モトローラ・モビリティ・ジャパンの最新スマートフォン「motorola razr 5G」が3月26日に発売されました。2000年代に一世を風靡した携帯電話「Razr」のスマートフォン版である本機。折りたたみ機構を備えたRazrスマートフォンとしては2代目にあたりますが、日本で発売されるのは今回が初。そのrazr 5Gの実力を見てみました。

  • スマートフォンとは思えないコンパクトなサイズのrazr 5G。直販の「MOTO STORE」価格は約179,800円

    スマートフォンとは思えないコンパクトなサイズのrazr 5G。直販の「MOTO STORE」価格は約179,800円

伝説の名機再び、スマートな縦折りスマホ

razr 5Gは、開いた状態だと通常のスマートフォンのようにボディ全体がディスプレイとなっていますが、そのまま中央で折れ曲がり、閉じられる折りたたみスマートフォン。フリップタイプで、フィーチャーフォン時代であれば一般的なスタイルです(いわゆる“パカパカケータイ”ですね)。

  • 開けば一般的な6.2インチ(2,142×876ドット)スマートフォン

  • 閉じれば(手が大きめならばどうにか)手のひらに収まるサイズ。背面にも2.7インチディスプレイが付いています

フィーチャーフォン時代のRazrは、この折りたたんだときの形状がシャープでメカ的、そして非常にコンパクトということで人気を博しました。そして折りたたみスマートフォンとなったrazr 5Gは、そのデザイン性を踏襲しています。

平たいスマートフォンとは異なり、画面下部に大きく盛り上がった部分があります。本体を折りたたむと、上部がこの部分にピッタリとはまり、横から見ると鋭利な刃物のような薄さになります。フィーチャーフォン時代よりも柔和な外観ですが、それでもたたんだときに「カッチリ」ハマる感じは見事です。一見すると、これが折りたたみスマートフォンとは思えません。

  • 下部には膨らみ。Razrシリーズの伝統的なスタイルです

  • 折りたたむとこれがぴっちりとハマります

  • 隙間なくディスプレイが折りたたまれています

  • 裏返してみると、懐かしいフィーチャーフォンのようにも見えます

開いて横から見たスタイルも、フィーチャーフォン時代のRazrを彷彿させるデザインです。こう言い続けるのは懐古的ですが、一般的なスマートフォンに比べてもシャープで薄型のデザインはスマートに見えます。

  • 側面から見ると薄型のスマートフォン

本体サイズは169.2(H)×72.6(W)×7.9(D)mm、192g。ディスプレイサイズは6.2インチHD+(2,142×876ドット)、アスペクト比は21:9なので、サイズとしては通常の大画面スマートフォンといった感じです。それが、折りたたむと91.7(H)×72.6(W)×16(D)mmになります。縦折りなので当然横幅は変わりませんが、長さは約半分に、厚みは逆に倍になります。

  • 折りたたんだ側面。厚みは増えますが、シャープなデザインです

  • 折りたたんだ状態での上部と底面

折りたたむとコンパクトなサイズになり、持ち運びに大きなメリットがあります。開けば6.2インチの大画面になるので、コンパクトサイズで持ち歩きたいという人にとっては便利でしょう。

ボディの側面に曲面を生かしたデザインは、折りたたんだ状態で手のひらにフィットして持ちやすく、開いた状態でも重量バランスがよいです。画面は大きいのですが、ヒンジなどの構造上、狭額縁にはなっておらず、上下左右のベゼルは太めです。

  • 全画面ディスプレイとはいえ、周囲のベゼルは昨今では太め。ただ、それ自体は誤タッチが減って持ちやすさという意味では有利な点です

  • 背面は折りたたみ構造のため2つのパーツに分かれています。上下双方にバッテリーが内蔵されています

背面指紋センサーは閉じた状態だと触れやすい位置ですが、開くとちょっと低すぎて使いにくい位置と感じました。ただ、日本未発売の前モデルでは正面の膨らみにセンサーがあり、前モデルよりはタッチしやすい位置に変わりました。折りたたみ時にロック解除してそのまま開くと、ロック解除された状態で開けるのでいい感じです。

  • 折りたたんだ状態で背面。Mのロゴは指紋センサー

  • ディスプレイを折りたたむ途中。この位置で曲がっているのですが、開いてみると(カーブ部分は)ほとんどわかりません。なお、折りたたみは開くか閉じるかの2択で、途中で固定はできません

下部にある膨らみは、開いた状態で使っていても特に邪魔には感じませんでしたが、横持ちでゲームをする場合など、使う状況によっては気になるかもしれません。この部分はデザインだけでなく、構造上も重要で、SIMカードスロットに加え、5Gアンテナやスピーカーなどを配置しているそうです。

折りたたみならでは、快適操作の工夫とは

razr 5Gは折りたたんだ状態だと、スマートフォンとしては格段に小さくなります。その状態でも、背面のクイックビューディスプレイでさまざまな情報を確認できます。2.7インチと比較的大きめですが、タッチパネルを搭載し、この画面でもスマートフォンのように使えるというのがポイントです。

