「TOKYO GAME SHOW 2020 ONLINE(東京ゲームショウ / TGS 2020)」において、専門セッション「2020年版 eスポーツの楽しみ方」が行われた。プロeスポーツチーム、スポンサー企業、デバイスメーカーとそれぞれ違う分野のキーパーソンが集まり、eスポーツの楽しみ方を紹介するという内容だ。

出演したのは、Rush Gaming CEO/Wekids CEOの西谷麗氏、サッポロビール コミュニケーション開発部 メディア統括グループ シニア メディア プランニング マネージャーの福吉敬氏、レノボ・ジャパン 社長のデビット・ベネット氏の3名。モデレーターは日経BPの平野亜矢氏が務めた。

  • 向かって左からデビット氏、福吉氏、西谷氏、平野氏

レノボ・ジャパンは、ゲーミングPCブランド「LEGION」や、ゲーミングPCのサブスクリプションサービス「スグゲー」サービスに加え、「企業eスポーツ部支援プロジェクト」を展開するなど、eスポーツに力を入れている。また、社内にeスポーツ部を設立し、毎週金曜日16時30分からゲームを楽しんでいるという。放送の前日には部員で『Fall Guys』をプレイした。

サッポロビールは、ゲーミングチーム「レバンガ SAPPORO」のオフィシャルパートナーのほか、バトルロイヤルゲーム『PlayerUnknown's Battlegrounds(PUBG)』の国内リーグ「PUBG JAPAN SERIES(PJS)」のスポンサーを務めたこともある。eスポーツを大きく娯楽ととらえ、ビールとともに楽しむスタイルを提供したい考えだ。

Wekidsは、デバイスメーカーなどのPR事業に加え、eスポーツチーム「Rush Gaming」の運営を手掛ける企業だ。2019年にはラフォーレ原宿で、eスポーツチームのポップアップショップを期間限定で展開したことでも話題を呼んだ。

立場が違いながらもeスポーツにかかわる3者だが、セッションのテーマである「eスポーツの魅力」をどう考えているのか。

その問いに対して、「平等」と答えたデビット氏は、「会社のポジションや性別を問わず、対等にコミュニケーションできることがeスポーツの魅力だと思います。僕は社長ですが、社内のみなさんとゲームするとき、『デビット早くいけよ』みたいな、普段の会議では言われないようなことも言われるんですが、そういうところが大好きです」と自身の経験から、eスポーツの魅力を話す。

続いて福吉氏は「圧倒的熱量」と回答。「ゲームは、場所や国の垣根を越えて1つのゴールに向かって戦います。また、プレイヤーをはじめ、観客も同じ方向を向く。この一体感が熱量を生む。それがeスポーツの魅力だと感じています」と、観戦の盛り上がりを伝えた。

そして、「多様性」と回答した西谷氏は「私も圧倒的熱量に心が動かされるタイプですが、福吉さんと被らないように多様性と答えました。ゲームという新しい生き方を示したことで、こんな生き方がある、こんな考え方がある、その多様性に対する受容性が高まるのがeスポーツの魅力だと思います」と、社会的意義について言及した。

出演者それぞれが感じるeスポーツの魅力。テーマである「eスポーツの楽しみ方」を多くの人に知ってもらうには、その魅力を伝える必要があるだろう。だが福吉氏は、eスポーツのおもしろさを伝えるハードルとして「タイトルごとにポイントが違う」ことを指摘する。

「eスポーツとひとくくりにされがちですが、多くのゲームタイトルが存在します。野球やサッカーなど、スポーツの種目が違えばルールも違うし見どころも違います。なので、eスポーツも一つひとつのタイトルを理解すれば、それぞれ楽しさが分かってくるはず。ですが、それをなかなか理解してもらえないので、『eスポーツって難しい』と思われてしまいがちですね。あとは、カードゲームは、カードの性能を知らないと、何が起きているかがわからないので、それも難しいと思います」(福吉氏)

それに対してデビット氏は「タイトルがたくさんあることは強みにもなると思いますが、ひとくくりにされると説明しにくいですよね」と同意する。

西谷氏は「人に焦点を当てたとき、その人がおもしろければ、やっていることは何でもいいかもしれません。もともと私がeスポーツに興味を持ったきっかけが、生きざまなどのタレント面。これからeスポーツを本気でやっていく人が増えて、その人が世の中に発信力をもってくれれば、そこからエンタメが広がっていくと期待しています」と、ひとつのeスポーツの楽しみ方を提示した。

ゲームの試合を楽しむだけでなく、選手の生きざまや活動にフォーカスすること。確かにそれは、ゲームに詳しくない人がプロのeスポーツシーンに興味を持つきっかけにもなるだろう。

さらに、西谷氏は「“もっとストーリーを。もっとつながる場を”をテーマにやっているんですが、ここに一層力を入れていきたいと思います。選手のストーリーを伝えるだけでなく、選手とファン、ファンとファンがつながる場を提供することで、コミュニティを強化していきたいですね」と目標を話す。

ゲームの勝敗、選手の個性、自分がコミュニティへ参加する楽しみなど、eスポーツの楽しみ方にも多様性がある。まだイマイチeスポーツの魅力がわからないという人は、好きなゲームや好きな選手を探すことで、自分なりの「eスポーツの楽しみ方」を見つけてみては。

専門セッション「2020年版 eスポーツの楽しみ方」