オリンパスは6月24日、カメラなどの映像事業を新会社として分社化し、日本産業パートナーズ(JIP)が管理・運営その他関与するファンドに対して譲渡する意向確認書を締結したと発表。新会社はJIPの支援を得て、オリンパスのOM-DやPEN、ZUIKOといったブランドを継承し、事業の持続的な成長の実現を目指すという。

  • オリンパス、カメラなど映像事業をJIPへ譲渡

オリンパス広報によると、新会社はカメラや「オリンパスギャラリー」などの写真事業のほか、オリンパスイメージングが手がけてきたICレコーダーや双眼鏡などの事業も継承する。新会社の名称は未定。オリンパスは2019年11月に「医療を中心とした事業ポートフォリオへの集中」などをはじめとする新経営戦略を策定しており、今回の分社化の決定はその一環だという。

オリンパスは2020年12月31日までのこの取引の完了に向け、映像事業において構造改革を実施し、黒字化が見込める事業構造とした上で映像事業を分社化する予定。オリンパスとJIPは、2020年9月30日までにこの取引に関して法的拘束力を有する正式契約を締結することを目指す。

映像事業の分社化とJIPへの譲渡後も、新会社が構造改革後の研究開発・製造体制を維持。「引き続き高品質かつ信頼性の高い製品を提供し続ける」という。オリンパス製品のカスタマーサポートも継続する。

なお、オリンパスが運営する写真投稿コミュニティサイト「フォトパス」については2020年12月末をもって終了することが既に予告されており、同コミュニティに投稿された作品は削除される。ポイントを貯めてプレゼントなどに応募できる「フォトパスパーク」については、2020年6月末で閉鎖となる。

オリンパスの映像事業は、1936年に写真レンズ「ズイコー」を用いた写真機の製造販売を開始して以来、ハーフサイズカメラ「オリンパス・ペン」や、世界初のマイクロカセットテープレコーダー「ズイコーパールコーダー」、ミラーレス一眼カメラ「オリンパス OM-D シリーズ」をはじめ、同社の技術力と商品開発力をもって展開してきた。

昨今のスマートフォン/タブレットなどモバイル機器の進化により、デジタルカメラ市場は縮小している。オリンパスは市場環境に対応するために、生産拠点の再編などによるコスト構造の見直しや、収益性の高い交換レンズのラインナップを強化するなど、「売上規模が縮小しても継続的に利益を生み出せる事業構造とするべく、収益構造の改善を行ってきた」という。しかし、映像事業は2020年3月期まで3期連続で営業損失を計上している。

このような状況を受け、オリンパスは「よりコンパクトで筋肉質且つ機動的な組織構造とすべく映像事業を分社化し、JIPのもとで事業を展開することが、映像事業の自律的かつ持続的な成長を実現し、オリンパスの製品を愛好するお客様への価値提供と、そのために働く従業員にとって最適であると判断した」とコメントしている。

JIPは、事業の選択と集中に取り組む企業が事業部門や子会社の外部への切り出し(カーブアウト)を行う際に投資し、その事業が持つ潜在成長力を引き出し自律的な成長を促進する「戦略的カーブアウト」の豊富な実績を持つ。ソニーが「VAIO」ブランドで展開していたPC事業を譲渡した先の投資ファンドとしても知られている。

オリンパスでは、「新会社はJIPの支援を得ることにより、オリンパスがこれまで培ってきた革新的な技術とユニークな商品開発力を活用し、OM-DやPEN、ZUIKOなどをはじめとしたブランドを継承する事業体として、お客様にとってより良い製品/サービスを提供するとともに、事業に携わられている役職員の方々にとってもより働き甲斐のある会社とすることを通じて、事業の持続的な成長を実現する」としている。