音を聴いてみる
K5 PROの実力をヘッドホンで聴いて確かめてみましょう。PCと組み合わせての再生準備の手順は、一般的なUSB DACとさほど変わりません。筆者は今回、手持ちのMacBook Air (Retina, 13-inch, 2018)とUSB-C to USB-Aの変換アダプタを介してつないでおり、macOS標準ドライバで動作させましたが、Windows PCの場合はFiiOのサポートページから専用ドライバをダウンロードしてインストールする必要があります。どちらのOSでも、オーディオ再生デバイスにK5 PROを選べば準備完了。
再生ソフトは、ハイレゾ音源に対応した「Audirvana」や、ストリーミング音楽配信サービス「Amazon Music HD」のMacアプリ(排他モード)を使い、筆者が試聴時にいつも使っているe☆イヤホンオリジナルの密閉型モニターヘッドホン「SW-HP11」や、フォステクスのセミオープンタイプの平面駆動型ヘッドホン「T50RPmk3n」(いずれも生産終了品)を組み合わせて聴いてみました。
K5 PROの出力はかなりのもので、ボリュームはゲインを最小にしても、時計で言うと9〜10時の位置で十分な音量が出ます。特に、平面駆動型らしい繊細な描写と、セミオープンタイプで開放感あるスッキリした音が楽しめる「T50RPmk3n」との組み合わせが気に入りました。
Eagles「Hotel California」(FLAC 192kHz/24bit)では、ベースやパーカッションなどの低域をしっかり鳴らしつつも前に出すぎることは無く、まるで野外フェスでもっとも良い場所に立って演奏を聴いているような、爽やかな音が印象的。低域から高域までバランスが良く、“優等生”タイプのサウンドだと感じました。
渡辺香津美のアルバム「ギター・イズ・ビューティフル」から「ザ・カーブ・オブ・ライフ」(FLAC 96kHz/24bit)を聴いてみると、ギターの弦が弾かれたり震える様子が耳の奥へと立体的に伝わるかのよう。音場は横に広く、奥行き感もまずまず。解像感もあって音像がぼやけず、ワイドにすっきり鳴る感じです。
サラ・オレインの「Beyond the Sky」(RPG『ゼノブレイド』エンディング・テーマ、FLAC 96kHz/24bit)を聴きながら目を閉じると、ボーカルの歌声がまるで自分のすぐ前で歌ってくれているかのような臨場感が味わえ、特に間奏の弦楽器の旋律が思った以上に生々しく耳に届いて、軽い衝撃を受けました。女性ボーカル曲や、生楽器を多用した楽曲との相性は特に良さそうです。
SW-HP11やT50RPmk3nをとりあえず鳴らすだけならMacBook Airのヘッドホンジャックでもそれなりに使えますが、高音質なK5 PROを通して音楽を聴いた後では当然ながら表現力の差を感じないわけにはいかず、もうMacのヘッドホン出力には戻れません。2万円台で手に入るヘッドホンアンプとしてはかなりコストパフォーマンスが高いと感じます。
K5 PROのゲイン調整は前面のレバースイッチで低(0dB)、中(+6dB)、高(+10dB)の3段階で切り替えられるようになっており、どんなヘッドホン/イヤホンでも対応できそうなところも、製品選びで安心できるポイントと言えそうです。
ちなみに、本体前面のボリュームノブの周囲にはRGBインジケーターを備えていて、再生中の音楽のサンプリングレートに応じて色が変わるようになっています。48kHz未満は青、48kHz以上は黄、DSDは緑に光るので、プレーヤー画面を最小化していても、今聴いている曲の仕様がざっくり把握できます。普通に音楽を楽しむのに必須の機能ではありませんが、目障りになるほどではなく、無骨なアルミの本体に彩りを添えている感じ。夜、寝る前のひとときを好きな音楽を聴いて過ごしながら、ぼんやりインジケーターの明かりを眺めて過ごす、なんて楽しみ方も良さそうです。
今回はK5 PROにあわせて比較的近い価格帯のヘッドホンを組み合わせて聴いてみましたが、もっと鳴らしにくいと言われているモデルなど、上位のヘッドホン/イヤホンと組み合わせたら音にどんな違いが出ただろう? などと興味は尽きません。付属のACケーブルや、ライン出力利用時のヘッドホン出力の件など、海外製品ならではの問題も抱えてはいますが、全体として使い勝手や音質については高い水準でバランス良くまとまっており、比較的導入しやすい手ごろな価格帯であることも好印象でした。
現状、FiiOの直販サイト以外で購入できる正規ルートがなく、再入荷の詳細もまだアナウンスされていないのがつらいところではありますが、K5 PROは“オーディオの楽しさ”を体験する入口としてオススメできる一品です。