既報の通り、NVIDIAはGeForce RTX 3060を2月25日より発売する。秋葉原で深夜販売を行うのかどうかは不明だが、マイニング絡みもあって秋葉原のビデオカードが払底している昨今では、仮に販売が行われてもやっぱり蒸発必至な気はする訳だが、それはそれとして今回も事前に性能を確認することが出来たので、ご紹介したい。

  • GeForce RTX 3060を搭載したグラフィックスカード

    GeForce RTX 3060

スペック及びテスト環境

まず表1にGeForce RTX 3060と関連しそうな製品のスペックをまとめてみた。発表時の記事にもあるが、GeForce GTX 1060比で2倍、GeForce RTX 2060と比較してもそれなりに性能が向上する、というのが同社の説明である。ここでGeForce RTX 2060 SuperではなくGeForce RTX 2060というところがポイントなのだが、これに関してはベンチマーク結果を見ながら色々分析してゆきたいと思う。なお構成を見ると判るが、メモリにはGDDR6の15Gbps版を利用している。やっと15Gbps版がこのクラスのビデオカードに使えるようになったのか、という感じだ。

■表1
GeForce GTX 1660 Ti GeForce RTX 2060 Super GeForce RTX 3060 GeForce RTX 3060 Ti
コード名 TU116 TU106 GA106 GA104
SM数 24 34 28 38
CUDA Core数 1536 2176 3584 4864
Tensor Core数 N/A 272 112 152
RT Core数 N/A 34 28 38
Texture Unit数 96 136 112 136
ROP数 48 64 48 64
GPU Base Clock 1500MHz 1470MHz 1320MHz 1410MHz
GPU Boost Clock 1770MHz 1650MHz 1771MHz 1670MHz
Memory種別 GDDR6 GDDR6 GDDR6 GDDR6
Memory Clock 6000MHz 7000MHz 7501MHz 7000MHz
Memory容量 6GB 8GB 12GB 8GB
Memoryバス幅 192bit 256bit 192bit 256bit
Memory Bandwidth 288GB/sec 448GB/sec 360GB/sec 448GB/sec
TGP 120W 175W 170W 200W

GeForce RTX 3060はGA106という新ダイを利用している、こちらは最大30SM構成のもので、GeForce RTX 3060 Ti/3070に利用されているGA104の48SM構成から大分減っている。ただこれを全部使うのではなく、28SMのみ有効としている。ちなみにGPU-Zの情報によればGA106はダイサイズ276平方mm、トランジスタ数132.5億個となっている。

Photo01: GA106のブロックダイアグラム。GPCあたり10SMで、ただし3GPC構成になっており、GPCあたり8SM、トータル6GPCのGA104とずいぶん構成が違う。

さてこのGeForce RTX 3060はFounders Editionは存在しないため、OEMメーカーのボードを利用して評価を行う事になる。今回はZOTACのGaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC(Photo02~08)を利用した。ちなみに商品名にも"OC"とあるようにOC動作が前提になっており、定格は1320MHzだがBoost Clockは1807MHzまで引き上げられている事がGPU-Zで確認できた(Photo09)。

  • Photo02: パッケージは比較的小ぶり。

  • Photo03: Dual Fan構成。ファンのフル稼働時でも騒音レベルは低かった。

  • Photo04: 裏面がシールドで覆われているのも、このクラスのビデオカードとしてはちょっと珍しい気も。なお寸法は全長235mm×高さ105mm×厚さ40mm、重量は637.4g(いずれも実測値)となっている。

  • Photo05: 出力はDisplayPort×3、HDMI×1。HDMIが一番下側に位置するのがちょっと目新しい。

  • Photo06: ヒートシンクが2分割され、長さが違う関係でちょっと見た目が珍しい事に。

  • Photo07: 補助電源コネクタは8pin×1。基板の長さはかなり短く、それもあって結果的に補助電源コネクタがカード中央に位置する感じになっている。

  • Photo08: カード底面側。結構ヒートパイプの取り回しに苦心している感じが判る。

  • Photo09: GPU-Z 2.36.0では認識されず、最新の2.37.0で認識された。なおMaximum Power Limitは110%に設定されており、計算上は187Wあたりまで増える格好。

さて表1でも示したが、今回は対抗馬としてGeForce GTX 1660 Ti、GeForce RTX 2060 Super、GeForce RTX 3060 Tiの3製品を用意した。NVIDIA的にはGeForce GTX 1060からのアップグレードに最適、というメッセージを発信しているが、実際の店頭に並んでいる(勿論今はすべてのGPUカードが店頭から蒸発している、という異常事態に陥っている事はまた別にして)のはGeForce RTX 2060 Superか、多少グレードが下がるGeForce GTX 1660 Tiあたりとなる訳で、購入の際にはこれらが競合というか比較対象の相手になる訳だ。それぞれ発表時の価格は

GeForce GTX 1660 Ti $279
GeForce RTX 2060 Super $399
GeForce RTX 3060 $329
GeForce RTX 3060 Ti $399

であり、これで比較するとGeForce RTX 3060のポジションはGeForce RTX 2060 SuperとGeForce GTX 1660 Tiの中間位になるはずだが、1年以上前の製品と同じだったら意味がない訳で、個人的にはGeForce RTX 2060 SuperとGeForce RTX 3060 Tiの中間位に位置している事を期待したいところである。このあたりの期待も含めてこのラインナップとした。

