザインを完全リニューアルした新しいオールインワンデスクトップ「iMac」を発売します。今回は、オーディオ・ビジュアルの方向へ大胆に目線を振りつつ、新しいiMacの実力を徹底分析してみたいと思います。

  • 4.5K Retinaディスプレイを搭載する新しいiMac。カラーはグリーンのモデルをテストしました

ナチュラルな高画質が冴え渡る4.5K Retinaディスプレイ

新しいiMacには、24インチの4.5K Retina液晶ディスプレイが採用されています。解像度は4,480×2,520ピクセル、画素密度は218ppi。Apple TVやiTunes Storeから購入・レンタルできる4K動画コンテンツをダウンコンバートせず、高精細な映像のまま楽しむことができます。

ディスプレイの最高輝度は500nits。Display P3の広色域対応として、明るく色鮮やかな映像を再現します。設置環境周辺の照明、自然光の色温度に応じて画面のホワイトバランスを自動で調整するTrue Toneテクノロジーも搭載。パネルに低反射コーティングを施しているので、映り込みの少ない目に優しい映像が長時間のデスクワークによる負担を和らげてくれるでしょう。

  • iPhone 12 Pro Maxで撮影した写真を再生。Retinaディスプレイらしいナチュラルな明るさと色合いを実現しています

macOS標準のApple TVアプリケーションを立ち上げて、定額制動画配信のApple TV+に公開されている4KコンテンツをiMacで再生してみました。自然な色合いと明るさの絶妙なバランスは、さすがアップルのRetinaディスプレイです。人の肌の質感や、赤や緑などビビッドなカラーの力強さと安定感。空色のリアリティ。暗部の情報を残しながら階調感を飽和させず、黒色も引き締めるさじ加減のうまさが冴え渡っています。

24インチの大きな画面の隅々まで明暗の輝度ムラがなく、ユニフォーミティに富んだ映像が楽しめます。今回筆者がテストした実機は、8コアのCPU/GPUを搭載する上位モデルのiMacですが、4Kグラフィックスの描画処理はゲーム系コンテンツも含めてとても安定しています。新しいiMacは、Wi-Fi 6やギガビットイーサネット対応なので、4K動画ストリーミングやビデオ会議も楽にこなせます。

  • iPhone 12 Pro Maxで撮影した4K動画も、ディティールを立体的に再現

iMacのディスプレイに関してあえて課題を挙げるとすれば、周辺のベゼル(額縁)がホワイトなので、宇宙空間を舞台にしたSF映画やシリアスなサスペンス系のドラマなど暗いシーンの多い動画の没入感が、5K Retinaディスプレイの周辺ベゼルをブラックとしている27インチのiMacに比べてやや劣って感じられることでしょうか。新しいデザインの統一感を考えれば、ベゼルの色がホワイトであるべきなのですが、ブラックのベゼルを選択できるオプションがあっても良いのかもしれません。映像製作やグラフィックスの仕事に携わるプロフェッショナルにも歓迎されると思います。

  • 背面はディープで華やかなグリーン。アップルロゴを堂々と冠しています

また、6Kディスプレイ「Pro Display XDR」のノウハウを落とし込んだHDR対応iMacへの期待は、今後のApple M1チップを搭載する24インチ以上のiMac、あるいは次世代のiMac Proにつなぎたいと思います。

空間オーディオにも対応するパワフルなオーディオ

新しいiMacのオーディオシステムは文句なしの進化を遂げていました。Apple M1チップを搭載したことにより本体がスリムになっただけでなく、内部のスペースをより多く、上質なオーディオシステムをビルトインするために割けるようになったからです。

iMacを正面に見て、ボトム側の左右に3基ずつ、合計6基のスピーカーユニットを内蔵しています。

内訳は高音域用のトゥイーターが1基と、16インチのMacBook Proにも搭載する中低音域用の「フォースキャンセリングウーファー」を2基。それぞれのユニットを力強くドライブすることによって、新しいiMacは外付けスピーカーやHomePodシリーズへのAirPlay再生を使わなくても、単体でゆがみのないクリアでスムーズなサウンドを鳴らし切ります。

  • 2基のフォースキャンセリングウーファーを搭載。パワフルでスピーディーな低音再生を実現しています

  • 本体のボトム左右に合計6基のスピーカーユニットを搭載

スピーカーユニットから出力された音は、iMacの筐体に下向きに配置された音の出口から出力されます。デスクトップなどiMacの設置面に音を反射させながら、デジタル信号処理によって音を画面の高さまでリフトアップするため、映画やApple Musicの音楽ビデオなどを視聴する時にも「まるで画面から音が聴こえてくる」ような没入感が楽しめます。