  • クイックビューディスプレイは比較的大きめで、十分な視認性があります

  • 背面の指紋センサーかメインカメラの顔認証でロック解除できます。アプリを登録しておけば、クイックビューディスプレイ単体でアプリが起動できます

Android内部からは外部ディスプレイと認識されているようで、アプリによっては設定で権限付与しないと起動できないものもありますが、多くのアプリがクイックビューディスプレイで起動できました。

  • 「外部ディスプレイ」の設定。ここでクイックビューディスプレイを設定できます

  • 一部のアプリでは利用のための権限付与が必要なようです

  • こちらはデフォルトで登録されていた電卓アプリ。なかなか実用的です

  • 例えばGmailには権限付与が必要でした

  • Gmailを起動してみました。十分に内容が確認できます。もちろん、メイン画面と同じ操作が可能

  • 新規メールも作成できました

  • メールなどの通知もクイックビューディスプレイに表示され、通知で大まかな内容を確認することもできます

アプリにもよりますが、この2.7インチの画面サイズに対応できれば、そのままアプリが起動して使えます。例えば、閉じた状態で電源ボタンを2度押しするとGoogleアシスタントが起動し、話しかけて使えます。回答は音声ですが、イヤホンを使っている場合などなかなか便利です。

  • 電源ボタン2度押しでGoogleアシスタントが起動します。イヤホンを使っている時ならさらに便利です

また、手にスマートフォンを持って2回ひねるとカメラが起動するクイックキャプチャー機能を活用して、クイックビューディスプレイをファインダーとして撮影できます。インカメラではなくメインカメラを使う形になるので、高画質な自撮りができます。

  • 使い勝手の良い自撮り機能

  • カメラの機能は普通に使えます

クイックビューディスプレイの活用法としては、PayPayのようなコード決済が便利そうです。PayPay以外にもau PAYは起動、コードの表示はできましたが、すべての決済アプリが動作するかはわかりません。それでも、いちいちメイン画面を開いて使うより手軽な印象でした。

  • 例えばPayPay。コード決済が使えるのも便利です

電卓のようなちょっとしたツールを割り当てるのも便利ですが、Googleマップでの道案内を表示し、次の曲がり角をすぐに確認する、といった使い方も便利そうです。

  • Googleマップのルート案内を表示。拡大表示すれば、曲がるべき場所もすぐ確認できます

ちなみに、クイックビューディスプレイをオンにするときにも、メイン画面で設定したロック解除が必要です。実は背面の指紋センサーは折りたたんだ状態の方が触れやすく、解除は簡単です。また、顔認証を設定しておけば、クイックビューディスプレイを見るだけでメインカメラの顔認証が動作してロック解除されるので手軽です。

もちろん、メールなどの通知も確認できます。単にタイトルだけでなく、内容も確認できるので、わざわざ本体を開く必要はありません。ちょっと矛盾も感じますが、もともとrazr 5Gの開発背景に、「コンパクトなスマートフォンが持ちたい」「一日中スマートフォンを使うわけではないという」というニーズがあったといいます。

その意味では、本体を開くことなくスマートフォンの機能が使えるクイックビューディスプレイは、razr 5Gの目的にかなった機能といえそう。ちょっと通知を確認したり、地図を見たり、コード決済を起動したり、といった使い方にピッタリです。

カメラ機能をチェック、画質は標準的だが気になる点も

razr 5Gのカメラは、アウトカメラとして4,800万画素センサーを採用。画素ピッチ 1.6um、35mm判換算時の焦点距離は26mm、レンズのF値はF1.7、光学式手ブレ補正やレーザーAFも搭載します。昨今のスマートフォンカメラとしては珍しくカメラはひとつだけです。

  • 開いた状態のカメラ機能。操作インタフェースは一般的なものです

  • アウトカメラはシングルカメラ。横にあるのはLEDフラッシュです

インカメラは2,000万画素センサーを搭載。レンズの焦点距離は25mmとやや広く、F値はF2.2。画素ピッチは1.6μmとなっています。どちらも4つのピクセルを1つのピクセルとして扱うクアッドピクセルテクノロジーを搭載しているため、記録画素数はアウトカメラが1,200万画素、インカメラが500万画素となっています。

  • 画面上部にあるインカメラもシングルカメラです

画質は、可もなく不可もなくといったところ。ハイエンドスマートフォンのカメラと対抗するには力不足ですが、スナップ撮影では問題のない写りをします。見た目通りの色再現でシャープネスも適切。背景にざらつきは感じますが、いたって一般的です。実際の作例を見ていきましょう(下記の作例は1,200ドットにリサイズ済み。画像クリックで最大4,000ドットの原寸大写真を表示できます)。

