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    宇宙を旅の目的地と考えると、宇宙生活にはビジネスチャンスがいっぱい! (C)NASA

アメリカの民間宇宙船クルードラゴンが8月3日未明、無事に帰還。9月下旬以降、アメリカ人以外で初めて野口聡一 宇宙飛行士が飛ぶ予定だ。安全性が確認されれば、クルードラゴンは民間宇宙利用のアクセルをふみ、宇宙商業化のスピードを大きく加速させるだろう。

トム・クルーズがクルードラゴンでISS(国際宇宙ステーション)に向かい、映画撮影することをNASA長官がツィートしているし、宇宙旅行時代に備えて、NASAはISSの食事代やトイレ使用などのライフサポートを民間宇宙飛行士が利用した場合のプライスリストを公開している。宇宙旅行時代の幕開けはもうそこまで来ているのだ。

一般の人が宇宙旅行する時代に求められるのは、宇宙生活の質(QOL)の向上だ。ISSは宇宙空間に人工的に作られた「ミニ地球」であり、宇宙飛行士は限られた水や電気などの資源を使いながら暮らしている。有人宇宙飛行初期と比べればQOLは改善されてはいるものの、まだまだ改善の余地があると言える。宇宙飛行士の工夫などによってQOLの低下を抑え、高い忍耐力や期待度をあえて下げるなどで、作業効率を保っているのが現状だという。

一方、地上の私たちの生活は宇宙生活との共通点が意外に多い。特に、新型コロナウィルスのパンデミックによって世界中でStay HOMEや移動自粛が求められ、物理的、社会的に隔離されがちな現在の生活はある種の「閉鎖環境」であり、宇宙生活のよう。また水や電気などの資源が限られる生活は、頻発する自然災害時の避難生活とも共通点がある。 

このような観点もあるところ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は宇宙での暮らしに着目し、宇宙飛行士や宇宙旅行者向けの生活用品を募集する。注目すべきは、宇宙滞在中の生活の利便性を向上させると同時に、地上の課題も解決するものであるという点。選ばれたアイデアの中から開発に進んだ商品は安全性などの制約条件をクリアすれば、2022年度以降にISSに搭載され、宇宙飛行士たちが実際に使うことになる! 応募の締め切りは2020年9月4日だ。

参考:JAXA|宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策の募集

宇宙での課題って? - 宇宙飛行士の声をまとめた「Space Life Story Book」

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    日本人宇宙飛行士の声をまとめた宇宙生活の課題や困りごと集「Space Life Story Book」 (C)JAXA

しかし、いきなり「宇宙の生活用品を!」と言われても、何から手を付けていいかわからないかもしれない。今回、JAXAは宇宙と地上の産業にイノベーションを起こそうと、いくつかの工夫や仕掛けを用意している。まず1つ目が「Space Life Story Book」。日本人宇宙飛行士8人からヒアリングしてまとめた、宇宙生活の課題や困りごと集だ。

これ、読みものとしてもかなり面白い。宇宙生活がどういうものかがわかるし、QOLの向上に関わる10のカテゴリーについて、宇宙飛行士の本音が綴られている。

たとえば「メンタルヘルス」。「季節感が欲しい。季節ごとのちょっとしたお花など」「集中は簡単にできますが緩めるほうが難しい。意図的にぼーっとする時間を作っていた」「ストレスを自分で感じるのは難しいと思います。メールの内容がとげとげしくなっていることから気づくこともありました」(Space Life Story Bookより抜粋)

「モチベーション」の「化粧・髭剃り・着替え」の項目で笑ってしまったのは、「メイクは一応できます。ただ周りが家族みたいになって、何もしなくてもいいかなみたいな感じになります。(中略)ただ、少しでも何かやると気が引き締まるというか、外向きのモードになります」

ISSでは生活の場と仕事の場が同じという究極の「職住接近」だからこその課題だけど、地上のテレワーク生活でも「あるある!」と思いませんか?(テレワークだとつい、化粧をせずに過ごすことしばしば)。 

一方、災害時の避難生活にも共通する課題であり、日本の技術で解決できるのでは? と思う点が多々あったのは「パーソナルケア」。 宇宙は水がとても貴重だからシャワーは使えない。洗髪や洗顔、歯磨きはどれも超節水で行う必要がある。お風呂に入ったときのような「さっぱり感」や「爽快感」が手軽に、時短で得られたら、閉鎖隔離空間での生活はより快適になるのでは、という声も掲載されている。

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    「お湯で効率的にシャンプーや身体をぬぐうことができればいい。身体を拭くときはウェットタオルを使っていたが数が少ない」「ロシア製の濡れタオルは微香性があって心地よかった。ちょっと頑張ろうとなる」「(ISS内は乾燥して)手が荒れやすく、さかむけ(ささくれ)ができやすい」などヒントがいっぱい (Space Life Story Bookより抜粋)

その他にも(水が貴重なために)、歯を磨いた後の歯磨き粉を水でゆすぐことができず、飲み込むか紙に吐き出さないといけない点、ゴミ捨て場のにおい問題など宇宙生活の様々な点でたくさんの課題が紹介されている。宇宙飛行士はこんなにも日常生活の細々したストレスを抱えながらプレッシャーのかかる重要任務をこなしていることに驚かされる。しかし、課題があるということは、改善の余地があり、ビジネスチャンスがあるということではないだろうか。