そして、新しいiMacはアップル独自の立体サウンド体験である「空間オーディオ」にも本体内蔵のオーディオシステムだけで対応しました。アップルの説明によると、ドルビーアトモスの音声トラックを収録したコンテンツを再生する時に空間オーディオが楽しめるようです。

iTunes Storeで購入した映画『ゼロ・グラビティ』を再生してみると、広々とした宇宙空間を移動する効果音がとても生々しく再現されました。横方向への広がりと、高い位置から振ってくるような音の迫力に圧倒されます。Apple TV+のコンテンツにも、映画『グレイハウンド』のようなドルビーアトモス対応の良質なサウンドが楽しめる作品が数多くあります。

映像配信サービスのU-NEXTがドルビーアトモス対応のコンテンツとして公開している映画『トランスフォーマー/最後の騎士王』を、iTunes Storeからもレンタル購入して聴き比べてみたところ、後者の方がより鮮明な効果音に包まれるようなレベルの高い空間オーディオ体験を味わうことができました。

U-NEXTに確認したところ、パソコンによるドルビーアトモス再生はブラウザーでの再生対応に開発が必要になるため、U-NEXTではまだ対応ができていないそうです。新しいiMacではApple TV、または6月以降にApple Musicが対応するドルビーアトモスによる空間オーディオコンテンツを再生した時にベストな没入体験が得られることになりそうです。

iMacのオーディオシステムの実力をフルに活かすためには、スピーカーから出力されるサウンドを劣化させないように、本体とデスクトップスタンドの間にできる空間にモノを置かない方が良いと思います。例えば、iMacの手前にフォトスタンドや卓上カレンダーを置いてしまうと、左右の音のバランスが崩れる原因にもなりかねません。スピーカーで映画や音楽を視聴する時だけでも、デスクトップのまわりにあるモノを片付けて視聴することをおすすめします。

  • 本体のボトム側に音の出口となる開口部を設けています

  • 夜間の音楽やシアターリスニングには、AirPods Maxなどワイヤレスヘッドホン・イヤホンとの組み合わせが好相性です

新しいiMacは、上位モデルが最大2TB、7コアGPUのスタンダードモデルも最大1TBのSSDをオプションとして選び、ストレージ容量のグレードアップができます。静音性能の高いSSDストレージであることに加えて、Apple M1チップは電力効率が高く、2基の小さな空冷ファンだけで十分な放熱ができることから、駆動時の騒音レベルを10デシベル以下にまで抑えています。ハイレゾリューションオーディオを最良の環境で存分に楽しめる「静音デスクトップPC」としても、新しいiMacは注目に値します。

ひとつ気になる点があるとすれば、本体からUSB-A端子が省略されてしまったため、ヘッドホンアンプやUSB-DACと接続する際には多くの場合にUSB-Cからの変換アダプターやハブが必要になることです。音質の劣化を抑えながら上手に高音質デスクトップオーディオを楽しむ環境を整えたいものです。

  • 上位モデルのiMacは、背面にThunderbolt/USB 4ポートを2基、USB 3ポートを2基搭載しています

  • 左側面に3.5ミリヘッドホン端子を搭載

  • 従来のUSBインターフェースを採用する外部オーディオ機器は、USB-C変換アダプターを介して接続。SDカードスロットも省略されています

Apple Arcadeの4Kゲームも大迫力

新しいiMacの高画質・高音質は、Apple Arcadeで配信されているゲームコンテンツを楽しむ際にも最良の効果を発揮します。macOS 11 Big Surは、ソニーのPlayStation 5用ワイヤレスゲームコントローラー「DualSense」の接続にも対応しています。4.5K Retinaディスプレイと、4Kの高精細なグラフィックスを丁寧に作り込んだ新作ゲーム「ファンタジアン」との相性も抜群に良好です。

  • 最新のmacOS 11 Big Surは、PlayStation 5のワイヤレスゲームコントローラー「DualSense」に対応しました

また、新しいiMacにビルトインされている1080p FaceTime HDカメラ、3基のユニットによるマイクアレイの性能がそれぞれとても高いので、ビデオ通話の際には相手にクリアな映像と音声を届けることができます。

在宅リモートワーク環境に外付けのカメラやマイクを買い足さなくても、1台のオールインワンデスクトップのiMacだけでビジネスパーソンとしての魅力がアップするのであれば、次のパソコンの買い換え・買い増しはエンターテインメントの性能も充実する新しいiMacが断然“お得”と言えるのではないでしょうか。