ワコムは11月17日~18日の2日間、「Connected Ink 2020」を開催しました。東京・新宿の特設会場ではさまざまな企業がブースを出展。また3つのステージでは、意欲的なセッションが実施されました。18日のサブステージでは、クリエイターの権利保護を目的にした5社プロジェクトの概要が発表されました。

  • クリエイターの権利を守る5社共同プロジェクトの概要が発表されました

創作活動が継続できるサイクル構築へ

セッションは「Creative Rights Initiative ~クリエイターがより豊かになり、安心して活動できる世界を目指して~」と掲げられ、ワコム、ピージーエヌ、ピクシブ、図書印刷、スタートバーンの5社による共同プロジェクトの概要が紹介されました。

各社から代表者が登壇。ワコムの石井亮次氏は「昨今、デジタルの創作物が増えていますが、著作権が不明になっているコンテンツも増加しています。ワコムでは、コンテンツが適切に保護され、利用され、正当な対価(収益)がクリエイターにもたらされ、創作活動が継続するサイクルをまわすことのできる仕組みの構築を目指しており、賛同した企業さんと一緒にプロジェクトがスタートしました」と説明します。その第1弾として、誰がその作品を作ったのか、誰が権利を保有しているのかが分かる仕組みを構築中とのこと。

  • ワコムの石井亮次氏。ワコムでは作品に「創作の証」を刻み込むウォーターマーク(電子透かし)技術を開発中

ピクシブの古賀和樹氏は「SNSのpixivの利用者5,300万人の約6割が海外ユーザーです。今後、日本のクリエイターが海外にコンテンツを発信するにあたり、2次利用の不正や転売のリスクを抑えるために参加しました」。クリエイターが意識することなく権利が守られる環境づくりのため、この5社以外にもさまざまなパートナー企業に協力してほしいと話していました。

  • ピクシブの古賀和樹氏

グラフィックソフトウェアを開発しているピージーエヌの柳澤和起氏は「動画投稿サイトでは一般のユーザーが動画を投稿して収益を得る仕組みが確立しています。イラストレーターの市場でも、そのような夢のある仕組みをつくっていかないといけない」と説明。ユーザーが作成した作品のファイルに固有情報を埋め込み、作品発表プラットフォームと連携してオリジナルファイルの信頼性を高める、という仕組みを提案します。

  • ピージーエヌの柳澤和起氏

世界中のアーティストおよびアートに関わる全ての人が必要とする技術の開発を目指すスタートバーンの太田圭亮氏は、作品の情報などをブロックチェーン上に記録できる「Startrail」、ICタグ付きブロックチェーン証明書の「Startbahn Cert.」といった提供技術を紹介。「ブロックチェーンのインフラを提供する我々ですが、1社では何もできません。皆様のお力をお借りして、今回の共同プロジェクトがあります。これが最初のユースケースとして業界のモメンタムになれば良いなと考えています」と挨拶しました。

  • スタートバーンの太田圭亮氏

図書印刷の高橋就亮氏は「デジタルコンテンツを印刷することによって、色、光沢、質感などの付加価値をつけることを考えています」と説明。今後、デジタルコンテンツとリアルコンテンツの両方に、価値が保たれて向上していく仕組みづくりが重要ではないか、と話していました。

  • 図書印刷の高橋就亮氏