カシオ計算機は2月9日、小型プロジェクターの新シリーズ「FORESIGHT VIEW」の立ち上げを発表しました。第1弾として、洗練されたデザインの「CX-F1」「CX-E1」を3月下旬から発売予定です。価格はオープンで、推定市場価格(以下すべて税別)は150,000円前後から。

  • カシオの新たなプロジェクター製品「FORESIGHT VIEW」シリーズ

FORESIGHT VIEWシリーズの特徴は、2,000ルーメンを実現しながらA5サイズ(215×43×152mm)・約1.1kgと、軽量コンパクトに仕上がっているところ。カシオ調べによると世界最小・最軽量とのこと(ISO/IEC 21118またはJIS X 6911準拠で明るさ2,000ルーメン以上のプロジェクターとして。2021年1月11日時点)。気軽にビジネスバックに入れて持ち運ぶ利用シーンを想定しています。

  • カラバリは、EXPRESSION RED(エクスプレッションレッド)、KNOWLEDGE NAVY(ナレッジネイビー)の2色で展開

外出先で商談やプレゼンテーションを行うときには、手持ちのデバイスといかに簡単に接続できるかが大きなポイントのひとつ。FORESIGHT VIEWは「2ステップ投影」として、(1)付属のACアダプターを接続して、(2)PCなどのデバイスとHDMIケーブルでつなぐだけで投映できるとしています。バッグから取り出したりPCを準備する時間を含めても、トータルで1分はかからなそうです。

  • 接続から投映まではたったの5秒。機械に詳しくない人でも扱いやすいというメリットも

無線LAN対応モデルのCX-F1なら、スマホやタブレットとワイヤレス接続させることも可能です(もちろんノートPCとも)。推定市場価格(税別)は、無線LANと音声出力(ステレオミニジャックおよび1Wモノラルスピーカー内蔵)に対応したCX-F1は170,000円前後、無線LANと音声出力に対応しないCX-E1は150,000円前後となっています。

なお、CX-F1の無線LANは内蔵ではなく、同梱の無線LANアダプターを接続して使います。無線LAN規格はIEEE802.11b/g/nに準拠(2.4GHz帯)。5GHz帯のIEEE802.11ax/ac/a/nに対応していないのはちょっと残念なところです。

  • 無線LAN・音声出力の有無とカラバリで4モデルを展開。CX-F1はスピーカーも内蔵

オプションのバッテリー「YA-B10」(税別25,000円前後)を使用すれば、出先の電源環境を気にしないで使えます。電源を取れない会議室やオープンスペース、電源があってもコードが短くて届かないというケースでも、バッテリーがあれば慌てずに集中してプレゼンできそうです。バッテリーの充電時間は約4時間、投映時間はCX-F1が最大約3.1時間、CX-E1が最大約3.3時間となっています。

  • オプションのバッテリー(別売り)で駆動できる仕様

そのほかおもな仕様は、表示素子がWXGA 0.65型DLPチップ(1,280×800ドット)、レンズが手動の光学1.2倍ズーム、投映サイズが30型~300型、焦点調整が手動フォーカス、光源がレーザー&LED、台形補正が縦横±30°(自動補正は縦±30°)です。

新生プロジェクション事業

オンライン発表会に登壇したカシオ計算機 執行役員 事業開発センター長の中山仁氏は、「プロジェクション事業を全面的に見直す必要があります」と切り出しました。理由として、(1)既存の設置型プロジェクターはこれ以上の成長が見込めない、(2)カシオ計算機は独自のプロジェクション技術資源を保有している、(3)独自資源を生かせる&成長が期待できる領域が顕在化しつつある……という3点を挙げています。

  • プロジェクション事業の新たな展開について説明する、カシオ計算機 執行役員 事業開発センター長の中山仁氏

実際、2018年まで微減傾向が続いていたビジネスプロジェクター市場は2019年に前年比8割に下落、2020年にはコロナ禍もあり大幅に落ち込みました。2021年以降も市場が縮小していく見込みです。

一方で、カシオ計算機は2010年に2,000ルーメン以上のプロジェクターにおいて世界初となる、水銀ランプを使わない半導体光源を開発しました。レーザーとLEDを組み合わせた独自の光源システムによって、このクラスにおいて圧倒的に小さい・軽い・低消費電力のプロジェクターを実現しています。

  • カシオが持つ独自の光学設計技術が進化

  • 省スペース冷却実装技術も生かしていく考えです

カシオ計算機の独自技術を生かせる、そして今後の成長が見込める分野はどこか――。中山氏によれば、それはプロジェクションマッピングなどで知られる「プロジェクションAR」分野とのこと。「スマートファクトリー、スマートホーム、スマートビルディングなどを通じて確実に成長していく分野です。自動車などモビリティ領域にも広がることが期待されています」(中山氏)と説明します。

そこで、プロジェクションAR向けに開発する「組込領域」を事業の軸としながら、「コミュニケーション領域」では人と人の対面時に利用するプロジェクター製品を展開。エンドユーザーに直接貢献することでブランドの確立を目指していく、と語りました。

  • グローバルニッチを目指す、新生プロジェクション事業

USB PD(Power Delivery)対応は?

報道陣からの質問には、事業開発センターの古川亮一氏が回答しました。

FORESIGHT VIEWには「ひらめきの窓」「新たな光を見つける」といった意味を込めたと説明。今回の新製品では、年間の生産台数を10,000台に想定しています。デザインのこだわりについて聞かれると、古川氏は「セレクト雑貨のようなたたずまいで、ユーザーの信頼感やステータスを高めていく。カラーバリエーションも含めて、そのあたりにこだわりました」と回答しました。

USB PD(Power Delivery)は使用できるのか、という質問には「低消費電力が本製品の大きな特徴ながら、USB PDの能力では2,000ルーメンが実現できませんでした。今後の技術開発にご期待いただければ」(古川氏)。次回以降、第2弾として組込領域のプロダクトも出していくとしました。