アップルが、コミカルな内容の動画を公開しました。「今日、離婚弁護士のWebサイトを8つも見たよ」「今の脈拍は151…、152…」「美顔器と補整下着を買っちゃった」「私のクレジットカード番号は○○です」という具合に、自分のプライバシーにまつわる情報を公衆の面前でみずから言いふらすという内容です。
この動画を見て、誰しも「そんな馬鹿な行動をする人はいないよ」と思うでしょう。しかし、これらの情報は個人情報にあたり、商品やサービスの販売など、誰かの商売のタネになるものばかり。お金を出してでも個人情報を欲しがる人はおり、儲かるなら…とスマートフォンから個人情報を勝手に送信するように仕組んでおこう、と考える人がいてもおかしくありません。あなたが使っているスマートフォンも、訪れたWebサイトやネット通販で買ったもの、健康データなどの個人情報が“ダダ漏れ”になっているかもしれません。
そのような「ユーザーに隠れて個人情報をこっそり外部に流して儲ける」ということを完全に否定し、かたくなに「ユーザーのプライバシーでは商売しない、大事な個人情報はiPhoneの外には漏らさない」というポリシーを貫いているのがアップル。先ほどのテレビCMは、「iPhoneならばそんなことには決してなりません」という裏返しのアピールといえます。テレビCMを振り返りながら、iPhoneやiOSではどのようなプライバシー対策が施されているのか、秋の新iPhoneやiOS 14の登場を前におさらいしておきましょう。
追跡型広告の表示を防ぐ機能を搭載するSafari
多くの乗客がいるバスの中で「今日、離婚弁護士のWebサイトを8つも見たよ」とみずから周りに言いふらしてしまっているお兄さん。実際にこんな恥ずかしいことをする人はいませんが、スマートフォンではその限りではありません。過去に検索した単語や訪れたWebサイトに関連する内容の広告が、まったく関係ない別のWebサイトを見ている時や、FacebookなどのSNSアプリを使っている際に現れ、驚いたことが誰しもあるでしょう。
これは、ユーザーがインターネットでどのような情報を見ているかを集める「Webトラッキング」と呼ばれる技術によるもの。情報が追跡され、まったく関係ない業者に渡ってしまいます。一度だけ訪れたWebサイトに関連する内容の広告がどのサイトでも表示されて気持ち悪く感じるだけでなく、あなたの性別や年齢、仕事、家族構成、住んでいる地域などの情報も誰かに筒抜けになりかねません。
これを防ぐために、iOSの標準ブラウザーのSafariは「インテリジェント・トラッキング防止機能」を搭載し、このような追跡型広告をブロックできるようにしています。面倒な設定は必要なく、ふだん通りiPhoneのSafariを使うだけでプライバシーを守りつつネットサーフィンが楽しめます。
強固な暗号化でメッセージが保護されるiMessage
オフィスで働く2人の女性が「一緒に働けてうれしい!」「私も!」と声高らかに話しているシーン、「ハート絵文字」という妙なセリフを口にしていることからも、メッセージで送った内容が漏れてしまったようです。多くの人が利用しているメッセージアプリのなかには、メッセージの送受信の際に暗号化をしていなかったり、サーバーにデータをこっそり蓄積しているものもあるようです。
iOSで使えるiMessageは、iPhone内で暗号化を施してからデータを送信するので、万が一途中でデータがのぞき見されてもメッセージの内容や送った写真を判別することはできません。通信キャリアはもちろん、アップルでさえも中身を見ることはできないといい、腕利きのハッカーでも太刀打ちできないでしょう。
大事なヘルスケアデータもしっかり保護
「現在の心拍数は150…151…」とつぶやきながら広場をウォーキングしている男性、これは活動量計が計測したと思しき値が漏れてしまったようです。運動によって大きく変化する心拍数だけならさほど問題ありませんが、身長や体重、血圧、体脂肪率など個人の身体のデータはもっとも大事な個人情報であり、たとえ家族にも見られたくないものです。
iPhoneやApple Watchなどのアップル製デバイスでは、これらのヘルスケアデータはすべて暗号化を施したうえで保存されるので、のぞき見される心配はありません。また、サードパーティ製のヘルスケアアプリを使う際も、iPhoneに蓄積したさまざまなヘルスケアデータのうちどれを渡してよいかを個々に設定できるので安心できます。
Apple Payなら購入履歴もカード番号も外に漏れる心配はない
友人と会食中の女性が、いきなり「3月15日に美顔器と補整下着を4枚買ったの」と臆面もなく話し始め、同席していた男性は思わずむせてしまいました。拡声器を持った女性は、公園の真ん中で「私のクレジットカード番号は0237…」と読み上げる始末。店頭やオンラインでキャッシュレス決済をする機会が増えましたが、いつ何を買ったのかという購入履歴や、決済用に登録したクレジットカード番号が第三者に漏れてはたまりません。しかし、スマートフォンに悪意のあるマルウエアが混入していれば、このような情報が漏洩する危険性もあります。
iPhoneのApple Payで決済すれば、購入したものや購入した場所、支払った金額などの購買データはアップルでさえも参照できないので、どこにも漏れることはありません。
インターネットを通じてショッピングする際に気になるクレジットカード番号の漏洩についても、Apple Payでは万全の対策が施されています。Apple Payにクレジットカードを登録しても、クレジットカード番号はiPhoneにもアップルのサーバーにも保存されず、その時だけ有効になる独自の番号をやり取りして決済を行う仕組みになっています。つまり、カード番号自体はお店側には渡らずに済むので、カード情報が出回って悪用される心配がないわけです。
この秋、いつもより少し遅れて新しいiPhoneが登場するとみられます。どのように進化して魅力を増してくるのかはまだ分かりませんが、新しいiOS 14とのタッグで大事なプライバシーをしっかり守る仕組みになっていることは約束されています。スマートフォン選びの際は、画面の大きさやカメラ性能も気になりますが、安心して使えるという部分にも着目して機種選びをするのも悪くないでしょう。