MacやiPadに「mini」があるように、iPhoneにも初めて「mini」カテゴリが登場しました。新しいけれどなぜか懐かしくもある、不思議な存在感。1週間使用した現在、じわじわとその魅力を感じています。

このサイズ、この感触…何かを思い出す

数字では「小さい」と理解はしていました。スペックはだいぶ前に発表されていたし、発表会の動画もプレス写真も見て、公式サイトも散々読んでいました。でも、現物を見た瞬間思わず声が出てました。

「ちっさ!」

  • ボックスに入ったiPhone 12 mini

  • iPhone 12と比べるとこれくらいの違い

6.1インチサイズのiPhone 12と比べて、高さ15.2mm、幅7.3mmの違い。日常生活では1.5cmなんて誤差くらいにしか感じませんが、スマホのサイズとなると別物に思える差です。

手に持ってみると、軽い、そしてスッと手に馴染む。これは、懐かしの名機・iPhone SE(第1世代)ぽいのでは?

……第1世代のiPhone SE、いいヤツでしたよね。スマホのひとつの完成形と言えると思っていた5sのボディに、当時最新機種の6sと同じチップを積んで。6以降、「Plus」が出て大型化に向かっていましたが、このサイズを好むユーザーはわりと多くいました。だから小型車に高性能エンジンを積んだようなSEは、人気が出て当然でした。

身の回りでもSEユーザーを数多く見かけ、筆者は6s購入直後だったので、悔しい思いをしました。だいたいどんな人にも、迷っていたらSEを勧めておけば間違いありませんでした。

そうやってスマホがみんなのものになっていく時代でした。

  • 2016年3月に発表された第1世代iPhone SE。価格も魅力でした

……なぜか脳内で第1世代iPhone SEの記憶が蘇る、そんな面影が感じられました。

いま、誰にでも勧めていいモデルといえば

あの頃の初代SEのように、いま、どんな人に勧めてもだいたい間違いないモデルといったらどのiPhoneでしょうか。長らく待望の声が上がっていた第2世代iPhone SEは、確かに発売されてから人気モデルになっています。でもiPhone 12 miniを使ってみると、これから勧めるならこちらの方が良いのではないかと思うようになりました。

その理由は、大きく4つあります。

1)コンパクトで使いやすい

まずは、何といっても「小さい、持ちやすい、使いやすい」サイズ感。久々に感じるフィット感。片手で入力でき、危なっかしくない安心感。大きい方がスペックが上ってことになってますけど、スマホってこれでいいんじゃなかったっけ?

  • マスクでFace IDが使えない時に片手でパスコード入力ができるのは助かります。フリック入力キーボードも片手でOK

2)長く使える十二分なスペック

削ぎ落とされたように見えて何も諦めてないスペック。この先、長く現役でいられる実力者であることは間違いありません。

チップは他のiPhone 12シリーズと同じA14 Bionicを搭載。今後、OSやアプリに機械学習をバンバン使った機能が追加されてもついていけます。カメラもiPhone 12と同じ、広角と超広角のデュアル。ざっくり言うと、昨年モデル以上に暗い場所に強くなり、強烈な光があっても的確に対象を捉え、より失敗しにくくなっています。

  • iPhone 12と同じカメラを搭載。広角は絞り値ƒ/1.6に、超広角もナイトモード対応など、暗いところにより強いカメラに

動画も、映画レベルの鮮やかな映像を撮影できる「Dolby Vision対応HDRビデオ」に対応。4Kというだけでなく、色味と明暗の幅がこれまでよりグッと広がり、現状のトップレベルであるのはもちろん、当面は周囲が追いついてくるのを待つことになるでしょう。

  • 写真ではわかりにくいですが、同じHDRで撮影した動画でもiPhone 12 mini(上)と第2世代iPhone SE(下)で見え方がだいぶ異なります

3)次世代に通じる5G対応

現時点ではまだ一部に限られている5G通信対応エリアですが、NTTドコモが2023年3月までに人口カバー率70%到達を見込んでいるように、この先1〜2年で通信環境の大きな変化が予想されます。そうなった時にも、5Gに対応しているから新しいプランやサービスについていくことができます。

  • 5Gと4Gを同じ場所でテストした通信速度。これが当たり前になったら世の中なにか変わりそう

4)12シリーズで一番買いやすい価格

上位モデルは10万円超えが当たり前になってしまったiPhoneですが、iPhone 12 miniはその中ではもっとも買いやすい価格帯になっています。iPhone 12とほぼ同じスペックで各容量とも1万1,000円(税抜き)安く、昨年モデルのiPhone 11からは同じく1万円高いというポジションです。

  • iPhone 12/12 mini/11の価格比較。12と同じスペックが安く手に入ると考えると、コスパ良いのでは(税抜き)

普通に使う人みんなにお勧めできるモデル

唯一、残念なのはバッテリーがやや小さめであるところです。物理的に仕方のないことではあります。筆者の場合は、朝から使い始めて19時〜20時頃になると30%を切ることが多い印象でした。ただ、バッテリーが切れて困るようなことはなく、危なそうなら省電力モードにすればOK。省電力モードにしても、通常の使用で不便を感じることはありませんでした。

  • ゲーム、動画、SNSなど一日中使いまくる方にはiPhone 12 Pro Maxをお勧めします

こうしてみると、iPhone 12 miniはヘビーではない中間層までのユーザーになら誰に勧めても間違いないモデルになっているのではないでしょうか。もちろんエントリーモデルとしてiPhone SE(第2世代)の存在はあるのですが、もう少し積極的に写真や動画を楽しむ、カラバリを選ぶ、より長く使い続けるなど、意図を持って選びたい人にはminiを推薦したいと思います。

iPhoneは、少し前までみんなが使っているスマートフォンでした。それがだんだんとスゴい方、スゴい方へとアップデートが進み、いつの間にか普通の人が選びにくくなっていたように思います。「普通」という価値観は人それぞれだし、スマートフォン黎明期に比べて多様化が進んでいるため、定義するのは難しいところではあります。しかしiPhone 12 miniはそれを包括して、多様化が進む中でも幅広い人へ「普通に」勧められる貴重な存在になっていると言えるでしょう。