なおGeForce GTX 1660 TiについてはMSIからGeForce GTX 1660 Ti GAMING X 6G(Photo10~16)を借用した。こちらもOCモデル(Boostが1770MHz→1875MHz)になっているが、現実問題としてOCで無いモデルは殆ど流通していないから、これで構わないと判断した。

  • Photo10: パッケージは若干大きめ(といっても、GeForce RTX系に比べると小さいが)。

  • Photo11: こちらもファンノイズは全く気にならず。もっともそもそも消費電力がそう高くないという事情もあるだろうが。

  • Photo12: こちらも背面はフルカバード。寸法は全長245mm×高さ123mm×厚さ40mm、重量868.2g(いずれも実測値)。

  • Photo13: 出力はこちらもDisplayPort×3、HDMI×1。というかこの順番がNVIDIAのカードでは一般的なのだが、よく考えるとなんでこんな位置なのだろう?

  • Photo14: 端の処理の関係でカードの全長が10mm弱長くなっている。

  • Photo15: 補助電源コネクタはこちらも8pin×1。GeForce RTX 3060に比べると基板が長い、というかこちらがこれまでは普通で、むしろGeForce RTX 3060が妙に短いというべきか。

  • Photo16: ほぼカード全部をヒートシンクが覆う、よく見かける構造。

その他のテスト環境は表2の通りである。今回からSSDをPCIe Gen4対応のFireCuda 520にしたほか、OSはWindows 10 20H2にアップグレードしての実施である。

■表2
CPU Ryzen 9 5800X
Motherboard ASRock X570 Pro4
BIOS Version 3.90
Memory CFD W4U3200CM-16G×2
DDR4-3200 CL22
Video MSI GeForce GTX 1660 Ti GAMING X 6G
NVIDIA GeForce RTX 2060 Super Founder Edition
NVIDIA GeForce RTX 3060Ti Founder Edition
ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC
Driver GeForce Driver 461.40 DCH WHQL GeForce Driver 461.64 DCH
Storage Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 10 Pro 日本語版 20H2 Build 19042.804

ちなみにグラフ中の表記は

  • 1660Ti:MSI GeForce GTX 1660 Ti GAMING X 6G
  • 2060S:NVIDIA GeForce RTX 2060 Super Founder Edition
  • 3060:ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC
  • 3060Ti:NVIDIA GeForce RTX 3060Ti Founder Edition

となる。また、今回のテストではDXRTは原則として利用していない(一応GeForce GTX 1660 Ti以外はDXRT対応ではあるのだが)。このグレードのGPUでRTXをOnにすると、かなり実用性に欠ける結果になるのが見えているというのがその理由である。一方DLSSについては実施しているが、こちらは個々のテストの中で言及する。解像度表記は何時もの通り

  • 2K:1920×1080pixel
  • 2.5K:2560×1440pixel
  • 3K:3200×1800pixel
  • 4K:3840×2160pixel

とさせていただく。

◆3DMark v2.17.7173(グラフ1~4)

3DMark v2.17.7173
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark

2月11日にMesh Shaderのテストが追加された一方で、SkyDiverも古いということでサポートから外れた(まだ実行そのものはやれば出来る)。ただMesh ShaderはまだFeature Testということで今回は触れずに、NightRaid~TimeSpy Extremeまでで比較してみた。

  • グラフ1

ということでグラフ1が3DMark Scoreであるが、意外にGeForce RTX 3060が伸びない。GeForce RTX 2060 Superに僅かながら及ばない、という結果に終わっている。またGeForce RTX 3060 Tiとの差はかなり大きいとして良いと思う。

  • グラフ2

  • グラフ3

  • グラフ4

この性能差の殆どはGraphics Test(グラフ2)に起因するものであって、もう純粋にGeForce RTX 3060のフレームレートが微妙にGeForce RTX 2060に及ばない、という話である。CPU/Physics Score(グラフ3)は見ての通り差が無いから、当然Combined Score(グラフ4)も結局Graphics Testの結果がそのまま反映される形になる。とりあえず3DMarkの結果は GeForce GTX 1660 Ti < GeForce RTX 3060 ≦ GeForce RTX 2060 Super < GeForce RTX 3060 Tiとなった。

◆SuperPosition v1.1(グラフ5~11)

SuperPosition v1.1
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition

もう一つSynthesis BenchmarkとしてSuperPotisionも実施してみた。今回はエントリクラスのビデオカードということで、

  • Shader Quality:Medium
  • Texture Quality:Medium
  • Depth of Field/Motion Blur:On

で実施してみた。

  • グラフ5

  • グラフ6

  • グラフ7

  • グラフ8

  • グラフ9

  • グラフ10

  • グラフ11

まずグラフ5~7が平均/最大/最小フレームレートであるが、ここでも3DMarkの結果が見事に再現した格好だ。実際フレームレート変動(グラフ8~11)を見ても、GeForce RTX 2060 SuperとGeForce RTX 3060のグラフは殆ど相似形で、ちょっと(1~5fps)だけGeForce RTX 2060 Superの方にオフセットが付いている、という感じになっている。とにかくSynthesis Benchmarkでは、GeForce RTX 3060は今一つというのが結論になる。