テラスカイは10月20日~21日に「TerraSkyDays 2020 Online -DX先進企業と変革のリーダーが語る2日間-」を開催した。本稿では初日に行われたキーノート「DXを成し遂げる企業のプラットフォーム戦略」をテーマにしたテラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏の講演を紹介する。

冒頭、佐藤氏は「当社はIT業界の中でも最も流れが速いクラウドのマーケットに属しているため、最新の技術を追求したうえで顧客に提供し、成功を支援するとともに信頼を得ることを全社的に実践していくことをビジョンと位置付けている。TerraSkyDaysは今年で5回目を迎え、3回目の2017年からデジタルトランスフォーメーション(DX)をテーマにしている。DXそのものは企業自らが取り組むべきものではあるが、われわれはDXの“準備”(DX Ready)を支援することにフォーカスしている」と話す。

  • テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏

    テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏

「システム」のDX Ready

同社が提唱するDX Readyのポイントとしては「システム」と「体制」の2つのカテゴリーに分かれており、まずシステム面では「SOE/SOR」「Lift & Shift」「マイクロサービス」の3つの観点を同氏は説明した。

  • 「システム」の概要

    「システム」の概要

SOE(System of Engagement)/SOR(System of Record)については、SOEはソーシャルネットワークやモバイル、クラウド、アナリティクス、セキュリティといったスピード、スケーラビリティが求められもの(顧客の変化とともに変化するシステム)、SORはデータベースやトランザクション処理、従来型アプリケーションなど堅牢性、信頼性を担保するもの(変化はないが堅牢性を貫くシステム)となり、それぞれ再定義してシステム構成をすべきだという。

  • SOE/SORの概要

    SOE/SORの概要

Lift & Shiftは、既存のオンプレミスシステムはハードウェアであればアップグレードは容易ではなく、ソフトウェアでもパッチ適用など多くの制約があり、スピードに影響を及ぼす。これらの制約から解放されるためにも、まずはオンプレミスのシステムをクラウド(ex. Salesforce、AWS、Google、Microsoft Azureなど)にLift(上げて)することで、スケーラビリティや最新のOS適用、セキュリティなどが担保されるが大半は密結合となっている。そのままにしておけば煩雑な作業が必要となることから、疎結合に分解する必要があり、各アプリケーションを切り出したうえで小さな単位にすることをShift(移行)としている。

  • Lift & Shiftの概要

    Lift & Shiftの概要

マイクロサービスに関しては、Shiftした先が閉鎖したシステムの場合、それに合わせて連携システムを構築した際につなぎ込みが時間を要するため、1つ1つを小さな単位にするとともにユーザーインタフェースをAPIでつなぎやすくするというものだ。

  • マイクロサービスの概要

    マイクロサービスの概要

同氏は「これら3つの観点を当社では2017年から顧客に提案し、Lift & Shiftとマイクロサービス化を支援している」と述べていた。

「体制」のDX Ready

続いて体制について、佐藤氏は「最近ではCoE(Center of Excellence)という言葉が重要視されている。これは組織、ガイドライン、育成の3分野が重要になると言われている」と説明する。

  • 「体制」の概要

    「体制」の概要

まず、組織に関してはDXに取り組むためには顧客の変化に伴いスピードを持ってリリースをしていくことが宿命になるため、開発チームだけを強化するのではなく、ビジネスロジックやリリース後の運用などを考えて組織作りが重要になるという。そのため、ステアリングコミッティを構築し、役割分担したうえで組織作りすることを同社では支援している。

  • 組織の概要

    組織の概要

ガイドラインは、導入ガイドライン一覧、設定/開発・運用ガイドライン、セキュリティアクセスコントロールガイドラインを作成し、ポリシーに基づいたシステムを構築することが重要となり、ドキュメントで振り返りができるようにしておくことが肝要だという。

  • ガイドラインの概要

    ガイドラインの概要

そして、育成については優秀な人材を大量に採用して開発を任せるのではなく、そのほかのスキルを持つ人材のスキルチェンジをしながら新しいチームを組成する必要があるという。採用者のトレーニングをアジャイル方式で回し、同社ではCoEの開発チーム育成の支援に加え、クラウドに対する知見もあることから例えば基幹システムの人材をクラウドのスキルチェンジする支援も可能としている。

  • 育成の概要

    育成の概要

最後に、佐藤氏は「当社はグループ全体で今後も顧客のDX化の準備に加え、共創の活動に尽力していきたいと考えている」と力を込めていた。