人は他人ではなくロボットやコンピューターグラフィックス(CG)のキャラクターに褒められても、運動の技能が伸びることが実験で分かった、と筑波大学などの研究グループが発表した。ロボットなどは1体より2体の方が効果的だが、ロボットとCGキャラクターで差はなかった。学習やリハビリテーションなどの支援システムの開発に役立つ成果という。

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    ロボットを使った実験の様子(筑波大学提供)

研究グループは平均年齢21歳の学生96人を対象に実験。2日間にわたり、パソコンのキーボードを30秒間に所定の順序でできるだけ速く打つ作業を、目的を伏せて実施してもらった。学生の相手役をロボット、または画面に映すCGキャラクターに分け、さらにそれぞれを(1)「6回目の練習は終了です」などと作業の進捗のみを伝えて褒めない、(2)「1回目よりタイピングが速くなっています。素晴らしいですね」などと1体が褒める、(3)褒めるロボットまたはCGキャラクターが2体―の計6グループに分けた。

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    実験の概要(筑波大学提供)

その結果、1日目から2日目にかけ、作業の向上率はロボットの場合は(1)3.3%、(2)8.1%、(3)14.5%。CGだと(1)3.3%、(2)5.9%、(3)12.4%だった。褒めないより褒めた方が、またロボットまたはCGキャラクターが多い方が、ともに技能が伸びた。ロボットとCGの間で効果に有意の差はみられなかった。  このことから人は、ロボットでもCGでも、褒められると運動技能がより効率的に伸び、さらに複数から褒められることで効果がより高まる可能性があることが分かった。  人は褒められると金銭の報酬を受けたときと同様に脳の「線条体」が活発になるという。線条体は運動技能の定着に関係し、特に1日寝ることで効果があるとされる。人に褒められることで技能が伸びるとする別のグループの研究成果はあったが、人工のロボットなどについては分からなかった。  成果は学習やリハビリテーション、介護など、人の積極的な行動を促し支援するシステムの開発に貢献し得るという。筑波大学システム情報系の飯尾尊優助教は「人の形をしていないスピーカーや、頭をなでてくれるなど身体接触のあるロボットはどうか。さらに研究を進めたい」と述べている。  研究グループは筑波大学のほか国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、科学技術振興機構(JST)、同志社大学、慶應義塾大学で構成。成果は米科学誌「プロスワン」に4日掲載された。本研究はJST戦略的創造研究推進事業「さきがけ」、同「CREST」、科研費「基盤B」、同「特別研究員奨励費」の研究プロジェクトの一環として実施された。

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