半導体市場調査会社である米IC Insightsは、2020年における半導体企業のIC売上高を本社所在国・地域別に集計した調査結果を発表した。

それによると、IC市場の55%を米国企業勢が占める結果となった。また、IntelやMicron Technology、Texas InstrumentsなどといったIDMのシェアは50%、Qualcomm、AMD、NVIDIAなどのファブレスのシェアは64%となっている。

米国に次ぐ2位となったのが韓国で、IC市場のシェアは21%。ただし、Samsung ElectronicsやSK HynixといったメモリIDMの売り上げがほとんどで、ファブレスの売り上げの割合は1%程度となっている

以降、台湾7%、欧州6%、日本6%、中国5%となっている。台湾はMediaTekのようなファブレスの売上高は含まれているが、TSMCのようなファウンドリの売上高は含まれていない(これはほかの国・地域も同様)。これは、ファウンドリはいわば下請けであり、その売上高は依頼主である半導体企業の売り上げとして計上されているためである。

また、欧州ならびに日本はファブレスのシェアが1%かそれ以下となっており、韓国同様に存在感がない。一方の中国はメモリの製造が本格的に立ち上がっていないこともあり、IDMのシェアはごくわずかで、ファブレスのシェアが15%と高いのが特徴となっている。中国全体としてのIC市場シェアは5%ほどだが、今後、メモリメーカーが立ち上がればIDM市場でのシェアも増加し、日本、欧州、台湾を抜く可能性が高い。IC Insightsでは、「全体として、米国に本社を置く企業がIDM、ファブレスともにシェアを有しており、世界的に見てもっともバランスがとれている」と指摘している。

  • IC Insights

    2020年の各国・地域のIC売上高シェアとIDM売上高シェア、ファブレス売上高シェア (出所:IC Insights)

日本のIC市場シェアは30年間で49%から6%へ減少

日本は1990年、世界のIC市場のほぼ半分となる49%を占めていた。DRAMだけに限れば、Intelを蹴落とす勢いで8割を超すシェアを持つ「半導体大国」であった。しかし、それから30年にわたり、シェアは低下の一途をたどり、2020年には6%まで低下した。欧州企業も1990年には9%あったが、2020年には6%へと、市場シェアを徐々に下げており、米国ならびに日本以外のアジア・太平洋地域の伸びが顕著となっている。

特に日本を除くアジア勢は、1990年は4%ほどであったシェアが2020年には33%に増加しており、これを年平均成長率(CAGR)にすると15.5%に相当しており、これはIC市場全体のCAGR7.7%を大きく上回る伸びとなっている。

  • IC Insights

    1990年から2020年までの30年間にわたる各国・地域のIC市場シェアの変遷 (出所:IC Insights)

なお、日本は、国家として半導体に対する長期的な戦略が打ち出せておらず、政策が刹那的であることもあり、一部では、外資系ファウンドリに日本での工場建設を要請するという噂もあるが、主な発注者であるファブレスの市場シェアが1%ほどと、数が少ない現状では、実際に工場を建てる経済合理性は皆無であろう。