  • 光が回った被写体であればクリアな描写。細部の描写も良好です

  • これは撮影時にプラス補正していますが、おおむね安定した写真が撮影できます

  • 背景を大きくとった3枚。質感も良く十分な画質ですが、背景がざわつきます

  • ここまで細かい被写体になると細部の描写が厳しくなってくるようです

  • 色味に派手さはないのですが、ナチュラルで見た目通りという印象

撮影機能もそれなりにあり、単眼ながら背景をぼかして撮影するポートレートモードも備えています。カメラ機能としては標準的でいいのですが、シャッターボタンの反応が悪いのが気になりました。試用機だからなのか、筆者が触った製品はシャッターボタンをタッチしてから撮影するまでの時間が妙に長かったです。これはストレスがたまるところで、アップデートなどで解消して欲しいところです。

手首をひねってカメラを起動するクイックキャプチャーは閉じた状態、開いた状態いずれでも動作し、感度良く快適に動作するので、カメラの起動自体はとても簡単です。閉じていたらクイックビューディスプレイで撮影できるので、自撮りを中心に手軽に撮影できます。カメラ起動中に本体を開閉しても、そのまま撮影は続行するのも便利です。

クイックビューディスプレイにすると、ディスプレイのサイズに合わせるためかアスペクト比が1:1になります。そのため、Instagramのようなスマホアプリライクな写真は撮れますが、画角が狭くなる点は注意が必要です。

とはいえ、折りたたんだ形状での自撮りは想像以上に使いやすく、自撮りに最適なカメラといってもいいぐらいのデキ。クイックビューディスプレイをタッチするとシャッターが切れるのですが、手のひらに収まる形状でとても撮影しやすいのです。手のひらをカメラに向けると撮影するジェスチャー機能もあり、併用することで気軽に自撮りできます。

ハイエンドではないが必要十分なパフォーマンス

パフォーマンスとしては、CPUにSnapdragon 765Gを搭載しているため、一般的な用途では問題ないでしょう。ただ、約18万円という価格であればハイエンドSoCを搭載して欲しかったところ。ただ、そうなるとさらに価格が上がってしまいそうではありますが。

ベンチマークテストをしたところ、Geekbench 5.3.2ではSingle-Core Scoreが583、Multi-Core Scoreが1660。3DmarkではWild LifeでOverallスコアが1674、GFXBenchではマンハッタン3.1が1987フレーム、1080pマンハッタン3.1オフスクリーンが1450フレーム、などとなりました。

  • Geekbench、3Dmark、GFXBenchのテスト結果の一部

基本的にはミドルハイといった印象で、ヘビー級のゲームは難しいでしょう。もともとデザイン的にも横持ちにしてゲームをバリバリやる、というようなことは想定しておらず、ゲーミング重視というより、軽快に持ち歩きたいというニーズに応える製品といえます。

  • Motorolaスマートフォン特有の便利機能も搭載しています

razr 5Gは、1日100回、5年で20万回という開閉テストを行っているそうで、折りたたみの下半分を持って手首を振る勢いで本体を開く、という動きも問題ないとしています。実際に、親指の爪を少し折りたたみ部分に差し込み、シュビッと手首を振ると開きます。個人的には、もうちょっと軽く、シャキッと開いてくれると良かったのですが、“片手開き”も昔のRazrのような感じでちょっとかっこいいスタイルです。

razr 5Gの開閉操作。クイックキャプチャーでカメラを起動したのちに勢いよく開く、という操作をしています。これはテスト用にやりすぎるぐらい強くやっていますが、もう少し軽く振っても開きます

このように、全体としてスマートで特徴的なデザインが、razr 5Gの大きな魅力です。持ち歩きの折りたたんだ状態でも実用的に使え、必要に応じて大画面が使えるというのは、折りたたみスマートフォンとしてあるべき姿だと感じました。

  • ちなみにこちらは本体の入っているケース。かなりインパクトのあるケースです

motorola razr 5G(SIMフリー版)

  • OS: Android 11
  • CPU: Qualcomm Snapdragon 765G
  • 内蔵メモリ: 8GB
  • ストレージ: 256GB
  • ディスプレイ: 6.2インチ(2,142×876ドット)、2.7インチ(800×600ドット)
  • バッテリ容量: 2,800mAh
  • メインカメラ: 4,800万画素クアッドピクセルテクノロジー
  • サブカメラ: 2,000万画素クアッドピクセルテクノロジー
  • 5G: n3/n28/n77/n78/n79(ミリ波非対応)
  • LTE: B1/B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/B13/B17/B18/B19/B20/B26/B28/B34/B38/B39/B40/B41/B42/B46/B66/B71
  • Wi-Fi: Wi-Fi 5(IEEE802.11a/b/g/n/ac)
  • Bluetooth: 5.1
  • 防水: ―
  • 防塵: ―
  • 本体サイズ: W72.6×H169.2×D7.9mm(最薄部・開いた状態)、W72.6×H91.7×D16.0mm(最薄部・折りたたみ時)
  • 重さ: 約192g
  • カラーバリエーション: ポリッシュグラファイト