Netflixは2月5日、日本で動画配信サービスを開始して以来、2度目となる料金プラン改定を実施します。画質と対応するサービスの内容によって3種類に分かれているプランのうち、ベーシックプランとスタンダードプランの月額料金が値上げされます。料金改定の詳しい内容と、実施の背景について解説します。

  • Netflix値上げ

ベーシックプランは990円、スタンダードプランは1,490円に値上げ

Netflixはこれまでにもサービスを提供する各エリアにおいて、適宜料金プラン変更を実施してきました。今回は日本におけるサービスが対象です。

料金が変わるプランは、個人でスマホやタブレットを使って見るのに最適な画質(最大480p)の「ベーシック」と、リビングルームの大画面テレビによる視聴に適した画質(最大フルHD/1080p)の「スタンダード」の2種類。スタンダードでは最大2台までのデバイスが同時に視聴でき、家族向けのプランと言えます。

2月5日からの新料金(税込)は、ベーシックが110円アップの990円、スタンダードが170円アップの1,490円になります。なお、4K/HDR対応の高画質コンテンツも視聴できる最高画質の「プレミアム」の料金に変更はありません。

  • Netflix値上げ

新しい料金は2月5日以降、新規に加入した会員から適用されます。既存会員については2月8日以降、順次メールで料金改定のお知らせが届くほか、アプリなどからNetflixにアクセスするとお知らせをポップアップ表示します。ベーシック/スタンダードプランを選択中のユーザーは、翌月以降の支払いから新料金が適用されます。

KDDIがauのスマートフォン向けサービスとして提供する「auフラットプラン25 Netflixパック」や、ジュピターテレコム(J:COM)の専門チャンネルとNetflixがセットで見られる「J:COM TV フレックス」のように、Netflixがパートナーと共同で提供するサービスについても今後順次、各社から料金変更のアナウンスがあるかもしれません。

良質なオリジナル作品を拡充。日本発の実写作品にも注力

Netflixは2018年にも日本で提供するサービスの料金変更を行いました。当時も、そして今回も料金を見直す理由について、Netflixは「ユーザーにより良質なエンターテインメントを提供するためのプラットフォームを充実させて、映画やドラマ、アニメなど作品数を着実に増やすため」とコメントしています。

2020年は初春から新型コロナウイルス感染症の影響が世界に拡大したことから、Netflixをはじめ各社が提供するホームシアターで楽しめる定額制動画配信サービスが現在も好調であると伝えられています。ネット動画に注目が集まる理由は、新しい生活様式にフィットした価値あるサービスであることも挙げられますが、テレビやスマホ、タブレットなどさまざまなデバイスを使って、いつでも・どこでも楽しめる質の高いコンテンツが増えてきたことも大きいでしょう。

Netflixでは2020年12月から配信を開始した『今際の国のアリス』に代表される、日本で制作されたオリジナルシリーズの作品が多くの新規会員を引きつけるマグネットの役割を果たしたようです。Netflixではサービスを展開する全世界でオリジナル作品の制作と配信にも力を入れており、作品の品質・数がともに充実しつつあります。

  • Netflix値上げ

    『今際の国のアリス』Netflixにてシーズン1全世界独占配信中
    (C)麻生羽呂・小学館/ROBOT

昨今はネット動画だけでなく、SNSやオンラインゲームなどさまざまな種類のエンターテインメントサービスが世界中で立ち上がり、多くのユーザーに楽しまれています。かたや、米国では2020年5月に新しい動画配信サービスの「HBO Max」もスタートしたり、Amazon Prime VideoにHulu、Apple TV+など、Netflixにとってのライバルとの競争も激しさを増しています。

Netflixでは今、全世界2億400万人以上の会員に向けてオリジナルコンテンツを配信しています。日本のアニメーション作品は特に世界中で高い人気を獲得していることから、今回の料金改定は“日本の強いコンテンツ”を継続的に発信するための足固めの策であるとも考えられます。

ただ、Netflixではアニメだけでなく、実写映像による映画やドラマの制作にも注力しながらラインナップのバラエティを広げることにも従来以上に力を注いでいくようです。オリジナルコンテンツは世界に向けて配信されるとはいえ、今勢いよく増えている日本のユーザーを引きつけるコンテンツをそろえたいNetflixの思惑も、2度目の料金改定の背景に透けて見えます。

なお、Netflixは2021年に25本を超える日本発オリジナル作品の配信を予定していることを年初に発表。実写作品では、日本のクリエイターを巻き込んだ新規プロジェクトが8本立ち上がる計画も明らかにしています。

【お詫びと訂正】初出時、全世界の会員数を「2億4,000万人以上」としていましたが、正しくは「2億400万人」でした。また、オリジナル作品の配信数について「Netflixは2021年に25本を超える日本発オリジナル作品の配信を予定していることを年初に発表。うちアニメ作品は16本です」としていましたが、2021年の25本以上の実写・アニメ作品の内訳は公開されていません。アニメ作品16本については2021年「以降」に配信する作品で、既に発表済みでした。お詫びして訂正いたします(2月5日 11:15)

高画質作品も増えてきたNetflix。今後の戦略に要注目

今回、プレミアムプランは利用料金の値上げ対象ではないので、同プランのユーザーの中には安心した人もいることでしょう。4K/HDR対応のテレビが広く普及したことで、そのメリットがフルに活かせるUltra HD 4K画質のコンテンツがNetflixにも徐々に増えています。同プランの料金はあえて据え置くことで、成長を減速させないように取り計らったのかもしれません。

  • Netflix値上げ

    Netflixの4Kコンテンツには「Ultra HD 4K」のアイコンが表示される

2020年にはアップルがDolby Vision方式のHDR高画質コンテンツの表示に対応するSuper Retina XDRディスプレイを搭載したiPhone 12シリーズを発売。そして、Netflixが配信するモバイル向けのコンテンツがiPhone 12シリーズで、Dolby Vision方式による高画質HDR映像のまま楽しめるようになりました。作品ページを訪れて、タイトルの下に表示されるDolby Visionのアイコンが目印です。

スマホやタブレットで数多くの高画質な映像が楽しめるコンテンツプラットフォームであることも、筆者がNetflixを長く利用している理由のひとつ。日本やアジア諸国には、元々スマホやタブレットでNetflixを視聴するモバイルユーザーが多くいるといいます。今後、同社が仕掛けてくるモバイル向けサービスの拡大戦略にも要注目です。

  • Netflix値上げ

    Super Retina XDRディスプレイを搭載したiPhone 12 Pro Max